私の思いと技術的覚え書き

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最近読んだ本「答えは必ずある」

2017-11-09 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 この「答えは必ずある」の著者は人見三夫氏であるが、マツダの現執行役員であり同車のSKYACTIVエンジンのプロジェクトリーダーである。この方を知る切っ掛けとなったのは、通例の図書館通いから、NHKドキュメント「プロフェッショナル仕事の流儀」シリーズのDVDを発見し借り出し見たことにある。

 DVDで見る人見三夫氏は、失礼ながらはっきりいってデブだし、クルマに対し強い思い入れを感じるなんてことはない方とお見受けした。しかし、エンジンデザイナーたる先行開発部の長として、本質を突き詰め、持てない資源から、どうやったら最適解を得られるかという分析、優先順位、信念を曲げないリーダーシップなど、魅力あふれる人物だとお見受けした。その後程なく、人見氏が著した「答えは必ずある」が出版されていることを知り、早速NETで中古本を入手した訳だ。

 読後の感想としては、表題の「答えは必ずある」が適切かとも思うが、気をてらうことないエンジン開発の戦略とリーダーシップが良く書き表わされている本だと思う。SKYACTIVエンジンの詳細は当然企業機密もあるから、詳細な全貌は記されていないが、思考過程とか、強いリーダーシップ、そしてリーダーたるが故に生じる迷いを吹き払う信念といったものを感じた次第だ。

 なお、数年前に出版された同本内で、ガソリン高圧縮、ディーゼル低圧縮の更に次を示唆すべき更なる高圧縮で薄い空燃費で回すエンジン(つまりHCCIのことだろう)に取り掛っていることも触れられている。

 SKYACTIV-Dの排気管デザインのことだが、排ガス規制の強化と共に冷間始動時の排気温度低下による触媒不活性という問題について触れた箇所は参考になる点がある。排ガス対策以前の高性能を狙う旧車あれば、4-2-1とかの集合管は当然だった。しかし、触媒付車はEXマニホールド直下に触媒を設置して早期活性化を促している。しかし、排気管の取り回しは4-1とならざるを得なく、排気干渉を生み出してしまう。SKYACTIVでは、4-2-1という長い集合管でその後に触媒が付くが、直噴の多段噴射を生かし、冷間始動直後のピストン下降行程で再噴射と再点火を行っている様だ。この辺りは、ノウハウの問題もあるから明確には記述されてはいないが、直噴なればの工夫といえるだろう。

追記
 正直言ってマツダというメーカーは三流メーカーだという意識が強かったし、ロードスターを作り続けるスピリットは素晴らしいが、その他は評価すべき点はないと認識していた。その認識を変えたのが、このSKYACTIV(名称はともかく知恵)だろう。それと、この手の本をエンジニアが世に出すというスピリットは大切だと思う。従来だとホンダ辺りは、その様なスピリットを持っていたが、今のホンダには絶えてしまった。自動車技術みたいな業界専門書に記すことも大事だろうが、もっと世に広く広めるという意味では、評価に値する本だと思うのだ。

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