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クールドEGRの解釈

2022-05-19 | 技術系情報
クールドEGRの解釈
 ここでは、、一般の解説書ではあまり深く触れることとのないEGR装置について、あくまで拙人としての想像も交え解説する試みを記してみたい。

 EGR(exhaust gas recirculationの略語)とは、排気ガス再循環装置のことだ。この装置に関連して、そもそもガソリンエンジンの排気ガス対策の歴史を振り返ってみるとS48(1973)年規制と云うのが最初だが、点火時期の進角を基準値から動かさない様にする程度で、極一部のエンジンだけに触媒とかEGR装置が使用されたが、極僅かの車種で拙人はそれらのクルマを見たことはない。

 その後、S50年度(1975)規制というのが本格的な排出ガス対策時代になり、酸化触媒コンバーター付きはホンダCVCC以外は当たり前で、EGR装置も装着される様になった。さらにS51年度(1976)規制というもので、さらに排気ガス規制は強化された。この50年および51年度規制適合車というのは、圧縮比まで落とし、エンジン出力や燃費の悪化は酷いもので、あくまで一過性の不良エンジンを作り出した悪夢の時代だった。

 ところが、ガソリンエンジンとしては最終となるS53年度(1978)規制に至り、エンジンを理論空燃比で燃焼させることで、三元触媒というCO、HCの酸化とNoxの還元ができるという特効薬が生み出され、エンジン性能は当初は元に戻り、それ以降様々な改善で実馬力は向上していく時代になった。このS53年度規制以後、理論空燃比でエンジンを動作させるということでO2センサーで常に空燃比を制御するということで、従来のキャブレターが絶滅し、全車燃料噴射の時代になったのもここが境となる。なお、ホンダのCVCCも電子制御に時代に至り、自然消滅するに至る。

 次に、H12年度(2000)規制で、S53年度規制が強化され、一部の高馬力スポーティエンジン車が販売を終えることになった。ただし、時代の進歩というか可変バルタイなどの実用化とか、さほど圧縮比も落とさずターボ加給できる、ガソリン直噴などエンジン技術の発展は著しく、現在から5年程度前までガソリンエンジンでEGRという装置がまったく使われることはなかった。

 一方、ディーゼルエンジンの排気ガス規制もS54年度(1979)から排ガス記号K-として始まりS58年度(1983)から排ガス記号P-となったが、エンジン付加装置は大した違いはなく経過していた。ところが、H11年度(1999)でディーゼルの長期規制が始まった。H15年度(2003年)となると、ディーゼルの粒子状物質(PM)規制が始まり、DPFが装着し始めた。平成17年度(2005)からは、ディーゼル新長期規制が始まり、Nox対策として、EGRおよび尿素SCR装置が付き始めた。

 そもそも、EGR装置にクールドと頭に付されるようになったのはディーゼル用のEGR装置で、排気ガスを再循環させて燃焼温度を低下させてNoxを低減する効果を高めるためにクールドEGRと名乗り、排気ガスを一定容量の金属キャニスター(容器)内で滞留させることで空冷で冷却すると云う思考であった。

 ところが、このディーゼルの排気ガス規制の要として、噴射圧を極めて高め、微細噴口ノズルから電子制御で多段噴射するコモンレールが実用化されたのだが、それでも直噴エンジンという特性上から来る、燃焼室壁面に付着した燃料粒が温度境界層下で蒸し焼きにされカーボン化する現象は少なくなったといえ、絶無になった訳でない。このカーボンを含んだ排気ガスをクールドEGR通路に通すことは、通路を閉塞する問題や、EGR量を開閉するコントロールバルブを固着させるトラブルが大中型車では出ている様だ。なお、EGRが詰まるなら排気ガス浄化が悪化する問題があり、EGRバルブが開きっぱなしとなると、出力低下やアイドル不良というトラブルとなる。

 また、米国では10万マイル走行時(16万キロ)の排気ガス浄化性能をチェックしているという極めて厳しい認証試験がある。これで、VWと日野が大きな咎めを受けている他、ガソリンO2センサーも触媒の上流および下流の2つが採用されて、触媒劣化を診断するシステムに変わっている。

 また、ガソリンのエンジンへのEGRの再投入だが、ディーゼルの場合とまったく役目が異なる。ディーゼルの場合は、軽負荷とか定常走行時にEGRを掛けることで、燃焼温度を落としNoxを押さえるものだが、ガソリンではぜんぜん意味が異なる。ガソリンの場合も、軽負荷もしくは定常走行でEGRを掛けるタイミングとしては類似だろうが、これは燃焼温度を落とすことではなく、吸気管に不燃ガス(主にCO2)を入れることで吸気管負圧を上げて吸気抵抗(ポンピングロス)を抑えることを主要素としている。結果として、吸気に燃えないCO2が入ることで、燃焼温度が低下してNox減少効果も生じるだろうが、これは高圧縮化と相まってプレイグニッションを防ぐ効果を持ち、その分点火を進角を促進し燃費向上効果を狙っているとも想像されるが、主要求はポンピングロスの低下なのだ。

 マイブログの他でも記しているが、吸気管負圧を下がらない様にしてポンピングロスを抑えるエンジンとして、多額のコストを投入しBMWが採用し続けているバルブトロニックエンジンがある。そして、これはトヨタや日産が慌てて新型エンジンをBMWパテントに触れないように工夫を凝らした吸気弁開度による吸入空気の制御エンジンを開発したが、たった1世代だけで止めた理由が判るだろう。つまり、その吸気管圧を下げたくないなら、EGRで等価効果が得られることに気づいたのだろう。しかし、BMWはコストを掛け最新型エンジンでも作り続けているという、およそ考えられないことを行っている姿をどう考えたら良いのだろうか。

 なお、クールドEGRは当初は、金属キャニスターを空冷だけで冷やしていたが、設置場所にもよるのだろうが、冷却水通路を設けて水冷化している場合もある。



#EGR #ディーゼルとガソリンでは役目が異なる


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