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整備白書R2年より その6(横並び対応単価[レバーレート]が崩壊する兆し)

2021-12-01 | 問題提起
整備白書R2年より その6(横並び対応単価[レバーレート]が崩壊する兆し)
 今回は日整連整備白書からというより、私の知る様々な自整業やBP業における全国大都市に準じた対応単価もしくはレバーレートが崩壊の兆しを見せ始めていることについて述べてみたい。

 つまり、私は散発的にだが全国に幾多の自整業、BP業、損保調査員(アジャスター)などの知人と触れあいつつ、思考しているのだが、ここに来て、この数十年ほとんど変化のなかった対応単価やレバーレートの横並びといういう現象が崩れ始めようという予兆を感じ始めているのだ。

 つまり、対応単価やレバーレートにしても、大義名分上は、損保に関わる場合は特に過去の公正取引委員会の口頭指導などもあり、また損保自身もいわゆる独占禁止法を意識しつつ、個別工場毎の打ち合わせにより決定することとなっていた。ところが実態は、損保は国産車については個別損保と東京の個別大手ディーラー(従前までのTP店で現在のTMT)と打ち合わせ決定し、それがリーディングプライスとなり、順次賃金センサス(政府統計資料)の都道府県別賃金指数などを眺めつつ、全国の国産大手ディーラーの対応単価を決める主因となっていたという、いわば横並びというか、東京を最上位とするスロープを形成してしたと云えるだろう。

 また、レバーレートについては、日整連組織や全国各地の整備振興会という組織で決めることは、これまた独占禁止法違反となるので、同組織は個別工場を十分指導して行く必用があったが不足していたと思える。また、個別工場毎に自社の整備原価を把握しつつ、自然発生的に地域相場が形成されるのならまだ良いのだが、多くの個別工場で自社の整備原価に無頓着なまま、個別損保と個別大手ディーラーが協定した対応単価が最上位として、そこをピークに横並びでその対応単価がイコールレバーレートと見なされて経過して来たのが、この数十年間の日本の整備、BP業の実態なのだと認識している。

 ところがだ、全国には様々な個別工場があり、散発的にその地方の地域相場とかけ離れたレバーレートなり対応単価を主張する工場があり、それらは訴訟などで争われ、ある場合は損保側の主張が通ったり、逆に工場側の主張が通ったりという現象は散発的にあったものだ。

 ところが今回記す内容は、全国の地方ディーラーにおいて、いわゆる現在の東京ディーラーより高いレバーレートを主張する場合がでてきているということがある。これは、主にトヨタを除く、日産、ホンダ、そして大型4社系のディーラーに多いと云う傾向が感じられる。

 これらに共通する経営内容として、今やディーラー経営も新車販売の比率は低下しつつ、サービス売上へのウェイトが増していることが一つはあるだろう。そして、乗用車系ディーラーでは親会社が県をまたぐファンド系企業が経営母体となっていることがある。そのことは、例えばホンダ系のディーラーで、愛知(名古屋)と石川(金沢)が同じファンド系親会社なのだ。だから、金沢のホンダ系ディーラーは、名古屋と同じレバーレートを主張してくるという具合なのだ。

 また、大型系ディーラーもディーラー経営の母体の大きくすることで、間接経費の圧縮を図るという目的もあろうと想像されるが、複数以上の他県をまたぐ中部もしくは東海ブロックとかという広大な範囲をまたぐ巨大組織になっているということがあるだろう。例えば、ふそう系などは、正式名称は三菱ふそうトラック・バス(株)で全国に直轄ディーラーを持ち、各ブロック別に例えば「東海ふそう」という屋号で事業しているが、組織体としてはあくまで三菱ふそうトラック・バス(株)が事業主なのだ。だから、具体例として記せば、全国各地でレバーレートは1万円程が請求なされているという訳だ。

 と云うことで、対応単価もしくはレバーレートは、今や東京のトヨタや日産を頂点とするピラミッド構造が、旧来あったスロープが崩れて来ているということが云えるのだと判断している。

 私は、この件も含めてだが、この業界の様々な矛盾を思考するが、どちらに組みするつもりもない。ただし、消費者物価がデフレだからと、様々な工場運営に必用な経費として増える要素を知る中で、整備白書で記す、ディーラー以外工場の工員平均年齢が50才で平均年収360万円が適正だとは到底思えない。それで、整備要員が足りないという前に、若い者が積極的に入社したい給与を払えない環境を作り上げてしまった原因が総て損保にあるとまでは思いたくないが、その一部には損保という巨大資本にあることは否定できないことだと思っている。また、日整連および日整商という組織も、あまりにも傍観し過ぎだと思えるし、またディーラーなどの殿様商売や何より自整業およびBP業の経営者自体にも自らの原価を知るという意識が希薄すぎたと云えると思っている。

 その様な視点で、今回の横並び体制の崩壊の兆しは良い方向性だと思っている。ただし、個別自整業およびBP工場には、くれぐれも原価を明確に把握することを求めたいが、その理解を損保にではなく対ユーザーに求めるべきことが大切だと思っている。ユーザーに見放されたら、およそ自営業種の自立はあり得ないことは自明のことだろう。



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