私の思いと技術的覚え書き

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ホンダで知る空水冷論(再掲)

2021-04-10 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 近年のホンダはニッサンと同様に苦戦している様に感じるが、2年ほど以前に「ホンダで知る空水冷論の話」の表題で記した話題を再掲する。

 ここで私が云いたかったのは、もちろんのこと「本田宗一郎」氏の経営者に資質をいささかも否定するつもりはない。ただし、それだけがホンダを発展させたのではなく、そこにはあまり聞かれることは少ないが名参謀たる「藤沢武雄」氏という存在があったことを忘れる訳にはゆかないということだ。

 このことは、特に物作りで生きる企業だとか、物が主体で事業を行う企業にとっては、トップ経営者には、政治力というか人心掌握、リーダーシップなど、企業全般をオペレーションする能力が求められるが、それと共に技術者賭しての能力は欠かせない。この2つの能力を1人で保持することは、比較的小規模な組織体であれば可能だろうが、相当程度の業容を越える組織体ではなかなか難しい問題を生じて来るのだろう。

 そこで、ホンダやソニーもそうだが、社長は技術主体(いわゆるスペシャリスト)の人物だが、そこには参謀たるというか実質多くの企業でそうならざるを得ないのだが、組織全般をオペレーション出来る、いわゆるゼネラリストたる者の存在が欠かせない。なお、これは逆もありで社長がゼネラリスト主体であれば、その補佐役として、スペシャリストとしての強い権限と実行力を持った補佐役が必用だと云うことだろう。

 ホンダ、ソニー以外の企業として、国鉄時代のS39年(1964年)に東海道新幹線を開業し、今やJR東海の8割の利益を生み出すまでの大成功を導いた新幹線計画の決定と大方の工事進行までをになった時の国鉄総裁は十河信二(とがわしんじ)氏と技師長の島秀雄氏のゼネラリストとスペシャリストのコンビだった。新幹線開業の約1年前、十河氏は赤字の責任を取り辞任せざるを得なくなり、長年十河に連なっていた島も辞意を決めてしまっており、どんなになだめてもその決断は揺るがなかったという。

【再掲本文】 
ホンダで知る空水冷論の話
2018-07-09 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 かつてHONDAというメーカーに非常に魅力を感じていた。業種は異なるがSONYというメーカーにも同様の魅力を感じて来た。この両メーカー、業種は異なるが非常に類似したものを持っていたのだが、その話は別の機会に記すとして、今回はホンダでかつて行われたという空水冷を巡る論議というか、当時の技術リーダー達と社長の宗一郎氏の戦いのエピソードを記してみたい。

 オートバイメーカーから出発したホンダだが、本田宗一郎氏の持論は、「水冷だって熱交換器(ラジエータ)を介して空冷している訳であって、空冷が理に適っているんだ!」が持論であって、第1期のホンダF1活動においても、1.5Lから3Lへのレギュレーション変更に伴い、とりあえず水冷V12エンジンを出したが、その後空冷V8を強く推進する宗一郎社長の方針に、忸怩たる思いを語る下りが、当時F1総監督だった中村良夫氏の記述の各所に見られる。そして、米マスキー法を睨んでの低公害エンジンの開発へと進む中、当時の技術陣リーダーたる久米是志氏だとか川本信彦氏(何れも後年社長に就任)は、オヤジたる宗一郎氏に何度も談判するがラチ開かず、とうとう副社長たる藤沢武夫氏に談判した。そこでのやりとりの明細は知るとこではないが、技術者としてコンコンとエンジンの恒温化が熱効率のためにも排ガス低減のためにも必要なんだと説いたのだろうと想像する。これを受けた技術屋でない藤沢氏だが、これは現状方針は尋常ならざるものと悟ったのだろう、宗一郎氏に次の様な発言を行ったという。「あなたホンダの社長ですか?、それとも技術者ですか?」といったものだったらしい。この言葉を聞いた瞬間、宗一郎氏は直ちに過ちを気づき、現場技術者の方針に従うこととなったのだという。

 こういう指導者としての間違いがあっても、それを知ると直ちに指摘した僚友参謀たる藤沢氏、そして素直に認める将たる宗一郎氏、どちらも偉い方々だというのが私の思いだ。

 このホンダの大方針変更から、20年程の後、クルマ用として最後まで空冷エンジンの孤高を保ったポルシェも993型を最後に996型以降は水冷化された。
 
 次月8月5日は没後27年となる本田宗一郎氏の命日となる。しばらくぶりに墓参りに訪れたいと思い始めている。なお、宗一郎氏の墓所は、富士スピードウェイ近くにある富士霊園の一角に存する。

※写真の説明
①4輪用最後の空冷ホンダエンジン1300クーペ99のもの。
②宗一郎氏墓所(富士霊園内)



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