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レクサスLS500hに見るITテクの方向性

2022-04-01 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
レクサスLS500hに見るITテクの方向性
 先日整備情報が提供されないという件で、国交省とトヨタ自・相談室との間で、多少ガチャガチャやったのだが、結果として3/25付で当方がターゲットして示したレクサスLS500hのLiDAR追加に関わる修理書などの改定内容の公開が早まったと認識している。今回は、この新たな内容を流し見しながら、その内容の概要と、関連して想像できることなどを記してみたい。

 今回の LiDAR の追加は、左右サイドとリヤへの3ケ追加により、既に装着済みのフロントと合わせ、車両の4面を LiDAR でカバーしていることになる。この作業は、既販売済みの LS500h や FCV車ミライでも、現在順次、販売ディーラーでハードウェア追加作業が行われている様だ。

 この新たなハードウェアの追加だが、これが果たす車両の機能向上は、アドバンスドライブという運転支援機能の向上だ。

 添付に、追加されたハードウェアを含むアドバンスドライブのシステム構成を説明した4ページ(実際は14ページだが、4ページ単位でまとめた)を添付図に示す。





 このシステム図の中から、①ECUに相当する部位と、②として各種センサー、スイッチなどの入力系、LCDモジュールやコンビネーションメーターなどの表示系、ラジオやアンテナなどの電波での送受信系などと2区分に大別して、そのモジュールをカウントすると、ECUが33ケ、センサーなどが54ケにもなる。しかも、これはアドバンスドライブ(運転支援)だけのものでのことだ。

 若干補足したいが、センサーや表示系に区分した、コンビネーションメーターには、実際のところ内部にECUが入っており、各種データバスラインからの信号をデコード(復号)しつつ演算処理して表示させたりしているのでECUに含めるという考え方もあるが、ここでは表示系の一種と解釈した。

 まず感じることだが、これらのおびただしい多数のモジュールだが、幾ら販売額が1千万円を超えるといえども、ここまでの別部品をそれぞれ筐体を独立させて作っていたんでは、およそコスト的に間尺に合わないものだということだ。これは、例えばシステムの完成度などに応じてだが、ある程度統合されつつコスト圧縮がなされていくべき方向性を持つだろうことが容易に想像できる。つまり、運転支援機能については、未だ黎明から発展期であり、既存のシステムの追加の連続の中で拡張つつ構築されていることが読み取れるいうことだ。

 それと、これらシステムの、特にECU間はバスラインという多重信号のシルアルバス通信で連携協調するが、従来から使用されているCANバスを基本としているが、例えば単位時間の通信データ量が多いものは、イーサネット(インターネットで使用される通信規格)とか、GVIF(ソニーが策定したというLCD表示モジュールとのシリアル通信規格)などが目新しいところである。この辺りは、ドイツ社で先行していた、MOSTとかFlexRayなどは使用されていない。

 今回の LiDAR 追加だが、直ちにその機能が有効化する訳ではないようだ。これはハードの追加作業がある程度完了された頃合いを見計らって、ECUの実行プログラムを更新する作業を経て、初めて新しい機能が有効となる。
 ところで、従来も各種リコールなどで、ECUプログラムの更新作業は、取り扱いディーラーにおいてなされてきたが、これは直接車両のDLCコネクタに結線した有線によるプログラムの更新だったのだが、既に他車種や他メーカーでも行われるようになりつつある無線電波(携帯もしくはスマホ用電波)によるOTA(オーバーザエアー)機能が搭載されており、これでも行える様になると説明されている。ということで、今後のシステムプログラムの更新だとか、地図データの更新などもOTAで行われるのが主になると想像できる。

 最近、車両のシステムセキュリティの強化ということで、既存のECUなどを故障により交換した際に、別途に供給されるセキュリティキーを書き込み操作をしないと、通信ができない強化が新型車から採用されると案内されている。これは、CANバスデータから割り込ませた盗難団ハッカーが偽造信号で車両のドアロック解除とかエンジン始動までを行うものが既に出始めていることも含め、このOTA経由による様々なハッキングを防止することも含めた対応であろうと想像できる。

 それと、この車両とメーカーサーバーが必要に応じて使用者が意識せずに通信できる環境というのは、車両メーカーにとってある意味でおいしいビッグデータを提供することになることを使用者ユーザーは意識しつつ監視しなければならない様にも思える。

 これは、有意に解釈すれば、日本のこの地点での現在外気温度は何度Cか、雨が降っているのか、渋滞しているのかなどが判るというものだろう。悪意に解釈すれば、車両の移動ログを位置情報と共に時間で記録き、詳細地図上でプロットできてしまうとか、運転経歴で粗暴な運転状態があったとか、ある意味高度な運行記録計を搭載している状態になることだ。これは、そのデータの扱いについて、それなりに制限をしておかないと、個人情報の流出侵害という問題に発展する可能性もある。

 それと、海外発の報によれば米テスラでは、本来NHTSA(米運輸局)に届け出てリコールしなければならないものが、OTAで黙って更新されている嫌疑を生んでおり警告しているとされるが、OTA搭載により、ことシステムプログラム上の問題は、モラルの問題を除外すれば技術的にはできてしまうという問題がある。

参考
①ls500hとほぼ同じと想定できるアドバンスドライブECUの回路基板を示したもの。(ソース:日経クロステック)


②LiDARの原理
 LiDARはレーザー光をスキャン(走査)しつつその反射光から、立体物などを連続的に点の連続として距離を計測しつつ捉え、距離精度はミリ波レーダーを上回るという。ただし、雨とか霧などに弱く、レーダーデバイス素子クリアガラス面の汚れに弱い様だ。


#運転支援機能 #LiDAR #OTA


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