私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

自殺に見る中国病理に思う

2020-07-18 | 事故と事件
 中国で復讐自殺を遂行するバス運転手が増えているという記事(下記)を見て感じることを書き留めたい。

 日本でも十数年続いた年間自殺者3万人という高止まりは近年2万人に低下したが、今次病変で今年の自殺者は最高記録を更新するんじゃないかと個人的は思っている。そんな中、近年中国でも自殺者は増えつつある様だが、記事に「復習自殺」とある様に、企業経営者とか社会に対する鬱憤晴らしに他人を巻き込んでの自殺が増えていると記事を見ると国民性の違いを感じる。

 そもそも、バスの運転手とは、プロドライバーだが、そのプロが自らの職種を毀損する様に、わざわざ乗客が乗っている状態で自殺を遂行するとは、日本人のバス運転手にしてもプロドライバーなら考えもしないだろう。もし、業務上のバスを使用して川に飛び込むとしても、乗客のいない時を見計らって結構するのではないか。

 ただし、テロリスト的思考を持つ者なら、不特定多数の人を巻き添えにということは日本人でもあるだろうが、自らの職種において、いくら会社に不満があるとしても、職種を汚す行為は思い留まる様に思えてならない。それがプロってものと思う次第だ。
-----------------------------------------------

中国で“復讐自殺”が異常に頻発? 「バス乗客を巻き添え」にする犯人たち
7/18(土) 19:00配信 クーリエ・ジャポン
 いま、中国では「報復社会(バオフウショァフイ、社会に復讐してやる)」タイプの自殺が頻発している──。

 7月7日、自殺願望のあるバス運転手が、故意に湖へバスを転落させ、乗客21人を道連れにする悲惨な事件が発生した。社会に絶望した犯人が、その腹いせに引き起こした犯行だった。コロナ禍で経済の先行きが不透明な中、中国では今後もこうした事件が続出することが懸念されている。

大学入試の当日、未来ある受験生も犠牲に
 中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」によると、7月7日12時30分ごろ、南部・貴州省安順市の市街地にある貯水池・虹山湖に、市営路線バス2号線の2019年製電動車輛が転落し、中国人民武装警察部隊(武警)、民兵、潜水夫、消防、公安など1100人以上が救出活動に当たったものの、乗員乗客37人のうち21人が死亡、15人が重軽傷を負う痛ましい事故となった。

 この日は、毎夏2日間にわたって実施される全国統一大学入試「普通高等学校招生全国統一考試(高考)」の初日で、乗客のうち受験生5人が犠牲になり7人が重軽傷を負った。

 奇妙だったのはバスの転落だ。目撃者や生存した乗客の話、監視カメラの映像などによると、バスは湖の土手沿いの幹線道路・虹山湖路を、低速の乗用車に続いてゆっくり運行していたが、突然、車線変更し、湖の方向へ90度大きく左折したあと、猛スピードで湖面に突っ込んだのだ。
救出された男性客が総合ニュースメディアの「澎湃新聞(ザ・ペーパー)」に語ったところよると、バス内は満席で、運転手の言動に特段の異常は見られなかったという。だがバスは大きく左折したあと、歩道のガードレールに激突し、その衝撃で窓ガラスに鋼鉄製の柵が何本か突き刺さった。湖水に転落後、破損した窓ガラスから水が流れ込み、車内はパニックに陥る。男性客は腕に怪我を負ったものの比較的冷静で「みんな!窓ガラスを割れ!」と叫んで何人かと窓を突き割り車外へ泳ぎ出たという。
当該バスの運転手・張包鋼(ヂャン・バオガン、52)は、大型客車(A1)免許を保持するベテラン。1997年から23年間、一貫して2号線の運転を担当していた。バスは単なる転落ではなく突然加速して意図的に湖へ突っ込んだ状況から、当初は「張包鋼の娘が高考に失敗し、娘の先行きを悲観した父親が娘と心中した」という噂がまことしやかに流れた。

 安順市公安局は7月12日、事故原因の調査結果を発表した。結論は「死亡した運転手・張包鋼が日ごろ抱いていた鬱屈を晴らすため、乗客を巻き添えにした自殺」だった。
張包鋼は2016年に離婚し、別れた妻子とは交流も途絶えがちで寂しい日々を送っていた。彼はかつて国営ディーゼルエンジン工場に勤務していたとき工場から分配された従業員宿舎の部屋(床面積40平方メートル)を唯一の財産として所有しているが、再開発計画の煽りで宿舎は取り壊されることになり、今年6月に立ち退き承諾書にサインさせられた。事故当日の7月7日朝、張は、宿舎の解体工事が始められようとしていることを知り、激昂。管轄部門のホットラインへ電話し、保証金や代替住居も受け取っていないのに取り壊しを始めるのはあんまりだと不満をぶちまけた。

 張はほどなく勤務先のバス会社へ電話し、当日の勤務開始時間(正午)を午前11時に早めるよう依頼。帰途、近所の雑貨店で白酒(バイジウ。穀物由来で、アルコール度数の高い中国伝統の蒸留酒)を購入。自宅で、中身の酒をペットボトルに詰め替え、その酒入りペットボトルを持参し、「安順東バスターミナル」で11時発車の当該バスの運転を開始した。11時39分には、スマートフォンのチャットアプリで、交際相手の女性に自殺をほのめかすメッセージを送る。12時9分、運転中に白酒を一気飲みし景気づけした張はその3分後、アクセル全開で乗客もろとも虹山湖に突っ込んだ。

バスを舞台にした相次ぐ「報復社会」自殺
 2005年8月8日、「福州路線バス爆破事件」の現場Photo: China Photos / Getty Images

 犯人が厭世観や社会への憎悪を抱いて、自殺を試みる際に無差別殺人を起こし復讐・抗議する事例は、世界中でみられる。中国では21世紀に入り、バスの乗客を道連れにした無差別殺人事件が相次いでいる。

 2005年8月8日、福建省福州市で発生した「福州路線バス爆破事件」(2人死亡、30人重軽症)は、末期がんを患い、息子のトラブル賠償金支払いに苦しんでいた農民・黄茂銀が1カ月前から試作を重ねた爆弾を爆発させた。

 2009年6月5日、四川省成都市で「成都路線バス放火事件」(28人死亡、74人が重軽傷)が発生。江蘇州蘇州市出身の62歲犯人・張雲良がガソリンを車内に持ち込んで自殺を図った。四川省に来て以来定職を得られず、売春と賭博に身を持ち崩し、家族に愛想をつかされ将来を悲観しての自殺だった。

 2013年6月7日には、福建省廈門(アモイ)市で「アモイBRT(バス・ラピッド・トランジット)放火事件」(47人死亡、34人重軽傷)が発生。犯人陳水聡は人生を悲嘆し遺書を用意してバスにガソリンを撒いた。この日は、今回の貴州省安順市の事件と同じ全国統一大学入試(高考)の当日で、受験生8人が犠牲となり6人が重軽傷を負った。
2014年5月12日、四川省宜賓市で「宜賓路線バス放火事件」(1人死亡、77人重軽症)は、高校教師の余躍海が爆発物の入ったバッグを持ち込み、乗車直後に点火、バスは凄まじい爆風と爆音に包まれた。妻子持ちの一見幸福そうな余の動機は諸説あり現在も不明。

 2014年7月5日、浙江省杭州市で「杭州路線バス放火事件」(32人重軽症)が起き、犯人の包来旭は車内にラッカーシンナーを持ち込み着火した。包は全身の95%にやけどを負い、廃結核治療中だったため命は長くないと思い、死後の臓器提供を表明し謝罪。翌15年4月30日に病死ではなく死刑に処された。

 2014年7月15日には広東省広州市で「広州路線バス放火事件」(2人死亡、32人重軽症)が起きた。犯人の欧長生は農村出身の出稼ぎ人でギャンブルの負債が嵩み生活が困窮している不満を晴らすため犯行に及んだ。事件では運良く救出されたが、2015年12月に広州市中級人民法院(広州高裁)で死刑判決が宣告された。

 2015年5月15日、河北省三河市燕郊鎮で「燕郊長距離バス放火事件」(死傷者無し)は、北京市中心部へ向かっていた814路バスが午前8時半ごろ、51歳の乗客がガソリンを撒き炎上。乗員乗客はドアと窓から脱出し、自殺願望のある容疑者は直後に逮捕された。

 2016年1月5日、寧夏回族自治区銀川市で発生した「銀川公共バス放火事件」(17人死亡、32人重軽傷)の犯人・馬永平は債務トラブルの鬱憤から停車中のバスにガソリンを撒いて放火。自殺を試みたが両脚を焼損した。だが同年12月、最高人民法院(最高裁判所に相当)に死刑判決を下され、同月中に刑が執行された。

 このほか、2010年7月21日、湖南省長沙市の「長沙黄花国際空港リムジンバス放火事件」(2人死亡、3人重軽傷)、2012年7月28日、北京市の「北京路線バス9路線放火事件」(死傷者無し)なども未解決ながら、自殺願望者による大量殺人が疑われている。

 さらに台湾では、2016年7月19日、「台湾桃園国際空港」の近くで、中国湖南省からのツアー客24人を乗せた観光バスがガードレールに衝突し炎上。乗員乗客26人全員が死亡した。

 台湾人運転手・蘇明成の遺体からアルコールが検出され、車内に大量のガソリンが貯蔵されていたことから、自殺と判明。調査によると蘇は中国生まれで、文化大革命(1966~77年)期に父親が台湾人だったことで迫害を受け、結婚後、妻と台湾に移住した。事故当時、家庭内暴力が原因で妻から離婚と中国帰国を要求され、女性バスガイドに対する性的暴行罪で懲役5年の二審判決を受けたことなどが自殺の原因と判断された。蘇は運転中、高濃度の白酒を飲んでいた。

 中国の国家統計局は7月16日、2020年第2四半期(4~6月)の国内総生産(GDP、速報値)の実質成長率が、前年同期比で3.2%だったと発表した。第1四半期(1~3月)は新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大を受けたロックダウン(都市封鎖)で、マイナス6.8%と四半期ベースで過去最大の下落だったが、かろうじてプラスに転じた。

 ただ、依然として拡大する貧富の格差、コロナ禍のあおりで相次ぐ中小企業の経営破綻、雇用情勢の悪化、少数民族や香港への強権的姿勢などが社会不安の火種となっている。社会によって追い込まれたと感じた人民が、その腹いせに、他者を大量に巻き添えにし、合わせて自らの命を絶つ事件は、先行き不透明感が色濃い中国で今後、増加する懸念がある。Jun Tanaka

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。