昨年の記事だが、面白い事例なので、覚え書きとして記しておきたい。
クルマでなくても物体に塗装施工された場合で、経年によりハガレが生じるという現象は種々の場面で経験するところだ。
今回のトヨタで多発させたと云うトラブルは、下塗りもしくは中塗りと上塗りの間での、いわゆる層間密着の不良という現象なのだろう。この原因としては、比較的小面積であれば、その部位に油分の付着だとか密着を妨げる原因があったなどが想定される。しかし、今回生じた写真様に広範囲にはがれるというものでは、いわゆるセッティングタイム(層間で間に設定する時間)の取り過ぎなどが想定できる。これは塗装に関わらず、コンクリート施工におけるコールドジョイントという現象とも共通するものだ。つまり、コンクリート施工物などで、第一段階のコンクリート打設で完全硬化させ、そのまま打設コンクリート面を何ら養生することなく、第二段階のコンクリート打設を行うと、日時経過だとか大応力を受けた際に、打設間のコンクリート接続面がはがれ、本来の強度が保てないという、大きな構造物では大変危険となる現象なのだ。
また、下塗り塗装では、素材面に直接塗料を乗せる訳だが、例えば自動車用冷延鋼板は非常に表面が平滑でつるつるしているので、幾ら脱脂処理をしただけでは、どうしても密着力は不足している。そのため、板金工場などでは、ある程度の適する番手のサンドペーパーで表面を荒らすことで、塗料の食い付きを良くすることが行われる。一方新車プラントでは、ボデー全体をサンディングすることは極めて工数増大となるので、リン酸亜鉛溶液中に一定時間浸漬することで、表面を適度に荒らすと共に、リン酸亜鉛被膜を形成する、一般に化成皮膜処理という工程を行っている。ちなみに、この処理を行った鋼板は、ホームセンターや鋼材屋で取り扱っているが通称「ボンデ鋼板」と呼ばれる。
なお、補足すると、素材により濡れ性の良し悪しという問題がある。この濡れ性の悪い素材の代表格樹脂がPP系樹脂となる。この様な素材に問題を生じない密着性を確保するには、適したプライマーを間に入れて密着性を確保する。
また、クルマの塗装はがれで拙人が過去に一番多く見て来たものは、クリアー禿げという現象だろう。これは、一般にトップコートクリアーと呼ばれる様に、各塗膜層の最外面に接するクリアーとなるのだが、通常ウェットオンウェット(ベースが乾かない中で上に塗り込む)で塗り込むのが基本だが、ドライオンウェットとなる場合は、適度にサンディングするなど、それなりの処理が必用になるだろう。
さらに、経年で水平面だけがクリアー層がボロボロに破壊されたり、ヘッドライトの透明レンズ部の表面が曇ってきたり黄変して来るのも、クリアー塗料の劣化によるが、これは密着不良という問題ではない。塗料メーカーで、それなりの高耐候性塗料の開発に励んでもらうしかないが、経験上、新車メーカーで利用している熱硬化型より、補修用塗料として利用されている2液重合型(その中でも硬化剤比率2:1タイプ)の方が、耐候性は上の様に感じるのは私見だ。
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トヨタ、「塗装剥がれ」で修理期間延長 SNS拡散で注目集める
2019/4/11(木) 13:31配信J-CASTニュース
トヨタ自動車は2019年4月3日、一部車両の塗装に製造上の不具合があったとして、無料の修理期間を延長したと発表した。
【画像】塗装が剥がれ落ちた車体
この問題をめぐっては、複数の購入者がSNSで不満を漏らし、注目を集めていた。
■「情報提供」きっかけにトヨタ把握
対象は、ホワイトパール色のアルファードやハイエース、カローラルミオンなど8車種の中で、08年~15年ごろに製作された車体。車体に使った塗料の濃度が低く、塗装が剥がれる場合があるとし、無料での修理期間を購入後3年から10年に伸ばした。
トヨタの渉外広報部によれば、対象台数は40万台。リコール扱いではないため、国土交通省へは届け出ていないという。購入者へ個別に連絡はしておらず、公式サイトで呼びかけている。
塗装のトラブルをめぐっては、対象とみられる複数の購入者が交流サイトで報告していた。中でも19年1月にツイッターに寄せられた投稿は広く拡散され、一般層からも注目を集めるきっかけとなった。
対象となるカローラルミオンを所有し、販売店に修理を依頼する予定だという男性はJ-CASTニュースの取材に「最初は一部がポロポロと剥がれていき、少しずつ塗装剥がれが拡大して行きました。その後、広い面積がシートを剥がすようにめくれ始めました」と被害を明かす。「走行中に白い大きなポスターのような物が飛んでいくのがバックミラーに写り、もしやと思って戻って確認したら自分の車から剥がれ落ちた塗装だったという事もあります」
トヨタの渉外広報部は、把握のきっかけは購入者からの情報提供だったという。その後、調査を進めたところ製造上の不具合が見つかった。
有償で再塗装した購入者には、証明できる書類があれば返金する。対象車種はトヨタの公式サイトに掲載している。
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クルマでなくても物体に塗装施工された場合で、経年によりハガレが生じるという現象は種々の場面で経験するところだ。
今回のトヨタで多発させたと云うトラブルは、下塗りもしくは中塗りと上塗りの間での、いわゆる層間密着の不良という現象なのだろう。この原因としては、比較的小面積であれば、その部位に油分の付着だとか密着を妨げる原因があったなどが想定される。しかし、今回生じた写真様に広範囲にはがれるというものでは、いわゆるセッティングタイム(層間で間に設定する時間)の取り過ぎなどが想定できる。これは塗装に関わらず、コンクリート施工におけるコールドジョイントという現象とも共通するものだ。つまり、コンクリート施工物などで、第一段階のコンクリート打設で完全硬化させ、そのまま打設コンクリート面を何ら養生することなく、第二段階のコンクリート打設を行うと、日時経過だとか大応力を受けた際に、打設間のコンクリート接続面がはがれ、本来の強度が保てないという、大きな構造物では大変危険となる現象なのだ。
また、下塗り塗装では、素材面に直接塗料を乗せる訳だが、例えば自動車用冷延鋼板は非常に表面が平滑でつるつるしているので、幾ら脱脂処理をしただけでは、どうしても密着力は不足している。そのため、板金工場などでは、ある程度の適する番手のサンドペーパーで表面を荒らすことで、塗料の食い付きを良くすることが行われる。一方新車プラントでは、ボデー全体をサンディングすることは極めて工数増大となるので、リン酸亜鉛溶液中に一定時間浸漬することで、表面を適度に荒らすと共に、リン酸亜鉛被膜を形成する、一般に化成皮膜処理という工程を行っている。ちなみに、この処理を行った鋼板は、ホームセンターや鋼材屋で取り扱っているが通称「ボンデ鋼板」と呼ばれる。
なお、補足すると、素材により濡れ性の良し悪しという問題がある。この濡れ性の悪い素材の代表格樹脂がPP系樹脂となる。この様な素材に問題を生じない密着性を確保するには、適したプライマーを間に入れて密着性を確保する。
また、クルマの塗装はがれで拙人が過去に一番多く見て来たものは、クリアー禿げという現象だろう。これは、一般にトップコートクリアーと呼ばれる様に、各塗膜層の最外面に接するクリアーとなるのだが、通常ウェットオンウェット(ベースが乾かない中で上に塗り込む)で塗り込むのが基本だが、ドライオンウェットとなる場合は、適度にサンディングするなど、それなりの処理が必用になるだろう。
さらに、経年で水平面だけがクリアー層がボロボロに破壊されたり、ヘッドライトの透明レンズ部の表面が曇ってきたり黄変して来るのも、クリアー塗料の劣化によるが、これは密着不良という問題ではない。塗料メーカーで、それなりの高耐候性塗料の開発に励んでもらうしかないが、経験上、新車メーカーで利用している熱硬化型より、補修用塗料として利用されている2液重合型(その中でも硬化剤比率2:1タイプ)の方が、耐候性は上の様に感じるのは私見だ。
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トヨタ、「塗装剥がれ」で修理期間延長 SNS拡散で注目集める
2019/4/11(木) 13:31配信J-CASTニュース
トヨタ自動車は2019年4月3日、一部車両の塗装に製造上の不具合があったとして、無料の修理期間を延長したと発表した。
【画像】塗装が剥がれ落ちた車体
この問題をめぐっては、複数の購入者がSNSで不満を漏らし、注目を集めていた。
■「情報提供」きっかけにトヨタ把握
対象は、ホワイトパール色のアルファードやハイエース、カローラルミオンなど8車種の中で、08年~15年ごろに製作された車体。車体に使った塗料の濃度が低く、塗装が剥がれる場合があるとし、無料での修理期間を購入後3年から10年に伸ばした。
トヨタの渉外広報部によれば、対象台数は40万台。リコール扱いではないため、国土交通省へは届け出ていないという。購入者へ個別に連絡はしておらず、公式サイトで呼びかけている。
塗装のトラブルをめぐっては、対象とみられる複数の購入者が交流サイトで報告していた。中でも19年1月にツイッターに寄せられた投稿は広く拡散され、一般層からも注目を集めるきっかけとなった。
対象となるカローラルミオンを所有し、販売店に修理を依頼する予定だという男性はJ-CASTニュースの取材に「最初は一部がポロポロと剥がれていき、少しずつ塗装剥がれが拡大して行きました。その後、広い面積がシートを剥がすようにめくれ始めました」と被害を明かす。「走行中に白い大きなポスターのような物が飛んでいくのがバックミラーに写り、もしやと思って戻って確認したら自分の車から剥がれ落ちた塗装だったという事もあります」
トヨタの渉外広報部は、把握のきっかけは購入者からの情報提供だったという。その後、調査を進めたところ製造上の不具合が見つかった。
有償で再塗装した購入者には、証明できる書類があれば返金する。対象車種はトヨタの公式サイトに掲載している。
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