ガソリンエンジンに詳しい方なら、スパークプラグを外して、その外観を見ただけで、そのエンジンの調子が判るものです。低速運転場ばかりで愚図つかせている運転では、黒く煤けた外観となりますし、真っ白に近い状態なら高速高負荷過ぎで、プラグの熱価を上げないと、エンジンがやばいぞなんて云うことが判る訳です。この様に、スパークプラグは燃焼室に接していますから、その状態は燃焼状態を判断する材料となるのです。
ところで、昨今のガソリンエンジンでは、スパークプラグの火花ギャップ(間隔)は、1.1~1.3mmですが、大昔のゼロ戦のエンジンのスペックを眺めていると0.3mmなんて記してありますし、ポルシェ社でも、356とか初期の911(ナロー)なんかでも、0.5mmと記されています。
スパークプラグギャプは大きい程に火花が大きく着火性能が良い訳ですが、それだけ昔のエンジンは、広いギャップに火花を飛ばすための高い要求電圧を満たすことが出来なかった故のことだろうと思います。
考えて見れば、今のガソリンエンジンでは、各気筒独立のイグニッションコイルを持ち、高圧火花電圧を分配するディストリビューターもない様なエンジンが多くなりました。しかし、昔のエンジンではディストリビューターというベークライト樹脂製の分配機が必ずあり、その中にポイントという断続接点が配置されていたものでした。そして、ポイントの閉じている時間(閉角度)のみ、イグニッションコイルに電流が流れ、ポイントが開いた瞬間にコイルの自己誘導作用で高電圧が生み出され、スパークプラグに火花を飛ばすという仕掛けになっていたものです。このため、6気筒やそれ以上のマルチシリンダーエンジンでは、ポイントを複数持って、閉角度を大きくする仕掛けにしたものや、イグニッションコイルの巻き数を少なくして電流の立ち上がりを良くしたGTコイルなるものが使用された時期もありました。
そんな、昔のメカニズムもイグニッションコイルは各気筒で独立していますし、閉角度に相当する通電時間も回転数に応じて制御されている訳です。
また、従来2万キロとか寿命を持つことが当然だったスパークプラグも、白金だとかイリジウムだとかの耐熱貴金属の利用により、10万~20万キロと営業車でない場合は車齢を全うする程になっています。