写真はボーイング747の、コックピット部のフロントガラス部分です。このガラスは多分、厚さ5cm程度もある積層ガラスであろうと思います。しかも、各ガラスは熱処理が施された強化ガラスであろうと想像されます。?
クルマの全面ガラスに昔は、単に熱処理した強化ガラスが使用されていましたが、強化ガラスは破損時に一気に全面にヒビが入り視界を損なうことから、ガラスの中央部分のみ熱処理して破損時に中央部分のみが脱落する部分強化ガラスに変更されてきました。
しかし、この部分強化ガラスも衝突時に、残されたガラス部分に乗員顔面が当たり、失明する危険性が高い等の問題点が指摘され、1987年(昭和62年)2月より、前面ガラスにあっては合わせガラスの採用が道路運送車両法の保安基準で義務付けられました。
このクルマ用の合わせガラスですが、熱処理していない生板ガラス2枚の間のポリ・ビニール・ブチラール(PVB)という樹脂の中間膜を挟んで接着した構造のもので、その板厚は7mm前後のものです。
この合わせガラスですが、生板ガラスですから割れやすいのですが、割れても強化ガラスの様に一気に割れが広がることがないので、十分視界を保つことができます。それと、PVBという樹脂が強く、容易にモノが貫通しないという特徴を持っています。特に、標準品の2倍の厚みの中間膜(PVB)を使用し、より安全度の高い合わせガラスをHPR(High Penettration Resistanc;貫通抵抗)と呼ばれます。
この合わせガラスが標準で採用され出した頃、これからはそれ程大きな事故でなくとも割れるケースが増えるなと想像したものでした。それまでの強化ガラスでは、フロントピラーが相当に動き、見るからに大きくフロントウインドウがしなっていて「よく割れないなあ」なんて関心する事故車があったものです。しかし、合わせガラスでは生板ガラスですから、しなりに弱く、ボデー変形による割れが増えると想像した訳です。
この想像は当たっていて、右前斜めに入力している事故車で、フロントウインドウの左側下角に割れを生じている事故車なんかをよく見たものでした。これは、フロントウインド下部角のカウルとピラー(もしくはフェンダーエプロン部)の合わせ目がズレることによって生じていたのだと思います。
しかし、そんなガラスの割れも、昨今益々強化されつつある衝突安全ボデーでは、少なくなって来ていると感じられます。