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【書評】企業小説「トヨトミの逆襲」 追記

2021-12-01 | 論評、書評、映画評など
【書評】企業小説「トヨトミの逆襲」 追記
 昨日記した「トヨトミの逆襲」の書評については、最終章を未だ読んでいなかった。2019年初版の本書では、最終章の場面は2021年から2022年4月で物語は終わるのだが、完全な作者の未来予測ということになる。

 物語では、統一は自分の積極的に評価し助言を与えてくれる者達の欺瞞にやっと気付き、次期社長を技術部門出身の愚直な男に自ら決め、物語の最後にそれが公開されることになっている。また、EVに出遅れたトヨトミのEVも、とうとう僅か30名の小さな企業のブレークスルー技術を元に、バッテリー容量だけでなくモーターの効率アップで1充電1000kmという世界の車両メーカーが望んでいたクルマを初めて完成させることができるというハッピーエンドの形で終わる。

 この物語の中で、終章は安本という業界新聞の記者が定年を数年前にして退社を決意し、独立したシャーナリスととして過ごす姿を記すが、これが著者が自己を語っているのだろう。そして、先の最終章の粗筋は、著者自身の希望を交えた近未来の予測だろう。

 ところが、物語の終わり2022年4月まで残り半年を切る現在時点で、とても著者の希望的観測とはなりそうもないと云う諸情勢を感じる。つまり、ネオプリウスの(BEV)の1000km連続走行は未だ公表される見込みはないし、そもそも中国に入れ込んで来たが、その中国が末期的な傾向が現れつつあることにも触れていない。

 そして、統一は相変わらずNo2の林も健在だし、忖度役員会も変わりはないようだ.そもそも、実トヨタは、2019年から国内生産の縮小均衡を見据え、全国ディーラー全店での全車種併売という、既存ディーラーの既得権を奪施策を打ち出し。今年の5月から実施されている。既に、東京では多数のトヨタ系ディラーが一体化した「トヨタモビリティ東京」(TMT)は発足して稼働し始めている。このことは、全国に広がる地場資本系のトヨタ全ディーラーがとても生き残れないだろうことを暗示させるもので、かつて生じて来た日産、ホンダ、マツダ、三菱などと同じく、全国トヨタディーラーの統合縮小均衡化は必然として起こることを予見させるが物語には記していない。

 また、今年生じた全国トヨタディーラーの短時間車検の取り扱いを巡る不正車検が露わになり、一応の収束をみてはいるが、このトップダウンと配下が何も言えない権威主義というか忖度主義のことには何ら言及なされていない。ましてや、検査員の立場は国家の業務を代行するみなし公務員としての公平性が求められるのだが、今次解任された検査員解任という個人的行政処分を受けた検査員の総てが何も意見できなかったということに何ら触れていない公式謝罪文では、いずれこの問題は再発もするだろう。

 ただ、作者は物語の中で、統一が自らが選ぶ次期社長を愚直に業務を推進する技術部門の生え抜きを選ぶ姿を描くのだが。このことは私の思いと強く一致する。かつてのホンダとかソニーにおいて、経営トップは技術か営業か(スペシャリストかゼネラリストか)という問題は、特にものを作る製造業においては同じだと思う。どちらがトップでも良いが、No1とNo2はほぼ均等もしくは対等な力関係を持っていなければ、真の市民に受ける商品、もっと云えばオンリーワン日本ブランドは亡くなってしまう様に思っているのは、著者の思いと完全一致するところだ。


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