私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

スリップ痕に関連して

2008-05-20 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 道路を走行していると様々なスリップ痕を目にする機会があります。交差点手前でのブレーキ痕(制動痕)やワインデング路でのローリング痕といったもの等です。
 ところで制動時のブレーキ痕が途中で急激な角度で折れていれば、クルマがその位置(大抵は前輪の位置)で衝突を生じたことが判ります。何故なら、外力を受けない限り単独のクルマだけでは、この様な急激に折れ曲がるスリップ痕を生じさせることは出来ないからなのです。

 この様な制動時のブレーキ痕と衝突位置の確認が、昨今のクルマでは難しくなってしまいました。それは、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の作用により、スリップ痕が生じなくなったことによります。ABSはタイヤのロックを防ぎ、常にタイヤをスリップ率20%程度の動的摩擦係数が一番高い状態に制御することが可能です。そのため急制動中でもタイヤがロックしないので、ステアリングでの回避動作が可能となります。

 この様に優れたABSの制御ですが、昨今は更に進んだESC(エレクロニック・スタビリティ・コントロール)とう制御を行うクルマが増加しつつあります。4輪の個別ブレーキを制御すると共に、アクセル開度や点火時期等を制御し、クルマのスタビリティ(安定性)を確保させるとうものです。ブレーキペダルを踏んでいなくても、クルマがスピン(回転)しようとすると、そのスピンを押さえる制御として、左右どちらかの片側車輪の制動を自動制御します。もちろん制動中も、従来のABSと同様以上の精度でロックコントロールしますし、合わせてスタビリティ制御も行います。更に進んだクルマでは、ステアリング制御を組み合わせて自動的にステアリングを切り足したり切り戻したりしてスタビリティを更に向上させてくれます。しかし、クルマの限界性能を引き上げる訳ではなく、あくまでもドライバーの操作を寛容化させている類のものです。限界を大幅に超えれば、到底制御しきれるものでなく、事故は起こるのです。




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