私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

亜鉛溶射のこと

2016-02-29 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 昨今の、建築構造物など、無塗装の亜鉛溶射(溶かして吹き付ける)で仕上げたものが多く目に付きます。鉄骨だらけの立体駐車場なんかも、これで仕上げるというか処理されているものが多くあります。塗装の様に経時的な劣化と塗替のコストが不要で、長期間の防錆能力が高い故に利用されるのでしょう。但し、欠点は、如何にも無粋というか、色味がないことでしょうか。

 ガードレールも、昔のものは塗装仕上げだけでしたから、古いものは錆びだらけとなっていますが、亜鉛溶射の上に白塗装したものは、塗膜がはがれていても、錆びていません。しかし、このはがれ、つまり塗料の密着が悪いのが亜鉛の欠点の様です。

 クルマ用の亜鉛メッキ鋼板(溶射でなく溶融亜鉛メッキ処理)も、1980年代中頃から使用されだし、90年代初頭には、車体モノコックのすべてが亜鉛メッキ鋼板というクルマもありましたが、現在ではコストパフォーマンスから、必用に応じた部位のみ亜鉛メッキ鋼板が利用されています。

 ところで、先の亜鉛に対する塗膜の密着不良ですが、クルマの外観を形成する部位については、亜鉛メッキのさらの上に、鉄分を多くした相をメッキ処理することで、改善しているということです。商品名はエクセライト鋼板と呼称する様です。

 何時の時代でも古きを愛する方がいるものです。1970年代のクルマ(国産、輸入車)も、今改めて眺めると、細かい点の処理や作りの荒さはあるものの、全体のデザインとして新鮮さすら感じる魅力を感じることが多々あります。だから、苦労してレストアし、もしくは車庫入れ等で保管状況が良ければそのまま(塗膜はやつれているが錆なし)で、楽しんでおられる方を時々見掛けます。しかし、この時代のクルマは、亜鉛メッキもカチオン電着もない(アニオン電着+エポキシでない下塗り塗料)ですので、主に車体の下部や、袋状部の水溜まりし易い部位(ロッカ-パネルやフロア、ドア下部等)の腐蝕は凄まじいものがあります。もし、本気でレストアしようとなれば、腐蝕部位を切り取り、同板厚の鋼板を手加工しつつ作り直していくという、恐ろしい工数を要する作業となるのでしょう。現代の亜鉛メッキ+カチオン電着(水性エポキシ下塗)のクルマでは、恐らく数十年後にレストアするとしても、1970年代のクルマの様な腐蝕による苦労は少ないのではないでしょうか。だだし、現在のクルマが、果たして時を経たときに、レストアすべき魅力を維持していないのかもしれませんが・・・。

 最期に、ちょっとクルマとは離れますが、100年、200年という単位で、海水中に浸かったスチールパイルを保護する素材のことをメモしておきます。これは、クラッド材と呼ばれ、鋼製のパイルの表面に薄いチタンを圧延加工して貼り付けたものです。これは、外部はチタンの強い耐食性を持ち、圧延によって何ら接着処理しなくても原子間結合して容易にはがれない密着性を持っているそうです。当然、チタンは素材単価が高価ですし、厚板ともなれば容易に加工できません。そこを、薄板のチタンで覆うことで、抜群の耐食性を持たせた素材で、新羽田空港の拡張などにも利用されたと聞きます。

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