指数の疑問 その12【これからどうして是正して行くか『実行案』】
従前指数の疑問を数々述べて来たのだが、つまるところ指数でも工数でも良いが、ある基準を設けたとしても、特に小数ロッドの生産とか一つの作業工程がある程度の複雑さを持つほど、どんなに高精度な時間計測などを行っても、ある程度のバラツキを生じることは、不確定要素が増えるだけ不安定にならざるを得ないと云うことが云える。従って、この指数でも工数でも良いが、これが相当に信頼度高く有効化できるのは、比較的作業工程が単純で総作業時間が短い場合の同じ作業の反復作業の場合のみ成立する、つまりマスプロダクションによる流れ作業の様な局面と云えるだろう。
自動車の一般整備もだが車体整備において、相手部位は正常でなおかつ比較的新しい車両で錆や汚れも少ない車両という標準条件、また作業者も標準条件を定めたとしても、そもそも作業者の精神常態一つをとっても、その日朝、妻と子供のことで諍いがあり困ったなどと云う精神状態の日と、今日は仕事終わりに久々に友人と懇談する予定があり、早々に仕事を終わらせねばと云う目的意識を持つ日では、相当の格差が生じてくるのが人間というものだろう。
かといって、なんの基準もなく、実時間を基本にしたりすると、そもそも経験的見積(感)に頼らざるを得られず、施工者側も支払い者側も理解だとか納得感が得られないとか、経営者としてみて、作業能率として良いのか悪いのかの判別も困難となることがあるだだろう。
つまりここで云いたいのは、指数でも工数でも同じだが、不確定要素もあり絶体ではないが、ある程度の予測水準としては、この数値というのがある意味で真実のものではないだろうかという思いがある。もっと噛み砕いて云うと、さまざまな一連の作業を行い修理を完結するが、ある部分の指数値は、余裕を持って達成でき、別の部分においては、指数値では達成できないが、その未達成でも、ある程度の許容値の中に収まる程度のデコボコがあってもしかるべきではないかという考え方だ。
このことを説明するのに、ちょっと自動車の電子制御エンジンのメカニカルに精通している者でないと理解しずらいかもしれぬ例だが記してみたい。
現在のガソリンエンジンは定常運転(一定速や緩加速程度の軽負荷から部分負荷(パーシャルスロットル)の運転領域では02センサーや空燃比センサーにより排ガス中の残存酸素量とか空燃比をモニタリングしつつ、常に燃料噴射を増減しつつ理論空燃比に保つ運転を行っていることを知らぬ者はいないだろう。この様な燃料の増減を短期フューエルトリムと呼ぶのだが、ここで聞いたことがあると思うが、フューエルトリムには、この短期と長期という2種の概念があることだ。
この長期フュエルトリムは、ある程度の稼働時間(一般に30分程度以上の連続運転(トヨタなどは1トリップとか判り難い表現している)を長期フューエルトリム値と呼ぶ)において、予めエンジン吸入空気量/回転数・K(定数)という算式で決まる基本噴射量に対し、常にリッチ側もしくはリーン側にズレが偏っており、その偏りが一定値(20-30%程度)を越えて連続すると異常としてフューエルトリムエラーというDTCを検出するアルゴリズムを持つ。
つまり、この事例を元に云いたいことは、小ロッド小口の非連続生産における指数もしくは工数値とは、この基本噴射量に近い思考で設計がなされ、そこから種々の理由で逸脱することはあるが、常に一方に偏ってズレでなく、上下にズレるのだが、そのズレ量もある範囲(フューエルトリムの場合は20-30%)で収まり、通算として偏りがないというものが理想ではないのかという思いを持つところだ。
さて、ここで本シリーズその8で記した、日車協連のWebサイト・年譜にも記されているH3年(1991)3月および11月に「合同共同研究会の開催(タイムスタディーの実施)」の生データとされるべきデータが関係者より入手できたので以下に紹介したい。
この合同検証会とは、実施の経緯としては現在でも多くのBP工場には潜在的にあるだろう指数値は実情より過小な値になっているのではないかという疑念を日車協側が損保協会に訴えた結果として持たれたものであろう。実施の細目と計測結果は別添表に記載の通りだが、補足しておくと予めの車両準備もあるだろうから、直前に無作為に車種や作業部位を決めることはできず、予め作業を実施する自研センターとの間で、車種と作業部位を打ち合わせ済みであったであろう。なお、作業観測は、すでに作業場所(4×7mの作業エリア)に対象車両が搬入済みであり、手回り工具および取外し部品ラックなども車両周辺に準備済の状態であったと云う。
なお、添付資料に記載の様に作業者は自研センター職員作業者であり、その作業を損保協会および日車協のそれぞれのメンバーが、時間計測しつつ、それぞれ分類(正味、準備、余裕、対象外)を区分集計したということだろう。
さて、これを見てさまざまな疑問が生じるところであろうが、私なりに疑問を整理してみると、以下の様なことを感じるところだ。
➀そもそも、予め自研センターに作業の車種と部位を知らせておけば、必ずしも自研センターがズルしたとは思えないが、担当作業者としての精神状態は、業界関係者の前で恥掻きたくない、淀みなく作業を完遂させたいと思うのが通常の心理だろう。そうなると、場合によっては、予行演習する場合すらあっても不思議ではないのであって、ある意味平常な精神状態での作業と云うより、競技会の様相を帯びてくるのも不思議ではないだろう。つまり、作業時間として、短めの値が出ても不思議ではないということが考えらるだろう。
②この集計表を見ていて、目的作業が右フロントドア取替という作業なのに対し、損保協会集計では、対象外作業というのが、およそ25%(1/4)近くも出ていることに疑念を持たない者はいないだろう。これについて、私は損保協会に確認した訳ではないが、私の持つ指数の取替の場合の前提知識としては、付帯部品としてドアに装着されている部品はすべて脱着もしくは取替が含まれるという前提なのだが、これをドア内張(トリムカバー)とかベルトモールなど、取り外して作業ラックに置く作業を、すべて取替前提だから、それは対象外時間として除外した可能性を疑うのだ。しかし、これはあまりにこじつけ思考であって、そう云う云い分を聞いたBP業なら、そんなバカなことを云うなら、損傷ないそれら付属部品をすべて取替を認めるのかということになるだろうし、そもそもそんなムダな部品交換するより、脱着として部品を取り置く作業は、正味作業時間に入れるべきが妥当だろう。
また、損保協会の云い分を仮に認めたとしても、新品部品は箱に入ったりビニールパックされていたり、部品番号のラベルが添付されていたりと、これらを取り出し、ラベルを剥がす時間を考慮しているのかという問題も想定できる訳だ。
なお、車体協側でも対象外時間というのは7%ほど集計なされているのだが、一度装着しかけた部品を、装着順序の間違いで,改めて外したとか、試行錯誤で一度嵌め込んだが、どうも位置が違うことに気付いて、改めて付け直したという、広義に云えば整備の失敗だとか不適切というものを前提としたと思われる。ただし、ドアの様なある程度パーツ点数の多い部品であれば、ある程度の試行錯誤は一般論として、もしくは小ロッド作業の不確定要因として、すべてを失敗だから除外するという考え方もおかしいのだと思える。
③そもそも、この時間集計では、正味、準備、余裕、対象外と集計している訳だが、準備時間とは、それぞれの指数にすべてが入っているとは教えられたこともない。つまり、この正味とか準備を区分したのもマスプロダクションの考え方が前提にあり、マスプロダクションでは、ライン稼働前に各担当者は、それぞれ担当分の工具とか治具とかを準備する時間を要し、この準備時間には余裕を入れて設定するというものだ。
指数の準備時間とは、対象車両を置場から作業エリアまで移動するとか、指示書を受け取り内容の確認をするとか、さしあたり必要となる工具や部品ラックを車両周辺に用意する時間を云うのであり、指数だとすべての指数項目にこれらを入れると重複するので、フロントバンパーなどの項目に入れていると説明を受けているところだ。なお、溶接機が必用な作業では、アセチレンバーナーの用意や火口やゲージの調整とか、スポット溶接機の用意や試し打ちの時間などを溶接系パネルに入れていると思われるが、具体的にどの作業項目に幾ら入れているかの説明は受けていない。
④余裕時間だが、単一の作業を観測して、これは余裕だから除外するのは理解できるところだが、これを単一作業で集計することは意味がない。この余裕率は指数の場合は公式に正味作業時間の30%であるとされているのだが、この30%のい根拠は、ワークサンプリング法と云うらしいが、計測者がある瞬間の作業者それぞれの作業を捕まえ、その作業が正味なのか余裕なのかをおよそ1000事例程度を集計し、確立論的にも求めたものが余裕率であって、余裕には、作業余裕、職場余裕、用達余裕、疲労余裕などが考慮されているとされるが、1日の労働を考えて欲しい。作業開始は疲労も少なく作業もはかどるが、特に今の様な酷暑の時期は午後も終盤となると疲労も生じて来て作業ピッチも下がる。これが代表的な疲労余裕ということになる。
以上の様なことをこの集計表を見て思うところだが、実のところ損保協会側と車体協側で、作業の区分けで、一部ケンカのごとく言い争いになった場面の録音テープまで聴いたが、私は中立公平な視点で眺めたいが、車体協側が激高したのもある意味理解できるところで、こういう論理で対修理工場や対被害者と接したら、そりゃ揉めるだろうなと思うところだ。
この件と、過日報告した指数と米ミッチェル工数との比較表で、予想を超えた工数の乖離が生じている問題が把握されたことがある。これはある意味、元損保調査員として指数はある意味正当な科学的な数値だという意識を持っていたのでショッキングなことでもあった。また、従前の様々な工数策定とか過去に触れ合って来た指数策定に関与してこられた方々との触れ合いを通じて得られた教えというのが、様々な工数策定に関する論理条件を改めて知ると、かなりの欠落したもしくは知識不足の上でなされた所業があったと回想せざるをえないのだ。ただし、これら方々が恣意的もしくは作為的に意図してその様なことをしたとまでは思ってはいないが・・・。
ところで、自研センターでも当初の作業観測なりで標準作業時間を策定しようとしたが、単発作業でまともな時間計測ができる訳もなく、諸外国が基表という作業要素の積算を使用して工数を作り初めていることに気づき、真似て基表を作ったと云うことだが、このことはある意味、合理的な思考であろうと思っている。
ただし、基表で指数を作るからには、その基表テーブル値および基表の要素、固定方法として、ボルトサイズ、クリップ方式別、合わせの要素、その長さとか面要素、合わせの校正のアライメント難易度、一人作業か二人作業(中には三人作業も)という要素、仮付け要素1回としている様だが、何時の場合も1回が妥当なのか、などなどちょっと想定しただけでこの程度の要素は出てくる。
実のところ、この合同研究会があった頃(その前後は不明確)の記憶だが、損保協会(もしくは自研センターかも)では、損保に対し一部の基表のテーブル表を示し、こういう組み立てて指数は作っているのですと説明を始めたことがあった。多分複数回の資料配付が続けられたが、それがすべて完遂されることなく中断したのは、公取独禁法の警告(1994年10月)と時を同じくしてのことだったと思える。つまり、公式には自研センターは指数は科学的な時間値だから独禁法には抵触しないと云いながら、お客様相談室の言い回しも「指数は自研センターの参考値で使う使わないは個別損保と打ち合わせて欲しい」というそれまでの、「モノサシ」からかなりトーンダウンしたことでも判るが、対応単価だけでなく指数値で料金を拘束していると疑われるのを極端に怖れる論調に変化しているのだ。
ただ、今後の自整BP業としては、車両修復についての何らかの基準を持つことは、対ユーザーとか損保とのスムーズな料金決定には欠かせないことではあるものの、現状の不透明過ぎる指数については、透明化し検証をできる様にすることが必用ではないだろうか。つまり自研センターでは、企業資産だと言い張り公開を拒否している基表テーブルだが、全前公開した上で、現行の指数策定車について出されている構造調査シリーズという中途半端な書籍があるが、あれに要素別基表値の分離積算表を付けることで透明度はずいぶん向上し、これが損保としての公明正大な情報開示として受け取られることになる様に想像できる。また、料金を縛るなら、その様な説明責任があるのではないだろうか。
なお、ミッチェルで採用されているそうだが、ウォッチする自整BP業から、それなりの根拠ある異議がある場合は、それなりの検証作業を行い、再確認できた場合には見直す姿勢も大事ではないだろうか。
また、損保アジャスター諸君も、営利企業で勤めるからには上記下達に沿う宿命があるのだが、それ以前の問題として己の業務の社会的公平性をまっとうすべきが査定正義であり、ただただ決まっているという思考でなく、社会的公平性で眺め、異議が感じられれば自整BP業と同じく、根拠を持つ異議を提示して行く意識を持ちつつ活動して行くことが必用ではないだろうか。
#指数の疑問 #指数の合同検証会の歴史 #自研センターは基表並びに指数の根拠明示すべし
従前指数の疑問を数々述べて来たのだが、つまるところ指数でも工数でも良いが、ある基準を設けたとしても、特に小数ロッドの生産とか一つの作業工程がある程度の複雑さを持つほど、どんなに高精度な時間計測などを行っても、ある程度のバラツキを生じることは、不確定要素が増えるだけ不安定にならざるを得ないと云うことが云える。従って、この指数でも工数でも良いが、これが相当に信頼度高く有効化できるのは、比較的作業工程が単純で総作業時間が短い場合の同じ作業の反復作業の場合のみ成立する、つまりマスプロダクションによる流れ作業の様な局面と云えるだろう。
自動車の一般整備もだが車体整備において、相手部位は正常でなおかつ比較的新しい車両で錆や汚れも少ない車両という標準条件、また作業者も標準条件を定めたとしても、そもそも作業者の精神常態一つをとっても、その日朝、妻と子供のことで諍いがあり困ったなどと云う精神状態の日と、今日は仕事終わりに久々に友人と懇談する予定があり、早々に仕事を終わらせねばと云う目的意識を持つ日では、相当の格差が生じてくるのが人間というものだろう。
かといって、なんの基準もなく、実時間を基本にしたりすると、そもそも経験的見積(感)に頼らざるを得られず、施工者側も支払い者側も理解だとか納得感が得られないとか、経営者としてみて、作業能率として良いのか悪いのかの判別も困難となることがあるだだろう。
つまりここで云いたいのは、指数でも工数でも同じだが、不確定要素もあり絶体ではないが、ある程度の予測水準としては、この数値というのがある意味で真実のものではないだろうかという思いがある。もっと噛み砕いて云うと、さまざまな一連の作業を行い修理を完結するが、ある部分の指数値は、余裕を持って達成でき、別の部分においては、指数値では達成できないが、その未達成でも、ある程度の許容値の中に収まる程度のデコボコがあってもしかるべきではないかという考え方だ。
このことを説明するのに、ちょっと自動車の電子制御エンジンのメカニカルに精通している者でないと理解しずらいかもしれぬ例だが記してみたい。
現在のガソリンエンジンは定常運転(一定速や緩加速程度の軽負荷から部分負荷(パーシャルスロットル)の運転領域では02センサーや空燃比センサーにより排ガス中の残存酸素量とか空燃比をモニタリングしつつ、常に燃料噴射を増減しつつ理論空燃比に保つ運転を行っていることを知らぬ者はいないだろう。この様な燃料の増減を短期フューエルトリムと呼ぶのだが、ここで聞いたことがあると思うが、フューエルトリムには、この短期と長期という2種の概念があることだ。
この長期フュエルトリムは、ある程度の稼働時間(一般に30分程度以上の連続運転(トヨタなどは1トリップとか判り難い表現している)を長期フューエルトリム値と呼ぶ)において、予めエンジン吸入空気量/回転数・K(定数)という算式で決まる基本噴射量に対し、常にリッチ側もしくはリーン側にズレが偏っており、その偏りが一定値(20-30%程度)を越えて連続すると異常としてフューエルトリムエラーというDTCを検出するアルゴリズムを持つ。
つまり、この事例を元に云いたいことは、小ロッド小口の非連続生産における指数もしくは工数値とは、この基本噴射量に近い思考で設計がなされ、そこから種々の理由で逸脱することはあるが、常に一方に偏ってズレでなく、上下にズレるのだが、そのズレ量もある範囲(フューエルトリムの場合は20-30%)で収まり、通算として偏りがないというものが理想ではないのかという思いを持つところだ。
さて、ここで本シリーズその8で記した、日車協連のWebサイト・年譜にも記されているH3年(1991)3月および11月に「合同共同研究会の開催(タイムスタディーの実施)」の生データとされるべきデータが関係者より入手できたので以下に紹介したい。
この合同検証会とは、実施の経緯としては現在でも多くのBP工場には潜在的にあるだろう指数値は実情より過小な値になっているのではないかという疑念を日車協側が損保協会に訴えた結果として持たれたものであろう。実施の細目と計測結果は別添表に記載の通りだが、補足しておくと予めの車両準備もあるだろうから、直前に無作為に車種や作業部位を決めることはできず、予め作業を実施する自研センターとの間で、車種と作業部位を打ち合わせ済みであったであろう。なお、作業観測は、すでに作業場所(4×7mの作業エリア)に対象車両が搬入済みであり、手回り工具および取外し部品ラックなども車両周辺に準備済の状態であったと云う。
なお、添付資料に記載の様に作業者は自研センター職員作業者であり、その作業を損保協会および日車協のそれぞれのメンバーが、時間計測しつつ、それぞれ分類(正味、準備、余裕、対象外)を区分集計したということだろう。
さて、これを見てさまざまな疑問が生じるところであろうが、私なりに疑問を整理してみると、以下の様なことを感じるところだ。
➀そもそも、予め自研センターに作業の車種と部位を知らせておけば、必ずしも自研センターがズルしたとは思えないが、担当作業者としての精神状態は、業界関係者の前で恥掻きたくない、淀みなく作業を完遂させたいと思うのが通常の心理だろう。そうなると、場合によっては、予行演習する場合すらあっても不思議ではないのであって、ある意味平常な精神状態での作業と云うより、競技会の様相を帯びてくるのも不思議ではないだろう。つまり、作業時間として、短めの値が出ても不思議ではないということが考えらるだろう。
②この集計表を見ていて、目的作業が右フロントドア取替という作業なのに対し、損保協会集計では、対象外作業というのが、およそ25%(1/4)近くも出ていることに疑念を持たない者はいないだろう。これについて、私は損保協会に確認した訳ではないが、私の持つ指数の取替の場合の前提知識としては、付帯部品としてドアに装着されている部品はすべて脱着もしくは取替が含まれるという前提なのだが、これをドア内張(トリムカバー)とかベルトモールなど、取り外して作業ラックに置く作業を、すべて取替前提だから、それは対象外時間として除外した可能性を疑うのだ。しかし、これはあまりにこじつけ思考であって、そう云う云い分を聞いたBP業なら、そんなバカなことを云うなら、損傷ないそれら付属部品をすべて取替を認めるのかということになるだろうし、そもそもそんなムダな部品交換するより、脱着として部品を取り置く作業は、正味作業時間に入れるべきが妥当だろう。
また、損保協会の云い分を仮に認めたとしても、新品部品は箱に入ったりビニールパックされていたり、部品番号のラベルが添付されていたりと、これらを取り出し、ラベルを剥がす時間を考慮しているのかという問題も想定できる訳だ。
なお、車体協側でも対象外時間というのは7%ほど集計なされているのだが、一度装着しかけた部品を、装着順序の間違いで,改めて外したとか、試行錯誤で一度嵌め込んだが、どうも位置が違うことに気付いて、改めて付け直したという、広義に云えば整備の失敗だとか不適切というものを前提としたと思われる。ただし、ドアの様なある程度パーツ点数の多い部品であれば、ある程度の試行錯誤は一般論として、もしくは小ロッド作業の不確定要因として、すべてを失敗だから除外するという考え方もおかしいのだと思える。
③そもそも、この時間集計では、正味、準備、余裕、対象外と集計している訳だが、準備時間とは、それぞれの指数にすべてが入っているとは教えられたこともない。つまり、この正味とか準備を区分したのもマスプロダクションの考え方が前提にあり、マスプロダクションでは、ライン稼働前に各担当者は、それぞれ担当分の工具とか治具とかを準備する時間を要し、この準備時間には余裕を入れて設定するというものだ。
指数の準備時間とは、対象車両を置場から作業エリアまで移動するとか、指示書を受け取り内容の確認をするとか、さしあたり必要となる工具や部品ラックを車両周辺に用意する時間を云うのであり、指数だとすべての指数項目にこれらを入れると重複するので、フロントバンパーなどの項目に入れていると説明を受けているところだ。なお、溶接機が必用な作業では、アセチレンバーナーの用意や火口やゲージの調整とか、スポット溶接機の用意や試し打ちの時間などを溶接系パネルに入れていると思われるが、具体的にどの作業項目に幾ら入れているかの説明は受けていない。
④余裕時間だが、単一の作業を観測して、これは余裕だから除外するのは理解できるところだが、これを単一作業で集計することは意味がない。この余裕率は指数の場合は公式に正味作業時間の30%であるとされているのだが、この30%のい根拠は、ワークサンプリング法と云うらしいが、計測者がある瞬間の作業者それぞれの作業を捕まえ、その作業が正味なのか余裕なのかをおよそ1000事例程度を集計し、確立論的にも求めたものが余裕率であって、余裕には、作業余裕、職場余裕、用達余裕、疲労余裕などが考慮されているとされるが、1日の労働を考えて欲しい。作業開始は疲労も少なく作業もはかどるが、特に今の様な酷暑の時期は午後も終盤となると疲労も生じて来て作業ピッチも下がる。これが代表的な疲労余裕ということになる。
以上の様なことをこの集計表を見て思うところだが、実のところ損保協会側と車体協側で、作業の区分けで、一部ケンカのごとく言い争いになった場面の録音テープまで聴いたが、私は中立公平な視点で眺めたいが、車体協側が激高したのもある意味理解できるところで、こういう論理で対修理工場や対被害者と接したら、そりゃ揉めるだろうなと思うところだ。
この件と、過日報告した指数と米ミッチェル工数との比較表で、予想を超えた工数の乖離が生じている問題が把握されたことがある。これはある意味、元損保調査員として指数はある意味正当な科学的な数値だという意識を持っていたのでショッキングなことでもあった。また、従前の様々な工数策定とか過去に触れ合って来た指数策定に関与してこられた方々との触れ合いを通じて得られた教えというのが、様々な工数策定に関する論理条件を改めて知ると、かなりの欠落したもしくは知識不足の上でなされた所業があったと回想せざるをえないのだ。ただし、これら方々が恣意的もしくは作為的に意図してその様なことをしたとまでは思ってはいないが・・・。
ところで、自研センターでも当初の作業観測なりで標準作業時間を策定しようとしたが、単発作業でまともな時間計測ができる訳もなく、諸外国が基表という作業要素の積算を使用して工数を作り初めていることに気づき、真似て基表を作ったと云うことだが、このことはある意味、合理的な思考であろうと思っている。
ただし、基表で指数を作るからには、その基表テーブル値および基表の要素、固定方法として、ボルトサイズ、クリップ方式別、合わせの要素、その長さとか面要素、合わせの校正のアライメント難易度、一人作業か二人作業(中には三人作業も)という要素、仮付け要素1回としている様だが、何時の場合も1回が妥当なのか、などなどちょっと想定しただけでこの程度の要素は出てくる。
実のところ、この合同研究会があった頃(その前後は不明確)の記憶だが、損保協会(もしくは自研センターかも)では、損保に対し一部の基表のテーブル表を示し、こういう組み立てて指数は作っているのですと説明を始めたことがあった。多分複数回の資料配付が続けられたが、それがすべて完遂されることなく中断したのは、公取独禁法の警告(1994年10月)と時を同じくしてのことだったと思える。つまり、公式には自研センターは指数は科学的な時間値だから独禁法には抵触しないと云いながら、お客様相談室の言い回しも「指数は自研センターの参考値で使う使わないは個別損保と打ち合わせて欲しい」というそれまでの、「モノサシ」からかなりトーンダウンしたことでも判るが、対応単価だけでなく指数値で料金を拘束していると疑われるのを極端に怖れる論調に変化しているのだ。
ただ、今後の自整BP業としては、車両修復についての何らかの基準を持つことは、対ユーザーとか損保とのスムーズな料金決定には欠かせないことではあるものの、現状の不透明過ぎる指数については、透明化し検証をできる様にすることが必用ではないだろうか。つまり自研センターでは、企業資産だと言い張り公開を拒否している基表テーブルだが、全前公開した上で、現行の指数策定車について出されている構造調査シリーズという中途半端な書籍があるが、あれに要素別基表値の分離積算表を付けることで透明度はずいぶん向上し、これが損保としての公明正大な情報開示として受け取られることになる様に想像できる。また、料金を縛るなら、その様な説明責任があるのではないだろうか。
なお、ミッチェルで採用されているそうだが、ウォッチする自整BP業から、それなりの根拠ある異議がある場合は、それなりの検証作業を行い、再確認できた場合には見直す姿勢も大事ではないだろうか。
また、損保アジャスター諸君も、営利企業で勤めるからには上記下達に沿う宿命があるのだが、それ以前の問題として己の業務の社会的公平性をまっとうすべきが査定正義であり、ただただ決まっているという思考でなく、社会的公平性で眺め、異議が感じられれば自整BP業と同じく、根拠を持つ異議を提示して行く意識を持ちつつ活動して行くことが必用ではないだろうか。
#指数の疑問 #指数の合同検証会の歴史 #自研センターは基表並びに指数の根拠明示すべし