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電子制御燃料噴射の昔話 その1

2022-05-01 | コラム
電子制御燃料噴射の昔話 その1
 ここではガソリンエンジン用電子制御燃料噴射の昔話を書き留めてみたい。
 そもそも燃料噴射というのは、ディーゼルエンジンには必須の機構なのだ。つまり、ディーゼルでは自己圧縮の昇温した環境へ、シリンダー内(もしくは副室内)へ直接噴射を開始することで、その燃焼開始を制御できるという根源的な理由があるので、ガソリンエンジンみたいに、給気管でキャブレターとか燃料噴射して、予め燃料と空気の混合気を給気したのでは、燃焼開始が正確に制御できずに、バラバラに燃焼してしまうことからマトモな運転が難しいと云うことがある。

 一方、ガソリンエンジンでは、空燃比(A/F・エーバーエフと呼ぶ)つまり燃料と空気の混合比率が特別工夫のないエンジンでは、最薄で20:1から最濃で12:1までとある程度限定した範囲でないと正常な燃焼ができないと云う根源的な問題がある。しかも、排ガス対策以降は、三元触媒(CCRO)を使用し、CO、HCの酸化とNOxの還元を同時に行うためには、理論空燃比(14.7:1)に精緻に保って、初めて効率高く三元触媒が機能するという問題がある。このため、三元触媒が発明された当時のかなり早い段階で、CO、HC、NOxのすべてが浄化できることは理解できていたのだが、以下に理論空燃比運転を継続するかという点で実用化が遅れていたという。つまり現在のO2センサーが使用できるという着想は既にあったが、そのO2センサーの耐久度がある開発が進まず、早くからそのことを知っていた独ボッシュなども実用化が遅れていたという状況にあったと云う。

 この三元触媒とO2センサーを世界で初めて実用化し市販車に搭載したのは、トヨタのM-EUエンジンで、ここにはトヨタ、デンソーなどのたゆまぬ技術開発があった故と感じることなのだ。

 その後、日産でもO2センサーの開発を、日立とかユニシアジェックス(現日立に吸収合併)の努力で開発して来た。それと、三元触媒も、オリジナルはペレットタイプという粒の表面に貴金属をコーティングしたものであったが、トヨタや国内メーカーの研究で、モノリスタイプという蜂の巣状の押し出し材の表面に貴金属コーティングした方式が開発され、大幅な通気抵抗の削減だとか耐久性に優れた方式として、現在では触媒はこのモノリスタイプが世界のグローバルスタンダードの方式になっている。この開発がなされた当時、O2センサーとかモノリス触媒での日本の世界シェアは50%を超えたという。1980年代の日本の黄金期の逸話である。


#燃料噴射の昔話 #O2センサーとモノリス三元触媒を実用化したのは日本


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