過去のMyブログネタからの再掲であるが、私同様に感心ある方に向けて紹介させて戴く。
掲載写真はホンダコレクションホールで見た、同社初の二輪グランプリ初優勝マシーンであるRC143だ。この初優勝は1961年のことだった様だが、この後ホンダを含めヤマハ、スズキ、その後カワサキと云った日本の二輪車は世界のレースを席捲して行ったのだった。
ところで、二輪車への思い入れはそれ程ではないというものの、その時代のレーシングマシンとして感心を持つ。そんな中、このアルミカウリングの作りの悪さ(凹凸打痕の多さ)は気になっていた。現在であれば、同様のアルミ板からでも、金型プレスにより十分な表面精度を作り出すことができるのだろうが、それには幾つもの金型が必用となり、軽く億単位のコストを要し、少量生産品ではとても間尺に合わないことになる。また、適当なアルミブロック材を適宜積層しておいて、マシニングセンターで削り出す工法において、高精度な表面形状パネルを生み出すことも可能になっており、この工法は新幹線の700系以降の先頭車両のノーズ部分に採用されているそうだが、金型よりがコストを押さえられるにしても、それなりに高コストな少量生産品のみ許される工法だろう。
従前の通り、このRC143のアルミカウルの手叩き鈑金の打痕跡が残ることに、もう少し丁寧に仕上げたらどうなのかなとの感を持っていたのだが、あるアルミ板金を得意にしているレストアラーの経営者の方と話す機会が後日あり、件のアルミカウルのことへの意見を戴いた。その方曰く「この仕上げレベルは、限られた時間の中、手慣れた職人の技が生み出したものであり、これを作った職人は必要にして十分な精度として、手早くこれを生み出したのだろう」というものであった。さらに、「もし、この風味を再生しろと云われたら、それはそれで難しいものであろう」と聞くのであった。
ところで、鋼板とアルミ板では、相当に金属特性が異なり、それぞれの特性を把握した上での技術が要求されるのだろう。昔のイタリア・カロッツェリア(製作工房)で作成された少量生産車は、アルミ製ボデーのクルマが多く存在する。この理由は、一番の理由は、手作りの打ち出し成形板金において、その労力(つまり生産性)がアルミの方が柔らかく優れているからということに真の理由があると想像している。アルミ化による軽量化という目的もあるのだろうが、それは副次的な理由ではないかと私は思っている。ちなみに、初代フェラーリ・ディーノだが、先行少量先行生産の206はアルミ製だが、その後に排気量アップして登場した量産仕様である246は鋼板製ボデーとなっている。
いずれにしても、昔の少量生産アルミボデーは、プレス金型やマニニングセンターといった大仕掛けの機械は使わず、木臼、定盤(金敷)、木槌、板金ハンマー、板金ローラー程度のハンドツールだけから、職人の技能だけに頼って生み出された製品なのだ。
※追記
アルミニウムは合金として、#1000~#8000番台まで、多くの種別を持つ。一般に番手が上がる毎に比強度が上がるが、加工性は悪化する。なお、#7000番台以上はジュラルミンとも称す。ここで記した昔のクルマのボデーなどは、加工性の良い#2000番台を使用する。現代車のマスプロカーでは、外板#5000番台、内板#6000番台以上が多い様だ。
掲載写真はホンダコレクションホールで見た、同社初の二輪グランプリ初優勝マシーンであるRC143だ。この初優勝は1961年のことだった様だが、この後ホンダを含めヤマハ、スズキ、その後カワサキと云った日本の二輪車は世界のレースを席捲して行ったのだった。
ところで、二輪車への思い入れはそれ程ではないというものの、その時代のレーシングマシンとして感心を持つ。そんな中、このアルミカウリングの作りの悪さ(凹凸打痕の多さ)は気になっていた。現在であれば、同様のアルミ板からでも、金型プレスにより十分な表面精度を作り出すことができるのだろうが、それには幾つもの金型が必用となり、軽く億単位のコストを要し、少量生産品ではとても間尺に合わないことになる。また、適当なアルミブロック材を適宜積層しておいて、マシニングセンターで削り出す工法において、高精度な表面形状パネルを生み出すことも可能になっており、この工法は新幹線の700系以降の先頭車両のノーズ部分に採用されているそうだが、金型よりがコストを押さえられるにしても、それなりに高コストな少量生産品のみ許される工法だろう。
従前の通り、このRC143のアルミカウルの手叩き鈑金の打痕跡が残ることに、もう少し丁寧に仕上げたらどうなのかなとの感を持っていたのだが、あるアルミ板金を得意にしているレストアラーの経営者の方と話す機会が後日あり、件のアルミカウルのことへの意見を戴いた。その方曰く「この仕上げレベルは、限られた時間の中、手慣れた職人の技が生み出したものであり、これを作った職人は必要にして十分な精度として、手早くこれを生み出したのだろう」というものであった。さらに、「もし、この風味を再生しろと云われたら、それはそれで難しいものであろう」と聞くのであった。
ところで、鋼板とアルミ板では、相当に金属特性が異なり、それぞれの特性を把握した上での技術が要求されるのだろう。昔のイタリア・カロッツェリア(製作工房)で作成された少量生産車は、アルミ製ボデーのクルマが多く存在する。この理由は、一番の理由は、手作りの打ち出し成形板金において、その労力(つまり生産性)がアルミの方が柔らかく優れているからということに真の理由があると想像している。アルミ化による軽量化という目的もあるのだろうが、それは副次的な理由ではないかと私は思っている。ちなみに、初代フェラーリ・ディーノだが、先行少量先行生産の206はアルミ製だが、その後に排気量アップして登場した量産仕様である246は鋼板製ボデーとなっている。
いずれにしても、昔の少量生産アルミボデーは、プレス金型やマニニングセンターといった大仕掛けの機械は使わず、木臼、定盤(金敷)、木槌、板金ハンマー、板金ローラー程度のハンドツールだけから、職人の技能だけに頼って生み出された製品なのだ。
※追記
アルミニウムは合金として、#1000~#8000番台まで、多くの種別を持つ。一般に番手が上がる毎に比強度が上がるが、加工性は悪化する。なお、#7000番台以上はジュラルミンとも称す。ここで記した昔のクルマのボデーなどは、加工性の良い#2000番台を使用する。現代車のマスプロカーでは、外板#5000番台、内板#6000番台以上が多い様だ。