ルポルタージュ・損害調査員 その9【見積屋の御用聞き調査員を嗤う】
第9回目のルポルタージュとして記したが、もしやしてこういうことがあっちゃイカンという警告を込めた意見として記したい。
そもそも、現在でも昔を懐かしみつつ、現状を眺めるについて、こんな体たらくでいいのかという意見は、私より余ほどの大先輩とも話すのは常なのだが・・・。
その3でも触れたことだが、損保調査員(技術アジャスター)とは断じて見積屋であってはならず、修理工場とか車両所有者の思いを聞き、それに沿う御用聞きであっては意味がないと思っている。
そこで、アジャスター規則に記されているアジャスターの業務を下記に示すが、正直この文言は曖昧で判り難く、会社によっては事故受付との整合性とか勝手に解釈して後輩を指導しているのだから、まあ保険金を詐取しようとする悪者にとっては誠にありがたいだろうが、私に云わせりゃ愚の骨頂という調査員教育の資格のない者共だ。
【アジャスター規則・業務】
技術アジャスターの業務は、アジャスター規則というもので一応規定されているのだが、別添資料のごとく「アジャスター規則」というのが日本損害保険協会で作成されている。その第3条に以下の記述がなされている。
第3条(アジャスターの業務)
アジャスターは技術アジャスターおよび特殊車アジャスターの2種類とし、それぞれつぎの業務を行う。
(1)技術アジャスターは保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認ならびにそれらに付随する業務を行う。
この判り難い「事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認ならびにそれらに付随する業務」ということだが、ここでは長ったらしく判り難いので「整合性」という言葉に置き換えて説明したい。
この整合性を思考するについては、事故損傷車を観察して、どのような形で事故は起こったのかという、交通事故鑑定の大家たる「江守一郎」(故人)は、事故の再現という言葉を使っている。つまり、車両の変形だとか傷、付着物、入力方向などから、自動車工学(科学、工学、客観、論理的)な現象を基本として、どういう事故だったかを再現してみせ、証明することが肝要だと云っているのだ。
ここでは、実例として損傷写真1(Fig.1)を示す。この損傷車は車両保険が付保されてるものとし、その事故受付状況図は別添資料その3・左側(Fig.3)の様なものであった。この車両を今、これを見ているあなたが調査員として車両を立会したとする。
どう思うだろうか。一見して損傷状態を見るに、どうも事故受付表とまあまあ合った損傷で整合性は問題なしと判断できるかどうかと云うことだ。
おそらく、あなたが損保調査員で数年過ごしているのなら、見積する場合でも、整合性を検討する場合でも、観察手法として、マクロ的もしくはミクロ的という2つがあることを聞いた覚えがあるだろう。もし、そんなことは聞いたことがないという方は、損保調査員でなく見積選任の工場フロントも満足に務まるものではないだろう。
ここでのマクロ的とは、直接的な意味は巨視的という意味となるが、大局的、全体的にどうかというものの見方だ。見積論をここで述べる余裕はないが、フレーム構造を持ったトラックなどを見積場合、このマクロ的な観察として、ある程度現車から離れて、前後面視でキャブと鳥居アングルの平行度などや、側面視において、前方への傾斜とか、後方への傾斜状態からフレームの上下曲がりや捻れというものを判断するのであって、幾ら目を皿の様になめ回すミクロ的(微視的)観察をしても、見極めることはできない。
話しを戻すが、損傷写真1(Fig.1)のマクロ的な観察では、さほど不自然とは感じられないことが判った。この後、ミクロ的観察として、各部を見ていくのだが、今回の観察では損傷写真その2(Fig.2)の右フロントサイドフレーム先端のリインホースメントとの接合部のフランジの変型の方向および固定ボルトのせん断を見れば、明らかに入力方向は前から出なく後ろからと判る物証となることが読み取れるだろう。前から入力でもフランジは曲がる事例はあるが、曲がる方向が逆だ。ましてや、固定ボルトのせん断は生じない。よって、事故状況の再現としては別添資料その3・右側(Fig.3)の状態であることが確かな論拠と共に推察できるし、場合によっては正式文書として意見書として公の場で示すこともできるだろう。
ついでに補足しておくと、この車両、前置き配置のステアリングラックギヤだが、その右側タイロッドが折損しており、工場で移動しやすくするために仮溶接してある。これも、前方入力で余ほど前輪が後退していれば別だが、後方入力でタイロッドに対し斜め圧縮応力が働いたっからこそ圧縮せん断したと見るべきだろう。前方入力で引っ張り過重でも極端な場合は切断もあり得るが、この程度の大して大きな入力でもないのに切断するのは、後方入力と云うことと、タイロッドエンドとラックエンドは高さおよび前後位相差があり、圧縮応力が曲げ方向に変位した故の切断と云えるだろう。
修理工場の見積担当者は、ここまでの事故再現的思考は求められないが、好くなとも損保調査担当者は見積屋じゃないんだから、この程度の思考を持たないのなら、およそ存在価値はないだろう。
#損害調査員ルポルタージュ #出入り禁止クレーム #内在する問題
第9回目のルポルタージュとして記したが、もしやしてこういうことがあっちゃイカンという警告を込めた意見として記したい。
そもそも、現在でも昔を懐かしみつつ、現状を眺めるについて、こんな体たらくでいいのかという意見は、私より余ほどの大先輩とも話すのは常なのだが・・・。
その3でも触れたことだが、損保調査員(技術アジャスター)とは断じて見積屋であってはならず、修理工場とか車両所有者の思いを聞き、それに沿う御用聞きであっては意味がないと思っている。
そこで、アジャスター規則に記されているアジャスターの業務を下記に示すが、正直この文言は曖昧で判り難く、会社によっては事故受付との整合性とか勝手に解釈して後輩を指導しているのだから、まあ保険金を詐取しようとする悪者にとっては誠にありがたいだろうが、私に云わせりゃ愚の骨頂という調査員教育の資格のない者共だ。
【アジャスター規則・業務】
技術アジャスターの業務は、アジャスター規則というもので一応規定されているのだが、別添資料のごとく「アジャスター規則」というのが日本損害保険協会で作成されている。その第3条に以下の記述がなされている。
第3条(アジャスターの業務)
アジャスターは技術アジャスターおよび特殊車アジャスターの2種類とし、それぞれつぎの業務を行う。
(1)技術アジャスターは保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認ならびにそれらに付随する業務を行う。
この判り難い「事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認ならびにそれらに付随する業務」ということだが、ここでは長ったらしく判り難いので「整合性」という言葉に置き換えて説明したい。
この整合性を思考するについては、事故損傷車を観察して、どのような形で事故は起こったのかという、交通事故鑑定の大家たる「江守一郎」(故人)は、事故の再現という言葉を使っている。つまり、車両の変形だとか傷、付着物、入力方向などから、自動車工学(科学、工学、客観、論理的)な現象を基本として、どういう事故だったかを再現してみせ、証明することが肝要だと云っているのだ。
ここでは、実例として損傷写真1(Fig.1)を示す。この損傷車は車両保険が付保されてるものとし、その事故受付状況図は別添資料その3・左側(Fig.3)の様なものであった。この車両を今、これを見ているあなたが調査員として車両を立会したとする。
どう思うだろうか。一見して損傷状態を見るに、どうも事故受付表とまあまあ合った損傷で整合性は問題なしと判断できるかどうかと云うことだ。
おそらく、あなたが損保調査員で数年過ごしているのなら、見積する場合でも、整合性を検討する場合でも、観察手法として、マクロ的もしくはミクロ的という2つがあることを聞いた覚えがあるだろう。もし、そんなことは聞いたことがないという方は、損保調査員でなく見積選任の工場フロントも満足に務まるものではないだろう。
ここでのマクロ的とは、直接的な意味は巨視的という意味となるが、大局的、全体的にどうかというものの見方だ。見積論をここで述べる余裕はないが、フレーム構造を持ったトラックなどを見積場合、このマクロ的な観察として、ある程度現車から離れて、前後面視でキャブと鳥居アングルの平行度などや、側面視において、前方への傾斜とか、後方への傾斜状態からフレームの上下曲がりや捻れというものを判断するのであって、幾ら目を皿の様になめ回すミクロ的(微視的)観察をしても、見極めることはできない。
話しを戻すが、損傷写真1(Fig.1)のマクロ的な観察では、さほど不自然とは感じられないことが判った。この後、ミクロ的観察として、各部を見ていくのだが、今回の観察では損傷写真その2(Fig.2)の右フロントサイドフレーム先端のリインホースメントとの接合部のフランジの変型の方向および固定ボルトのせん断を見れば、明らかに入力方向は前から出なく後ろからと判る物証となることが読み取れるだろう。前から入力でもフランジは曲がる事例はあるが、曲がる方向が逆だ。ましてや、固定ボルトのせん断は生じない。よって、事故状況の再現としては別添資料その3・右側(Fig.3)の状態であることが確かな論拠と共に推察できるし、場合によっては正式文書として意見書として公の場で示すこともできるだろう。
ついでに補足しておくと、この車両、前置き配置のステアリングラックギヤだが、その右側タイロッドが折損しており、工場で移動しやすくするために仮溶接してある。これも、前方入力で余ほど前輪が後退していれば別だが、後方入力でタイロッドに対し斜め圧縮応力が働いたっからこそ圧縮せん断したと見るべきだろう。前方入力で引っ張り過重でも極端な場合は切断もあり得るが、この程度の大して大きな入力でもないのに切断するのは、後方入力と云うことと、タイロッドエンドとラックエンドは高さおよび前後位相差があり、圧縮応力が曲げ方向に変位した故の切断と云えるだろう。
修理工場の見積担当者は、ここまでの事故再現的思考は求められないが、好くなとも損保調査担当者は見積屋じゃないんだから、この程度の思考を持たないのなら、およそ存在価値はないだろう。
#損害調査員ルポルタージュ #出入り禁止クレーム #内在する問題