私の思いと技術的覚え書き

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池袋暴走を再び思う

2021-02-07 | 事故と事件
 この2019年4月に東池袋で生じた母子2名が死亡した事故だが、訴訟の経緯がYoutubeなどで繰り返し報道もされ、私も職業柄も感心を持って見ているのだが・・・。
 最近報道で、加害運転者の飯塚某(現82才)は、「ペダルの踏み間違いはなかった。暴走し始めて、改めて踏み間違いでないのを確認した」などと供述しているのを読み、ワンボックス車の様なステアリングポスト(心)が比較的立っている車両ならともかく、事故車のプリウスの様なステアリングポストの寝ている乗用車では、頭を傾げてのぞき込む様な動作をしない限り、ペダル上の足先を確認することは不可能であり、まったく詭弁としか感じられない。
 また、飯塚某は、「自分はブレーキを踏んでおり、それでも暴走したのだから車両の欠陥だと」との趣旨で主張もしているという.ただし.この様な主張をするなら、なんらかの証拠なり根拠を示さなければならないだろうが、それはない。
 今回の該当車もそうだが、現代車ではアクセルバイワイヤと呼ばれる、アクセルペダルの動き(踏み角度)を検出し、それに伴うエンジン本体のスロットルバルブの開度を決めている。事故車はHV車なので、モーターとの協調制御も加味されるから、必ずしもアクセルとエンジンスロットルの角度は相関性を持たない場合もあるのだろが、仮にHVでない一般的なエンジンでは、アクセル開度とスロットル開度は大まかに比例関係といえる相関性を生み出している。もう少し自動車工学的に記すと、アクセル開度に応じた信号電圧を検出し、エンジンECUでは検出したアクセル開度に応じて、目標スロットル開度に応じてスロットル開度を開く駆動を行う。ここで、スロットルの場合は、仮に信号線が1本だと誤信号により誤動作の可能性もあるとして、スロットル開度に応じた信号線は2つを持っており、それぞれの信号値(電圧)は異なると云う特性を持たせている。エンジンECUでは、この2つの信号線の電圧値の差を常に検出しており、もしも正常値と異なる関係にあると判断すると、異常と判断しアクセル制御を停止する。
 一方、スロットルバルブを駆動する信号線も、アクセルセンサーと同様に2つの別々の値となる信号値を与えており、この関係性をECUで絶えず検出している。つまり、ここでの結論だが、アクセルバイワイヤでは、アクセル開度を検出する信号線1本とスロットルバルブを駆動させる信号線1本で用は足りるのだが、あえて信号線を2本とし、しかもそれぞれの信号値は関係性を持った別値として検出し、アクセルもしくはスロットルの動作の信頼性を上げているのだ。コンピューター機器では、この様にシステムを2重化するなどあえて冗長化させても、システムの信頼性を上げる工夫がなされているのだ。なお、2つの信号線の関係性に正常値と異なることがECUに検出されると、制御を停止すると共に、一般的にはアイドルの目標値にスロットルバルブの開度は移行する。これと共に、OBD機構は、異常を検知し状態を記録保持する。
 ちなみに、スロットルのここまでの多重信頼性を向上は、従来のワイヤーを使用した機械式では求めようもなかったのであるが、アクセルバイワイヤーが採用されると共に、世界中の現代車では採用されている。ここからは想像も含むが、一つは冠水走行時のアクシデントに備えていると思える。冠水も水深により、例えばエンジンの吸気口に達する様な深い水深では、エンジンンが停止してしまうので問題はない。しかし、アクセルペダル付近の床が水没する程度では、走行継続が可能な場合もあろう。これをあえて、不可能にすると、軽度な水溜まりを通過しただけでエンジン停止など、別の問題が生じる。そこで、アクセルセンサーの部位が冠水した場合だが、一般に同センサーは室内側に設置はされているのだが、比較的床に近いこともあり、センサー回路自体は防水構造をとっている。しかし、信号線が仮に1本だと、異常値として検出できず、運転者の指示とは異なるスロットルの開度になることも考えられる。この辺りが、アクセルバイワイヤー2重回路化の狙いの一つだろうと想像する。
 話しは変わるが、現在のところ加害車両の暴走による最高速度は96km/hだとされている様だ。だぶんEDRの記録値から読み取ったと思うが、ここで2つばかり関連することに触れてみたい。
①EDRの速度検出値は車速として絶体正しいのか?
 この表題を考えてみたとき、車速検出の値はスピードメーター値ともなる訳であるが、駆動輪の回転速度を検出していると云うことを意識しなければならないだろう。だから、微少ではあるが、タイヤの摩耗によりタイヤ外周値が異なれば変化することもある。しかし、もっと大きな問題は、仮に車体がドリフト状態などで斜めに進行していたとすれば、もっと大きな狂いが生じる余地もあるだろう。これを高精度に検出しようとしたら、超高精度なGPS衛星値と極短時間毎の速度変化を検出できたとすれば、正しい速度値が保証できる訳だが・・・。何れにしても、EDRの速度記録値が何時も絶体正しいとは限らないと云うのが、拙人の考え方だ。
②制限速度の2倍を超えるか越えないかで判例は異なる実情がある
 これは判例のことだから、法令に明記している訳ではないが、何故前例にならう訴訟の中で、法定速度の2倍を超えていることを理由として危険運転致死か通常の業務上過失致死障害か分かれることが伺える点が気に掛かる点だ。つまり、事故現場の制限速度が実際幾らか知らないが、仮に50km/hだとすると、96km/hと認定された速度では2倍は越えないのだ。この辺り、警察や検察は、その辺りを含んであえて、96km/hに速度を(抑制)した可能性も否定できない様にも想像されるのだ。
 そもそも危険運転致死だと禁固6年程度になり執行猶予を付すことはできないだろう。これが、業過障だと禁固3年で執行猶予となる。これを検察はお落とし処として、あえて元高官に配慮してやいないかと云うのが今回の結論だ。

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