私の思いと技術的覚え書き

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デイムラーとマフラー焼損のこと

2016-12-29 | 事故と事件
 車両火災というのは、リコール制度としても極めて重大問題として扱われる。プロダクションメーカーにとっても、新車納車後に程なく火災事故が生じ、その原因が放火とか類焼ではなく、クルマ本体に内在している可能性が高いとなると、ディーラーレベルではなくメーカーレベルでの調査が行われる場合を過去に何度か見聞きしてきたものだ。今回紹介するのは、辛うじて火災レベルに至らずが、かなりの発煙も生じたであろうし、今一歩で火災に至っても不思議ではなかった事案である。

 クルマはデイムラー・ダブル6(V12エンジン)で、基本的にはジャガーXJ12とグリルなど細部が違うだけのクルマだ。私見だが、ジャガーというクルマ、その容姿や内外装の雰囲気など、大変好感を持つクルマである。しかし、メカおよび電装系を中心として、故障の多さや信頼性に乏しいとして、事情通の間ではある意味良く知られたクルマでもある。また、V型に限らずだが12気筒というのは、実用車として事実上の最高峰のエンジンとなるが、やはり機構が複雑化するためもあるのであろう、ベンツやBMWでも、L6やV8に比べ故障が多いものだ。このデイムラーV12の排気系だが、最近流行のニセ物ツインマフラーではなく、左右バンクからテールエンドまで完全独立のホンモノディアルエキゾーストである。その、右側メインマフラーの上部床廻りとリヤシートクッション下部が焼け焦げたという現象を、10年程前に当時の下位たる者から報告を受けた際の記録である。

 この年代のデイムラー(ジャガー)でも、排ガス対策済みであり、燃料噴射と触媒コンバーター付きである。近年のエンジンでは、冷間時の早期の触媒活性化などを目的とし、エキマニ直下にコンバーターを装着しているものが多くなったが、この時代の触媒コンバーターは、いわゆるプリマフラー(主に高周波成分を減衰させる消音器)の位置に、その機能も含めて設置されている。そして、何らかの要因によりシリンダー失火してCO、HCが多量にコンバーターに流れ込むとコンバーターが異常加熱し危険なので、必ずコンバーター後方は排気温度センサーが装着されている。ところが、今回の焼損は、コンバーターより下流となるメインマフラー部で生じているところが面白いというか不思議なところだ。入庫した工場でも、メインマフラー内部に原因となる何かがなかったのかを求めたのだろう、メインマフラーが切断され、内部を観察した形跡が伺われるのだ。

 何れにせよ、排ガス用触媒コンバーター付き車は、触媒なし車よりテールパイプから出る排気温度は高くなる。従って、アナログ70年代以前の旧車に比べれば、排気管や触媒、そして大面積となるメインマフラー廻りなど、遮熱板(ヒートインシュレーター)を増加しつつ断熱を強化している。

 さて、ここからは私見なので、異論、反論など大いに結構の前提で勝手な意見として記してみる。
 まず、排気温度が高くなる要因だが、従前記した様に失火などの要因であれば触媒過熱となり、そこでの過熱焼損となる。その場合はエキゾーストテンプの警告灯が点灯するだろう。それ以外に排気温度が高くなるとは、例えば点火タイミングが極端に遅れているとか、バルブタイミングの狂い(主にエキゾースト側の早開き)が想定される。しかし、どちらもエンジンの力感は相当に低下するし、そもそもその様なトラブルが生じるメカ的な故障があったとすれば、何らかのメカの破損が伴っているだろうから異音も生じ、まあ普通の運転者だったら不調を訴え焼損する前に入庫するだろう。

 当該現車を現状保存で見ていないので、断定することは容易ではない。そして、メインマフラーのヒートインシュレーターもちゃんと装着されていた様子も伺われる。その前提で私が想定するのは、「メインマフラーとインシュレーターの間の寸法が適切であったのであろうか?、もしや、下回りを何かにぶつけ(例えばフロントエキパイ、コンバーター、メインマフラーなど)に衝撃を与えた結果、エキゾースト配管のアライメントが狂い、メインマフラー部を上部に押し上げ空間が圧迫されることになった結果ではないのか?」というものである。

 しかし、写真から判じられるのは、当該現象は一気に焼損に至ったものとは考え難く、従前から「何か焦げ臭い」などの異臭を感じ続けていたのではないかと思えてならない。運転者(オーナー)には恐縮だが、余程ボンクラな方としか考えられないのだ。








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