タント・フロントホイールベアリング交換(捕捉事項)
ここでは、前回のタントのフロントホイールベアリング取替を記したのだが、言葉足らずのことがあったのと、これはFAINES等の修理書と名付けれられた書面を見る都度、酷いなぁと思っていることから、ボールベアリングの取り扱いについて、基本的な事柄として補足しておきたい。
昨今の修理書とかマニュアルと称するものでは、私に云わせりゃ小僧が整備実務知識もないままに、CAD図だけの転用で、おそらく本人も理解しないままマニャアル作りが恒常的に行われていると想像できる。
もう既に、30年程前から乗用車でのホイールベアリングは、それ以前のテーパーローラーベアリングから、ダブルアンギュラコンタクトベアリングというものに置き換えられている。この動きは、ライトトラックにまで、現在拡大されているが、中大型車の接地加重の大きい車両では、従来同様のテーパーローラーベアリングが踏襲し続けられている。これは、耐荷重性がテーパーローラー式の方が、ボール式より耐荷重性で有利と云うことだろう。ところが、乗用車など、ほとんどボールベアリング式となっているが、これは転動抵抗がテーパーローラー式より小さく、転がり抵抗が小さく燃費の点で有利ということや、工作精度の向上により、最終的なロックナットのプリセットトルクで、過不足ないプレロードが得られるなどの理由からであろう。
なお、ボール式ハブベアリングは、複列(2列)式だが、単にベアリングレースを複列で二重化しただけでなく、ダブルアンギュラと呼ぶ、ベアリングレースが、アウターおよびインナーで角度(アンギュラ:Angular)を持たせることにより、垂直荷重だけでなく、横荷重とか斜め荷重にも十分耐える構造にされていることを知る要があるだろう。
さて、このアンギュラボールベアリングの交換だが、これはアンギュラに限らず通常のボールベアリングも同様だが、抜き取る際と、挿入する際に、如何にベアリングボールに過負荷を与えないようにするかということが要点となる。
ただし、抜き取りの際は、ベアリングの組付け構造によっては、ベアリングボールに負荷を与えざるを得ない場合もあるのだが、通常ベアリングを抜き取る際は、新品に交換するのが前提となるので、要点としては挿入の際に、如何にベアリングボールに過負荷を与えないように留意するかということになる。
ここでは、今回行ったタントの場合で示すが、新ベアリングの挿入は第一段階として、ナックル本体にベアリングを挿入するのだが、結構堅めに挿入されており、通常は湯あるプレスを使用するのだが、おそらく正常にベアリングが挿入されている状態では、生ずる油圧は500キロ程度で挿入されていくはずだ。そして、ベアリングが着底すると一気に油圧が高まることで着底したことが確認できる。
なお、油圧プレスを使用する場合、どんなに高く油圧が上がったとしても5トン以下で抜き取りもしくは挿入できるはずだ。もし、油圧がどんどん上がり、動く様子がないという場合は、治具の掛け方の間違い等を確認してみる要があるだろう。そうしないと、正常品のナックルを変型させてしまう可能性がある。
今回の場合、油圧プレスがない環境で行ったので、第一段階のベアリング事態の挿入は、新旧ベアリングを重ねてテープで仮止めしつつ、旧ベアリングのアウターレースを打撃することで行った。この場合、旧ベアリングをそのまま叩くのではなく、旧ベアリングに当て板もしくはエクステンションバーなどの直線状の橋渡しをする材を介して、それを打撃することで、インナーレースに打撃力が及ばないことを念頭に置いて叩き込んだと云うことだ。
第二段階としては、挿入済みのベアリングにハブを挿入する訳だが、今度はボールに負荷を与えないという前提で考えると、受けての治具はインナーレースに当てると云うことが前提となる。このダブルアンギュラベアリングは、アウター-レースは複列一体式だが、インナーレースは複列に分割されてはいるが、規定トルクで締め付けた場合には、インナーレースは密着し、それで規定プレロードになる様に工作精度高く作られている。従って、インナーレースに受手の治具を当てることで、挿入時のベアリングボールに掛かる過負荷とか打痕を生じさせる心配はなくなるという訳だ。
なお、昨今の国産車も、既に速いものは20年ほど前よりユニットベアリングで、ベアリング本体とハブが一体補給されて、ナックルへの組付けは、ボルト4本を、内側からねじ込み固定する方法に変わって来ており、交換は楽だが部品代が高くなるということがある。さらに、何故ユニット式になったのかの理由だが、これらはメーカーと云うよりサプライヤーの製品だが、ベアリングメーカーが高精度かつ総合コストで安くなると売り込んだのだろうか明確なところは判らないが、例えばBMWミニでは、新生代のミニでは初代R50(既に30年近く前)よりユニット式ボールベアリングが使用されている。もう一つ思い当たることに、特にFF方式では、ナックルにベアリングが挿入されている訳だが、横方向の衝突事故などで、ぶっつかった反対側の車輪が横方向にスキッドしただけで、キャンバーが狂う場合を知見している。これは、ナックル強度が弱く、生じていたものと思われるが、ベアリング挿入部など薄肉部で変形が生じている可能性を疑った。この場合、ナックル本体をガンコに作り、そこにユニットベアリングをボルト固定することで、この強度不足を補えると云うこともあるのかもしれない。
ここでは、前回のタントのフロントホイールベアリング取替を記したのだが、言葉足らずのことがあったのと、これはFAINES等の修理書と名付けれられた書面を見る都度、酷いなぁと思っていることから、ボールベアリングの取り扱いについて、基本的な事柄として補足しておきたい。
昨今の修理書とかマニュアルと称するものでは、私に云わせりゃ小僧が整備実務知識もないままに、CAD図だけの転用で、おそらく本人も理解しないままマニャアル作りが恒常的に行われていると想像できる。
もう既に、30年程前から乗用車でのホイールベアリングは、それ以前のテーパーローラーベアリングから、ダブルアンギュラコンタクトベアリングというものに置き換えられている。この動きは、ライトトラックにまで、現在拡大されているが、中大型車の接地加重の大きい車両では、従来同様のテーパーローラーベアリングが踏襲し続けられている。これは、耐荷重性がテーパーローラー式の方が、ボール式より耐荷重性で有利と云うことだろう。ところが、乗用車など、ほとんどボールベアリング式となっているが、これは転動抵抗がテーパーローラー式より小さく、転がり抵抗が小さく燃費の点で有利ということや、工作精度の向上により、最終的なロックナットのプリセットトルクで、過不足ないプレロードが得られるなどの理由からであろう。
なお、ボール式ハブベアリングは、複列(2列)式だが、単にベアリングレースを複列で二重化しただけでなく、ダブルアンギュラと呼ぶ、ベアリングレースが、アウターおよびインナーで角度(アンギュラ:Angular)を持たせることにより、垂直荷重だけでなく、横荷重とか斜め荷重にも十分耐える構造にされていることを知る要があるだろう。
さて、このアンギュラボールベアリングの交換だが、これはアンギュラに限らず通常のボールベアリングも同様だが、抜き取る際と、挿入する際に、如何にベアリングボールに過負荷を与えないようにするかということが要点となる。
ただし、抜き取りの際は、ベアリングの組付け構造によっては、ベアリングボールに負荷を与えざるを得ない場合もあるのだが、通常ベアリングを抜き取る際は、新品に交換するのが前提となるので、要点としては挿入の際に、如何にベアリングボールに過負荷を与えないように留意するかということになる。
ここでは、今回行ったタントの場合で示すが、新ベアリングの挿入は第一段階として、ナックル本体にベアリングを挿入するのだが、結構堅めに挿入されており、通常は湯あるプレスを使用するのだが、おそらく正常にベアリングが挿入されている状態では、生ずる油圧は500キロ程度で挿入されていくはずだ。そして、ベアリングが着底すると一気に油圧が高まることで着底したことが確認できる。
なお、油圧プレスを使用する場合、どんなに高く油圧が上がったとしても5トン以下で抜き取りもしくは挿入できるはずだ。もし、油圧がどんどん上がり、動く様子がないという場合は、治具の掛け方の間違い等を確認してみる要があるだろう。そうしないと、正常品のナックルを変型させてしまう可能性がある。
今回の場合、油圧プレスがない環境で行ったので、第一段階のベアリング事態の挿入は、新旧ベアリングを重ねてテープで仮止めしつつ、旧ベアリングのアウターレースを打撃することで行った。この場合、旧ベアリングをそのまま叩くのではなく、旧ベアリングに当て板もしくはエクステンションバーなどの直線状の橋渡しをする材を介して、それを打撃することで、インナーレースに打撃力が及ばないことを念頭に置いて叩き込んだと云うことだ。
第二段階としては、挿入済みのベアリングにハブを挿入する訳だが、今度はボールに負荷を与えないという前提で考えると、受けての治具はインナーレースに当てると云うことが前提となる。このダブルアンギュラベアリングは、アウター-レースは複列一体式だが、インナーレースは複列に分割されてはいるが、規定トルクで締め付けた場合には、インナーレースは密着し、それで規定プレロードになる様に工作精度高く作られている。従って、インナーレースに受手の治具を当てることで、挿入時のベアリングボールに掛かる過負荷とか打痕を生じさせる心配はなくなるという訳だ。
なお、昨今の国産車も、既に速いものは20年ほど前よりユニットベアリングで、ベアリング本体とハブが一体補給されて、ナックルへの組付けは、ボルト4本を、内側からねじ込み固定する方法に変わって来ており、交換は楽だが部品代が高くなるということがある。さらに、何故ユニット式になったのかの理由だが、これらはメーカーと云うよりサプライヤーの製品だが、ベアリングメーカーが高精度かつ総合コストで安くなると売り込んだのだろうか明確なところは判らないが、例えばBMWミニでは、新生代のミニでは初代R50(既に30年近く前)よりユニット式ボールベアリングが使用されている。もう一つ思い当たることに、特にFF方式では、ナックルにベアリングが挿入されている訳だが、横方向の衝突事故などで、ぶっつかった反対側の車輪が横方向にスキッドしただけで、キャンバーが狂う場合を知見している。これは、ナックル強度が弱く、生じていたものと思われるが、ベアリング挿入部など薄肉部で変形が生じている可能性を疑った。この場合、ナックル本体をガンコに作り、そこにユニットベアリングをボルト固定することで、この強度不足を補えると云うこともあるのかもしれない。