私の思いと技術的覚え書き

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パトカー事故の考察

2017-10-31 | 事故と事件
 何処かの誰かさんが写した高速道でのパトカー事故だが、面白半分に考察してみたい。ところで、警察署の近くの板金工場など、パトカーが事故修理で入庫している事例は多い。まあ、今回の様な大事故(全損だろう)は滅多に見られないが・・・。

 今回の千葉県警のパトカーだが、一葉の写真からは、クラウンかマークXか判らんが、いずれもロワボデーは共通だし、アッパーボデーが違うだけでクラッシュ特性も類似の範囲だろう。この一葉の写真だけしかないが、一番大きな損傷は右フロントピラー上部(カウルパネル辺りの高さ)に強い入力を受けているのが判る。従って、右Frドアは後方下がりで開けたドアが閉まらなくなっている(ドアロックストライカーが食い違い閉まらない)ことが伺える。それと右後側部(クォーターパネル)の損傷だが、線状のほぼ直線状の変形が上および下にあるが、後方下がりの角度が付いている。このことは該当部への変形を生じさせた相手物(たぶんガードレールかガードロープだろう)は位置固定(水平)だから、車両は前傾姿勢つまりブレーキングによるノーズダイブ状態であったことが判る。

 前部や後部のバンパー、ボンネット、Frフェンダーなどが外れてしまっているが、最近のクルマは特にだが、バンパーなどはほとんどクリップでボデーに固定され、少数のボルトも使用されるが、M6程度の小径ボルトがほとんどだ。正面衝突みたいないわゆる心向き衝突(入力角が重心を通る衝突)だと、今回の様に装着部品が脱落することは少ないが、偏心衝突(入力角が重心を外れた衝突)だと、衝突部位に押し付けながら左右どちらかに引き千切る力が作用するから簡単に外れてしまうという訳なのだ。ということで、今回の事故は偏印衝突だが、衝突により偏心力が働いたというより、衝突前にスピンモードに陥っていたと考えるのが妥当だろう。しかも、その時、運転者はブレーキを踏みノーズダイブ状態であったということだろう。

 なにゆえ一葉の写真なので、前と後ろとどちらが先にぶつかったか判断は難しいところである。仮説だが、右後部の入力は前から後ろの様だから、以下の様に想定してみた。パトカーは追い越し車線を走行中、(多分検挙対象車の前方に回り込もうと左に操舵した。しかし雨天のによる路面摩擦係数がそれなりに低下しているにも関わらず操舵速度が速過ぎ、車両は左回りのスピンモードに移行した。慌てた運転者は、急制動を行うが更にスピンモードは強まり右後部をガードレールにヒットした。(衝突1)更に慌てた運転者は反射的に右急操舵を行い左廻りスピンによる進路を修正しようとした。この、いわゆる逆ハン操作により車両は右廻りのスピンモードに移行し始めることになった。そして、ノーズダイブで車両前端を下げた姿勢で、ガードレール下へ潜り込み車両前部の損傷を生じせしめた。(衝突2)

 雪上はもっともっとスリッピーだが、雨天も摩擦係数はそれなりに低下する。もし、速度違反の検挙なら、140とか150km/hという高速で走っているだろう。そして、ステアリング入力ゲインの立ち上がりが急激過ぎると一瞬でスピンモードに移行する。レーシングドライバーなら、それほど走行角が付く前に反射的にステアリング戻すなり逆ハンなりでスピンを止め得るだろう。しかし、如何な訓練を受けた警官でも相当腕に覚えがあるドライバーでも、高速での急激なスピンを止めるのは難しいということと、初期動作としてステアリングを切る速度に気を付ける必要を物語る事例だろう。


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