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指数の話し・指数値と戦った男の歴史

2022-12-01 | 問題提起
指数の話し・指数値と戦った男の歴史
 この「指数」と云う言葉だが自動車整備以外の一般人を前提とすれば、そりゃ何だ? 知能・・、不快・・とかのたぐいか?と、怪訝な声で返答を受けるのではないだろうか。ここで、「指数」と云うのは、事故車の復元修理(いわゆるBP)に関わる(株)自研センターで作成の指数のことを指すのは、自動車BPに関わる業種や損害保険のいわゆる損調関係者なら当然承知のところだろう。
 ちなみに、日整連では、自動車整備に関わる業務を扱う機関だが、指数と同様のものを点数と呼称している。ここからも察することができるが、指数にしても点数にしても、これに単価(対応単価)を乗ずることで、当該作業の工賃額を出せることになる。つまり、指数にしても点数にしても、一見無名数(単位のない値の意)だが、実質は工数相当と等価なもので、実質はh相当の単位が与えられていると解釈できる。

 さて、単純なことを小難しく説明してしまったが、この工数相当の指数の値に、今から約30年前に「指数値は過小ではないのか」という妥当性に異議ありと申し立てした人物のことを今回は取り上げてみたい。

 これは正式名称ともかくとして内容としては、「指数検証会」と名付けるべきもので、指数策定された実車の個別特定部位の作業を時間計測しつつ、指数と実時間の対比を検証するというもので、合計16回の異なる車種と部位で検証を繰り返したというものだ。実施年月は1991年前後の各月におよぶものだったそうだ。BP業界におられる方とか損保調査員の方々は、どういう結果だったんだろうと非常に関心持つのではないだろうか。

 検証会の概要としては、作業検証場所は(株)自研センター作業場で、作業者は自研センター職員作業者、時間計測者は日車協の本問題の発起人たるN氏を含めた数名と対する損保協会側数名という中で、部外者立ち入り禁止で行われたそうだ。実のところ、この時、私は某保険会社直結の損調会社に勤務していたのだが、1990年4月から1992年3月末まで(株)自研センターに派遣されており、当時所内でも車協と損保協会が何やら検証会をやっているという事は聞いていた。ただし、許しが出ていれば人一倍好奇心が強いので、当然会場を注視なりしたと思うが、当時は立ち入り禁止と言明されていたので不可能だったのが、今回改めてその時の資料を30年ぶりに見ることになったという事なのだ。ただし、総計16回のデータすべてを入手できれば、もっともっと様々な考察ができたのだが、ようやく1例だけのデータを入手できたので、その時間集計表を添付したい。

 さあ、この時間集計を見て、BP業の方、損保調査員の方、それぞれどう見るか、意見を聞きたいものだ・・・。

 実のところ、本ブログを見続けている方は理解されていようが、私は先週末に大阪へ諸用で出掛け、そのついでに大阪周辺で幾つか紀行文を記しているのだが、その諸用とはこのN氏に面談し、もっと掘り下げ歴史としての事実を探求したいということがあったのだ。しかし、面談はできたものの、予定にない訪問者が参入したこともあり、掘り下げる話しに至らずとなってしまったのだった。しかし、今後機会を見て、歴史を整理しつつ、指数値の妥当性を検証していきたい。

 さて、集計表を見てもらった方には様々な意見もあるところだと思うが、ここでは私なりに疑問を以下の通り整理した。

➀この様な検証会を行うのは誠に良いことであったと思うが、まず最初に思ったことは、予め車種と作業部位を自研センター作業者に知らせておいて作業したとなれば、このことは正常な時間計測とならないことが見えているということだ。つまり、この検証会で実演する作業者の心理は、業界関係者の前で、淀みなく作業を完遂させたい、もっと端的に記せば恥かきたくないという心理になるだろう。その思いが、もしかすると、事前の予行演習までに至る余地も出てくるし、この様な環境はおよそ通常の作業ではなく、競技会の様相を生む可能性を考慮したのだろうか。

②この集計表を見て最初に目に付くのは、損保協会の集計で対象外作業が25%近くあるのだが、およそ何でと思うところだ。これについて、N氏は損保協の集計は、ドア取替の作業で、ベルトモールとかドアトリムなど、様するにドアの付帯部品をすべて目的外作業に組み入れたと疑うのだ。その論理はこういうことだ。
 指数で取替という場合は、その作業の主体部品を取り替えるに際し、付帯部品もすべて取替るという組み立てで考慮しているという考え方がある。これを実例で示すと、フロントフェンダー取替を例とすると、フロントフェンダーに両面テープ装着のモールがあるとすれば、モール剥がして再使用は考慮せず、新しいモールの着作業のみ含めているという考え方なのだ。しかし、本件ドアパネル取替で、トリムとかベルトモールなど、無傷で再使用可能な部品まで、すべて取替前提で、その部品を外しまでは見ているのだろうが、それを部品ラックに置く作業は対象外作業とは、あまりに異常ではないだろうか。もし、指数の策定で、こういう考え方で策定されていることが真実だとしたら、これはもっと大きな問題ともなり得るだろう。
 この件だが、N氏に聞きながら当時の音声だけの録音を聞かせてもらったが、かなり抗議するN氏の怒声が聞かれるが、これは私でも声を荒げる意見の相違だと思う。

③そもそも論だが、指数は正味、準備、余裕に区分けされるという自研センターの組み立てだが、私の知る限り、準備というのが、すべての作業項目に入っているとの説明はないと認識している。
 指数の準備時間とは、対象車両を置場から作業エリアまで移動するとか、指示書を受け取り内容の確認をするとか、さしあたり必要となる工具や部品ラックを車両周辺に用意する時間を云うことと認識している。
 指数だとすべての指数項目にこれらを入れると重複するので、フロントバンパーの項目に入れていると説明を受け認識している。なお、溶接機が必用な作業では、アセチレンバーナーの用意や火口やゲージの調整とか、スポット溶接機の用意や試し打ちの時間などを溶接系パネルに入れていると思われるが、具体的にどの作業項目に幾ら入れているかの説明は受けていない。

④余裕時間だが、単一の作業を観測して、これは余裕だから除外するのは理解できるところだが、これを単一作業で集計することは意味がない。この余裕率は指数の場合は公式に正味作業時間の30%であるとされているのだが、その根拠はワークサンプリング法と云うらしいが、計測者がある瞬間の作業者それぞれの作業を捕まえ、その作業が正味なのか余裕なのか、およそ1000件程度を集計し、確立論的にも求めたものが余裕率であると説明されている。
 また、余裕には、作業余裕、職場余裕、用達余裕、疲労余裕などが考慮されているとされるが、1日の労働を考えてみれば、作業開始は疲労も少なく作業もはかどるが、午後も終盤となると疲労も生じて来て作業ピッチも下がる。これが代表的な疲労余裕ということになろう。つまり、1件の作業時間計測で余裕率を入れて指数対比するのなら、正味×1.3+準備(このドアで準備があるのも不思議だが)という積算となろう。つまり、添付集計表の私の積算値では、損保協会2.46、日車協3.31となる。

まとめ
 しかし、合計16回にも及んだこの検証会の総集計としての思考としての意見がなんら文書として残されていないのか、互いに口頭だけの言い争いで済まされてしまったのだとしたら、それは残念なところだと感じざるを得ない。この点について、N氏に聞いて見ると、当時DRPへの話しが持ち上がり、日車協会員の参加者も指定工場を目指して、本検証会への熱意は急速に低下して云ったことが伺われるのだ。つまり、指数値と戦った男N氏はある意味孤独となってしまったという印象を受けるのだった。


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