ゴルフGTIやBMW328i等々、国産車でも××iというグレード名は今でもある訳だが、ご存じの通りiは、インジェクション=燃料噴射のことを意味していた。しかし、今やアナログ車以外は絶滅したキャブレター全盛時代におけるiは、キャブより格上のメカとして認知されたが、現在では50ccスーパーカブでさえiが装着される時代になってしまい、iが装備されるのは当たり前のことであり意味はないネーミングとなったが、何故かネーミングとして踏襲され続けている。
ここで紹介のW113(230SL)は、メカニカルポンプ式燃料噴射ポンプの初期のころのクルマで、ポンプ外観はディーゼルエンジンの列型ポンプと酷似している。ただし、ディーゼルが余燃焼室式でも10kPa程度あるのに対し、ポート噴射のこれは200Pa程度ではないだろうか。
クルマの方は、例のルーフがゆったりと中央部に窪んだ「パゴダルーフ」付きのデタッシャブルハードトップモデルだが、独特の味わいを感じる。
余録:燃料噴射のこと
クルマ用インジョクションだが、元々はレーシングカー用としてのものだった。それは、元来燃料噴射が大前提となるディーゼルエンジン用の噴射ポンプと類似したメカニカルポンプだった。これは、エンジン回転とアクセル開度だけに、同期するという極めて荒い空燃比制御だった。圧縮着火のディーゼルでは、例えどんなに希薄な空燃比でも運転できるから問題はないが、ほぼ全負荷オンリーに運用されるレースカーと異なり、市販車ガソリンエンジン用としては、パーシャルスロットルなど、負荷は絶えず変化しつつ、火花点火できる空燃比の運転範囲は狭く、ドライバビリティの悪化など必ずしも優れたものではなかった。
しかし、ボッシュはKジェトロニックという形で、機械式噴射ポンプの制御に吸入空気量の計測と制御を加えることにより、良好なドライバビリティを実現した。なお、日本の旧車では、Kジェトロとほぼ同時期にボッシュ社で開発された、DジェトロおよびLジェトロのパテントを買い、高グレード各車に搭載した。Kジェトロとの大きな違いは、一応の電子制御で、フェーエルデリバリパイプ(今でいうコモンレールだが圧力は2桁は低い)の加圧燃料を電磁インジェクターで吸気管に噴射させるものだった。
ここで、一応の電子制御と記したのは、未だマイコン以前のアナログ回路を前提として、種々のパラメーターに基づき、主にコンデンサーの充放電時間を基準に噴射時間を制御するというもので、特にDジェトロ(スピードデェンシティ方式)は吸気管負圧、エンジン回転数、アクセル開度から得られる単純な二次曲線的な噴射特性からは、現在のECU制御で持つ予め記録したマッピング値を持って適切な噴射量を得ることは不可能で、やや過濃側に振ったセッティングからは、加速時黒煙を出すなんてことは当たり前だった。なお、Lジェトロ(マスフロー方式とも呼ぶ)の方は、良好なドライバビリティを持ち、程なくO2センサーと三元触媒を備えフィードバック制御を付加することで、53年度排出ガス規制を乗り越えた。現在でも、加給エンジンには、エアフローセンサーを備えた、マスフロー方式が使用されている。それ以外のNAエンジンでは、吸気管負圧とエンジン回転をメインとし、ECU内の3次元マップ処理によるスピードデェンシティ方式として、コスト低減を狙っている。
ここで紹介のW113(230SL)は、メカニカルポンプ式燃料噴射ポンプの初期のころのクルマで、ポンプ外観はディーゼルエンジンの列型ポンプと酷似している。ただし、ディーゼルが余燃焼室式でも10kPa程度あるのに対し、ポート噴射のこれは200Pa程度ではないだろうか。
クルマの方は、例のルーフがゆったりと中央部に窪んだ「パゴダルーフ」付きのデタッシャブルハードトップモデルだが、独特の味わいを感じる。
余録:燃料噴射のこと
クルマ用インジョクションだが、元々はレーシングカー用としてのものだった。それは、元来燃料噴射が大前提となるディーゼルエンジン用の噴射ポンプと類似したメカニカルポンプだった。これは、エンジン回転とアクセル開度だけに、同期するという極めて荒い空燃比制御だった。圧縮着火のディーゼルでは、例えどんなに希薄な空燃比でも運転できるから問題はないが、ほぼ全負荷オンリーに運用されるレースカーと異なり、市販車ガソリンエンジン用としては、パーシャルスロットルなど、負荷は絶えず変化しつつ、火花点火できる空燃比の運転範囲は狭く、ドライバビリティの悪化など必ずしも優れたものではなかった。
しかし、ボッシュはKジェトロニックという形で、機械式噴射ポンプの制御に吸入空気量の計測と制御を加えることにより、良好なドライバビリティを実現した。なお、日本の旧車では、Kジェトロとほぼ同時期にボッシュ社で開発された、DジェトロおよびLジェトロのパテントを買い、高グレード各車に搭載した。Kジェトロとの大きな違いは、一応の電子制御で、フェーエルデリバリパイプ(今でいうコモンレールだが圧力は2桁は低い)の加圧燃料を電磁インジェクターで吸気管に噴射させるものだった。
ここで、一応の電子制御と記したのは、未だマイコン以前のアナログ回路を前提として、種々のパラメーターに基づき、主にコンデンサーの充放電時間を基準に噴射時間を制御するというもので、特にDジェトロ(スピードデェンシティ方式)は吸気管負圧、エンジン回転数、アクセル開度から得られる単純な二次曲線的な噴射特性からは、現在のECU制御で持つ予め記録したマッピング値を持って適切な噴射量を得ることは不可能で、やや過濃側に振ったセッティングからは、加速時黒煙を出すなんてことは当たり前だった。なお、Lジェトロ(マスフロー方式とも呼ぶ)の方は、良好なドライバビリティを持ち、程なくO2センサーと三元触媒を備えフィードバック制御を付加することで、53年度排出ガス規制を乗り越えた。現在でも、加給エンジンには、エアフローセンサーを備えた、マスフロー方式が使用されている。それ以外のNAエンジンでは、吸気管負圧とエンジン回転をメインとし、ECU内の3次元マップ処理によるスピードデェンシティ方式として、コスト低減を狙っている。