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新幹線の電源の話し

2020-09-23 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 私の趣味だがクルマは当然好きだが、鉄道オタクまでの意識はないが鉄道には結構感心を傾けている。そんなことから、東海道新幹線の電源に関する話しを記してみたい。

 新幹線の架線電圧はAC25KVだ。つまり交流25,000Vだが、単相交流ということだ。本来なら、大電力を効率良く給電するには三相交流で給電したいところだが、電源は架線1本とレールの2つの要素しかないから、三相給電は信頼性とか保守費用から諦めている訳だ。

 ただし、新幹線も300系以降は、IGBTなどのパワー半導体の大幅な進歩で、単相25KVを受電し、一度DCに変換後、新たに三相ACとし、しかも電圧と周波数を可変にして、3相動機モーターを駆動する方式になっている。

 ところで、2011/3/11で福島原発が壊滅し、計画停電という出来事があったのを覚えているだろうか。実際のところ、この計画停電はやらなくても良かった説もある様だが、そのことは置いておいて、日本中で電力のやりとりが困難な理由が、あれから9年を経るが、何ら具体的に見直しの論議も聞かれないのはどうしてだろうか。つまり、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を結ぶ線を挟んで、西が50Hz、東が50Hzという違いが生じたままなのだ。これは、そもそも明治時代にさかのぼり、各地に民営の電力会社が多くあった時代に起因はあるのだ。それが、国で電力会社を特別に管理する電力管理法の下に置きながら、周波数の違いをそのままに据え置き続けたという、ある意味危機管理の欠落があるのだ。実際のとろろ、我が沼津市にある変電所には、周波数の区切りの近くにある事もあり、50と60の双方向に周波数を変換する設備を付帯して持っている。ただし、送電電力の総てを周波数変換できる訳ではなく、幾らまでか具体的な数値は知らぬが、限られた電力しかやりとりはできないのだ。

 ここまでの知識を前提として、東海道新幹線は、東京から大阪まで走る訳だが、その建設時から架線への給電は単相交流25KV(60Hz)で統一されているのだ。また、架線への給電は、電圧降下の問題や、架線電流の限界もあり、20~30km間隔で、路線の近くに変電所を設置しており、高圧送電塔からの電圧を減圧して給電している。そんな中、富士川から東側の変電所においては、単に単相25KVにするだけでなく、周波数を60Hzに変換する周波数変換設備も幾つか持たせているのだ。ここからが今回記したいことなのだが、交流周波数の変換を、回転型から静止型に来年(R3年)までに総て完了を終えるというJR東海のお知らせ記事がある。(詳しい内容は写真資料を参照)

 ここでJR東海が云う。回転型というのは、富士川より東で50Hzを60Hzに変換する場合、まず50Hzで同期モーターをぶん回し、直結した交流発電機で60Hzの発電をおこなうというものだ。交流発電機の周波数は、回転数もしくは回転子の極数で変化するので、極数を1.2倍にするか、まったく同一の極数の交流発電機だとすれば、変速ギヤで1.2倍に増速することで、周波数を変換できるという式だ。

 しかし、冒頭に述べた様に、今や300系新幹線の用に、パワーエレクトロニクス技術で、周波数や電圧を可変にできるので、静止型というのは、そういう意味なのだ。

 なお、JR東海は、今回の様に架線周波数を60Hzで統一化しているが、長野を通る北陸新幹線は、既に300系登場以降の新車両を前提にしていたこともあると思えるが、車両側で50、60の相互の変換を行える仕組みを採用しているそうだ。JR東海で、車両側を変更する案も検討したと思えるが、車両以外の線路機器とか制御機器の仕様変更だとか、過渡的に移行できる優位点などを含め、従来同様の給電形態は保持することにしたのだろう。

 しかし、全段にも記したが、1国で複数の周波数を残し続ける意味はないだろう。全国60Hzで統一すれば、送電網のやりとりも融通が効くし、モーターなどの使用機器で、互換性がなくなったり、出力が変化してしまうなど、不便極まりない、これこそ国家の危機管理の一つだろうと思うが、こういうことを述べる政治家は聞かない。

写真説明
①周波数変換設備の変更1ページ(JR東海)
②周波数変換設備の変更2ページ(JR東海)
③熱海丹那トンネル近くにある新幹線変電所1
④熱海丹那トンネル近くにある新幹線変電所1
⑤熱海駅を通過する新幹線N700のぞみ






※新幹線熱海駅のこと 2016年1月24日記
 JR東海・新幹線熱海駅ですが、ここはトンネル間のカーブ(おそらく500R位はあるだろう)の途中に設置された駅だ。通常の新幹線駅では、引き込み線が設置され、「のぞみ」などの追い越し車両をやり過ごせる訳だが、ここはスペースの関係もあり追い越しレーンが設置されていない。従って通過車両は、恐らく200km/h近くでホームを通過する。そのため、停止車両の停車以外は、ホームの仕切り扉を閉鎖し安全を図っている。今回の「こだま」乗車時も、「のぞみ」が爆走して行くが、カーブ後の新丹那トンネル(8km程)以降は直線だから、最高速近くまで加速して行く。

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