梅雨も近づき、これから各地で多くの水害車が生じることだろう。当方も過去から、幾多の水害車両の損害見積や商品仕入れとしての値踏みで関わって来たので、幾つか関連事項を記してみたい。
そもそも、水害車両というのは、なかなか修理費の値踏み(見積)をするのが難しいものだろうと思わされる。一般の事故車と異なり、外観は良好でも、電装系のパーツや内装の布、皮革関係のトリム類の交換が必要になったりと、カーディーラーなどで修理見積を積算すると、優に新車価格を上回るなんてこともざらにあるだろう。
まず、見積の前提条件として、どのような状態(走行中か駐車状態か)で冠水したのか、そして冠水水位はどのレベルであったのか、水質は塩水か淡水かなどより損害は大幅に変わってくると容易に想像される。例えば、室内への水浸水がなくても、走行中に深い水たまりに飛び込んでエンジンが急停止、つまりエアクリーナーからの大量の水吸い込みによる液圧縮を起こすという、いわゆるウォーターハンマーを生じている様な場合、コンロッドの曲りやバルブ系の曲りなど、エンジン本体内部の損壊に至る訳で、エンジン交換を前提に考える必用もあるだろう。
過去に知る比較的低いレベル(シート座面下くらい)の冠水車でもエンジン始動は可能であったり不可であったりと、現象はまちまちだ。ただ、どちらかと云うと輸入車の方が冠水に弱い傾向があると感じている。このことは、以前に記した輸入車の室内マット下にECU(コントロールユニット)が装着されていたりというクルマを時々垣間見たことからも頷ける。なお、エンジン始動可能車両であっても、エアバッッグ警告灯が点灯している場合を多く見る。これはエアバッグ用ECUの取付位置が、ほとんどの車両においてシフトレバーの前後付近のセンターフロアパネルに直付けされているからなのだ。これにより室内乗員に作用するGを検出し、エアバッグの作動を決定している。だから、エアバッグ警告灯が点灯している場合、諸状況から例え冠水した水位は低く見えても、これ(該当ECU)に達していたと判断できる。なお、プロペラシャフトのあるFRより、ないFFの方がセンターフロアが自体が低いから、より当現象の水位は低くなるだろう。
ここで、昔々のこと、水害車を買って直して6年近くマイカーとして乗り続けた経験を記してみる。時は90年代前半、熊本地方を集中豪雨が襲い、1万台を超える水害車両が生じたことがあった。当時、東京勤務であったが、災害応援として出張し、多数の水害車両を見て回ったのだった。そして、新車登録から1年程のセルシオ(UCF11)を購入したのだった。そして、知り合いの板金工場へ陸送手配し、週末のボチボチと2カ月近く要して復元し乗るようになったのだった。
当時のセルシオCタイプは新車価格600万程だったと思うが、熊本災害では淡水ではあるが白洲大地と云われる細かい砂(というか泥)で、冠水水位は明瞭に判るが、ステアリングホイールの下端付近、かろうじてコンビネーションメーターは水没していないとうレベルであった。これでも、電装系パーツはほぼ全滅であり、見積すれば全損状態であった。そんなクルマを何故買って起こそうと思ったか、一般人には不思議にも思うだろう。しかし、答えは簡単で件の板金工場に事故大破で全損のセルシオボデーがあることを知っていたからなのだ。つまり、関連する電装パーツの多くは、幾ら事故大破全損でも、水害で損害を受けるパーツとは部位が異なるということから、移植すれば事足りるという結論なのだ。とは云え、この事故大破車のすべてのパーツが利用できた訳ではなく、幾らか中古部品や知り合いのディーラーからクレーム品のオーディオ機器などを調達したりと工夫はした故のことではあるのだが。
室内の部品はルーフライニングは外さないが、その他はすべて外し、洗浄できるもの水洗いした。ワイヤリングハーネスは事故車のものはエンジンルーム内で損傷しており、新品価も安いものではないので、コネクタ端子を十分洗浄しエアブローしCRC滴下。エアコンユニット関係もケースを総分解し内外ケース類の洗浄とサーボ系機器を取替。すべてのモーター関係(シートや各ドアなど)を取替、室内カーペットは新品取替、シートクッションとバック表皮(レザー)は事故車と取替。エンジン(1UZ)はおよそ18L缶2杯分の水混入オイルが出たが、事故車のECUが既に使われてしまってなく、中古パーツ業社から、エンジンとATの2つのECUを調達し、セル一発で始動した。感激して吹かしたこともあるが、驚いたのはマフラーからの大量の水の放出だった。AT本体(A34DE)は、単にオイルを入れ替えてもトラブル出る可能性が想像されたし、事故車のがあったので、これは件のディラーに中古オルタやスターターモーターと共に持ち込み交換してもらった。その際に、当時純生のパイオニアのオーディオ(CDチェンジャー共)を保有のクレーム在庫品(不具合なし)を無償で付けてもらった。
そして、先に記した様に約6年乗り続けた(といっても、ほとんど東京のサラリーマン生活で総距離は3万キロ程)が、以下の3つくらいしかトラブルは出なかった。
①ブレーキランプSWの焼損
乗り始めて数ヶ月くらいして、やや焦げ臭い臭いがしてブレーキのウォーニングランプが点灯した。これは、交換を省略していたべダル部のブレーキランプSW接点の焼損だった。新品に交換して回復した。
②室内への水漏れ
助手席側カーペットが濡れるという現象だが、調べるとクーリングユニット(当時はヒーターと別体)のドレーンホースが、取付不良で潰れていたもの。これは、私の装着時の不注意によるもので、配管を切り離すことなく、ユニット固定を外して浮かせることで修復できた。
③走り始めて30分~1時間程すると後方でボッコンと単発の音が聞こえる現象
これは何の音かなぁと思いながらしばらく乗っていたのだが、音からして燃料タンクに違いないと睨んだ。燃料キャップを緩めると、シューと強い吸い込み音が出る。これは、想定通り左Frフェンダーライナー裏にある、キャニスターを新品交換することで解消した。旧品のキャニスターを見ると細かい砂で完全に詰まっていた。
という様なことで、90年代の前半にセルシオの細部の作りや、そのドライブフィールを知るのだが、それ以前乗りづ付けたクラウン(MS110→GS121→UZS131)とは、次元が異なる作りであり、走りであると驚嘆したというのが印象だ。まずは、作りについて思うのだが、ボデー剛性がまったく異なる。だいたい、件の板金屋さんで、別のセルシオのルーフパネルを見て持ってビックリしたことがあるが、通常ルーフパネルは大した応力負担している訳でなくフェンダーなんかと同じ0.8mmちょっとの鋼板なのだが、このセルシオはたぶん1.2mm近い板厚でメチャ重いのだ。また、サイドシルの断面積が従来のモノコック車より断然大きい。それでも、車両のデメンション(全長、全幅、高さ)は大きいが、車重はクラウンロイヤルサルーンG(UZS131)とほぼ同じ1.8トンちょっとで大して重くない。驚くのは、クラウンよりホイールベース長く幅も広いが、切れが全然良い、つまり最小回転半径が小さいのだ。これは、クラウンがフレームサイドレールスパンから受けるステアリング切れ角の制約を、ボデーの拡幅などで解消した故だろう。狭い道でも、車幅が許す限りだが、全然走り易いし、廻りきれなくても切り返しは少なくてすむ。これは、以前から欧米の大型セダンで感じていたことなのだが。
そして、走りのことだが、従来の次元を超えている安定感というか安心感だろう。このことを端的にしめすのが、助手席に座る妻が、従来のクラウン(最後に乗ったUZS131でも)だと、高速道路の閑散とした直線路でも120km/hもだすと、緊張した声で「ちょっと・・・」と云うのが、140でも云わなくなったということでもはっきり判る。つまり。乗る者に与える体感速度の次元が異なるのだ。しかし、昨今はこんな無茶はないが、会社関連の法事で同僚たち総員4名で出かけた帰り道でのこと。片側3車線のセンターよりレーンを走行中、交差点で停止していた対向軽トラが30mくらいと至近で右折を開始した時のことを思いだす。もう、とてもそのままでは止まれる速度(メーター見る余裕など皆無だが80以上だったでろう)でも距離でもなく、フルブレーキしながら左後方を見る余裕もなく左へ回避し、この時相手車は気づいて交差点内で横になって止まったが、こちらは交差点左側に衝突しそうに感じながらフルブレーキのまま右へ回避し続く直線路に復帰した(今呼ばれるダブルレーンチェンジテストと同様だ)が、どっと冷や汗が吹き出して来た。ABS付いてなければ、絶対回避できなかったと思うことは、ロートルにとって生涯で最悪の思い出だ。
追記
初代セルシオの1UZエンジンだが、当時ディーラーの工場長から聞いた話しだが、エンジン工場で全品テストベンチでファイリングして品質を確かめていたらしい。これは、たぶんそれ程に綿密というものでなく、異音などと共に一定回転数での振動などを計測し、良、可、不可くらいの判断レベルでのあったのではないかと想像する。そして、良をセルシオ(レクサスLS)に、可をクラウンに、不可はスクラップにということだろう。それと、この時代、防錆性能を高めるため、ボデーの各所に亜鉛メッキ鋼板が採用拡大されつつあったのだが、セルシオ初台は全パネル亜鉛メッキ鋼板だった。しかし、コスト低減に励む現在、最新のLSでさえルーフパネルなど、防錆条件が厳しくないパネルは、亜鉛メッキなし鋼板に戻している様だ。
そもそも、水害車両というのは、なかなか修理費の値踏み(見積)をするのが難しいものだろうと思わされる。一般の事故車と異なり、外観は良好でも、電装系のパーツや内装の布、皮革関係のトリム類の交換が必要になったりと、カーディーラーなどで修理見積を積算すると、優に新車価格を上回るなんてこともざらにあるだろう。
まず、見積の前提条件として、どのような状態(走行中か駐車状態か)で冠水したのか、そして冠水水位はどのレベルであったのか、水質は塩水か淡水かなどより損害は大幅に変わってくると容易に想像される。例えば、室内への水浸水がなくても、走行中に深い水たまりに飛び込んでエンジンが急停止、つまりエアクリーナーからの大量の水吸い込みによる液圧縮を起こすという、いわゆるウォーターハンマーを生じている様な場合、コンロッドの曲りやバルブ系の曲りなど、エンジン本体内部の損壊に至る訳で、エンジン交換を前提に考える必用もあるだろう。
過去に知る比較的低いレベル(シート座面下くらい)の冠水車でもエンジン始動は可能であったり不可であったりと、現象はまちまちだ。ただ、どちらかと云うと輸入車の方が冠水に弱い傾向があると感じている。このことは、以前に記した輸入車の室内マット下にECU(コントロールユニット)が装着されていたりというクルマを時々垣間見たことからも頷ける。なお、エンジン始動可能車両であっても、エアバッッグ警告灯が点灯している場合を多く見る。これはエアバッグ用ECUの取付位置が、ほとんどの車両においてシフトレバーの前後付近のセンターフロアパネルに直付けされているからなのだ。これにより室内乗員に作用するGを検出し、エアバッグの作動を決定している。だから、エアバッグ警告灯が点灯している場合、諸状況から例え冠水した水位は低く見えても、これ(該当ECU)に達していたと判断できる。なお、プロペラシャフトのあるFRより、ないFFの方がセンターフロアが自体が低いから、より当現象の水位は低くなるだろう。
ここで、昔々のこと、水害車を買って直して6年近くマイカーとして乗り続けた経験を記してみる。時は90年代前半、熊本地方を集中豪雨が襲い、1万台を超える水害車両が生じたことがあった。当時、東京勤務であったが、災害応援として出張し、多数の水害車両を見て回ったのだった。そして、新車登録から1年程のセルシオ(UCF11)を購入したのだった。そして、知り合いの板金工場へ陸送手配し、週末のボチボチと2カ月近く要して復元し乗るようになったのだった。
当時のセルシオCタイプは新車価格600万程だったと思うが、熊本災害では淡水ではあるが白洲大地と云われる細かい砂(というか泥)で、冠水水位は明瞭に判るが、ステアリングホイールの下端付近、かろうじてコンビネーションメーターは水没していないとうレベルであった。これでも、電装系パーツはほぼ全滅であり、見積すれば全損状態であった。そんなクルマを何故買って起こそうと思ったか、一般人には不思議にも思うだろう。しかし、答えは簡単で件の板金工場に事故大破で全損のセルシオボデーがあることを知っていたからなのだ。つまり、関連する電装パーツの多くは、幾ら事故大破全損でも、水害で損害を受けるパーツとは部位が異なるということから、移植すれば事足りるという結論なのだ。とは云え、この事故大破車のすべてのパーツが利用できた訳ではなく、幾らか中古部品や知り合いのディーラーからクレーム品のオーディオ機器などを調達したりと工夫はした故のことではあるのだが。
室内の部品はルーフライニングは外さないが、その他はすべて外し、洗浄できるもの水洗いした。ワイヤリングハーネスは事故車のものはエンジンルーム内で損傷しており、新品価も安いものではないので、コネクタ端子を十分洗浄しエアブローしCRC滴下。エアコンユニット関係もケースを総分解し内外ケース類の洗浄とサーボ系機器を取替。すべてのモーター関係(シートや各ドアなど)を取替、室内カーペットは新品取替、シートクッションとバック表皮(レザー)は事故車と取替。エンジン(1UZ)はおよそ18L缶2杯分の水混入オイルが出たが、事故車のECUが既に使われてしまってなく、中古パーツ業社から、エンジンとATの2つのECUを調達し、セル一発で始動した。感激して吹かしたこともあるが、驚いたのはマフラーからの大量の水の放出だった。AT本体(A34DE)は、単にオイルを入れ替えてもトラブル出る可能性が想像されたし、事故車のがあったので、これは件のディラーに中古オルタやスターターモーターと共に持ち込み交換してもらった。その際に、当時純生のパイオニアのオーディオ(CDチェンジャー共)を保有のクレーム在庫品(不具合なし)を無償で付けてもらった。
そして、先に記した様に約6年乗り続けた(といっても、ほとんど東京のサラリーマン生活で総距離は3万キロ程)が、以下の3つくらいしかトラブルは出なかった。
①ブレーキランプSWの焼損
乗り始めて数ヶ月くらいして、やや焦げ臭い臭いがしてブレーキのウォーニングランプが点灯した。これは、交換を省略していたべダル部のブレーキランプSW接点の焼損だった。新品に交換して回復した。
②室内への水漏れ
助手席側カーペットが濡れるという現象だが、調べるとクーリングユニット(当時はヒーターと別体)のドレーンホースが、取付不良で潰れていたもの。これは、私の装着時の不注意によるもので、配管を切り離すことなく、ユニット固定を外して浮かせることで修復できた。
③走り始めて30分~1時間程すると後方でボッコンと単発の音が聞こえる現象
これは何の音かなぁと思いながらしばらく乗っていたのだが、音からして燃料タンクに違いないと睨んだ。燃料キャップを緩めると、シューと強い吸い込み音が出る。これは、想定通り左Frフェンダーライナー裏にある、キャニスターを新品交換することで解消した。旧品のキャニスターを見ると細かい砂で完全に詰まっていた。
という様なことで、90年代の前半にセルシオの細部の作りや、そのドライブフィールを知るのだが、それ以前乗りづ付けたクラウン(MS110→GS121→UZS131)とは、次元が異なる作りであり、走りであると驚嘆したというのが印象だ。まずは、作りについて思うのだが、ボデー剛性がまったく異なる。だいたい、件の板金屋さんで、別のセルシオのルーフパネルを見て持ってビックリしたことがあるが、通常ルーフパネルは大した応力負担している訳でなくフェンダーなんかと同じ0.8mmちょっとの鋼板なのだが、このセルシオはたぶん1.2mm近い板厚でメチャ重いのだ。また、サイドシルの断面積が従来のモノコック車より断然大きい。それでも、車両のデメンション(全長、全幅、高さ)は大きいが、車重はクラウンロイヤルサルーンG(UZS131)とほぼ同じ1.8トンちょっとで大して重くない。驚くのは、クラウンよりホイールベース長く幅も広いが、切れが全然良い、つまり最小回転半径が小さいのだ。これは、クラウンがフレームサイドレールスパンから受けるステアリング切れ角の制約を、ボデーの拡幅などで解消した故だろう。狭い道でも、車幅が許す限りだが、全然走り易いし、廻りきれなくても切り返しは少なくてすむ。これは、以前から欧米の大型セダンで感じていたことなのだが。
そして、走りのことだが、従来の次元を超えている安定感というか安心感だろう。このことを端的にしめすのが、助手席に座る妻が、従来のクラウン(最後に乗ったUZS131でも)だと、高速道路の閑散とした直線路でも120km/hもだすと、緊張した声で「ちょっと・・・」と云うのが、140でも云わなくなったということでもはっきり判る。つまり。乗る者に与える体感速度の次元が異なるのだ。しかし、昨今はこんな無茶はないが、会社関連の法事で同僚たち総員4名で出かけた帰り道でのこと。片側3車線のセンターよりレーンを走行中、交差点で停止していた対向軽トラが30mくらいと至近で右折を開始した時のことを思いだす。もう、とてもそのままでは止まれる速度(メーター見る余裕など皆無だが80以上だったでろう)でも距離でもなく、フルブレーキしながら左後方を見る余裕もなく左へ回避し、この時相手車は気づいて交差点内で横になって止まったが、こちらは交差点左側に衝突しそうに感じながらフルブレーキのまま右へ回避し続く直線路に復帰した(今呼ばれるダブルレーンチェンジテストと同様だ)が、どっと冷や汗が吹き出して来た。ABS付いてなければ、絶対回避できなかったと思うことは、ロートルにとって生涯で最悪の思い出だ。
追記
初代セルシオの1UZエンジンだが、当時ディーラーの工場長から聞いた話しだが、エンジン工場で全品テストベンチでファイリングして品質を確かめていたらしい。これは、たぶんそれ程に綿密というものでなく、異音などと共に一定回転数での振動などを計測し、良、可、不可くらいの判断レベルでのあったのではないかと想像する。そして、良をセルシオ(レクサスLS)に、可をクラウンに、不可はスクラップにということだろう。それと、この時代、防錆性能を高めるため、ボデーの各所に亜鉛メッキ鋼板が採用拡大されつつあったのだが、セルシオ初台は全パネル亜鉛メッキ鋼板だった。しかし、コスト低減に励む現在、最新のLSでさえルーフパネルなど、防錆条件が厳しくないパネルは、亜鉛メッキなし鋼板に戻している様だ。