金属疲労とは、金属材料が長期間繰り返しの応力を受けることにより、例え比較的小さな応力であっても破壊に至る現象(疲労破壊)のことです。なお、この疲労と云う現象は、金属に限定されるものでなく、プラスチックや炭素繊維、セラミック等々、総ての個体に見られる現象です。
さて、金属疲労が原因となって起こる事故で目立つの は 、航空機事故です。以前の当ブログで記した、日航ジャンボ機の迷走墜落事故も金属疲労が原因となっていますし、掲載写真の驚くべき姿を曝しているアロハ航空事故もそうです。このアロハ航空事故は、1988年に生じたボーイング737型機の機体外板の大面積が破り取られてしまったというものです。純モノコック構造を持った航空機で、ここまで機体外板が無くなり、よくぞ空中分解しなかったものと思いますが、幸いなことに事故時に着席していなかったと想像されるスチュワーデス1名が亡くなったのみで、乗客全員が無事のまま奇跡的に着陸できたという事故です。
このボーイング737型機は、製造後19年を経過しており、塩分などの影響で機体の腐蝕が進行していたと云われます。そして、機体外板を接合している多数のリベットから、同時多発的に亀裂が進行するというマルチプルサイトクラックという現象により破壊したのだと分析されているのです。しかし、ジャンボジェットもそうですが、機体製造メーカーのボーイング社では、各種シミュレーションを繰り返し、例え亀裂が生じたとしても、これ程の大面積までの破壊に至らないことを前提として設計をしていたはずなのです。でも、現実として、この様な事故が起こり得たのです。
ところで、クルマの世界での疲労破壊ですが、重量的な要求が航空機に比べれば高次でないこともあるのだと思われ、余り目立ちはしませんが、皆無なことではありません。これは、リコール情報の発表で、部品の強度不足が生じていたことが原因として垣間見られることからも判ることです。また、2001年1月に生じた三菱ふそう大型トラクタの前輪タイヤ脱落事故では、良くあるホイールの取付ボルトの締め付け不良等でなく、ハブの亀裂破損事故であったということは重大な問題であったと感じます。私自身の経験も含め、整備経験がある者として思うのですが、事故等で強烈な衝撃を受けて破損するなら判りますが、ハブ等の基幹部品自体が、疲労破壊し得る等と云う様な意識は、なかなか整備業界にも希薄であったことが想像されるのです。また、メーカーでは、設計上の必要十分な安全係数を見込み、各種シミュレーションも行っていたはずなのです。しかし、現実として、事故が起こったのですから恐ろしいことではあります。