今日のこと、久しぶりにツナギを着込んで、整備工場へ出掛けた。その訳は、焼き付いてクランクロックしたエンジンの焼付の状態を現認したいがためだったのだ。
エンジン型式はふそう4M50(4気筒4,900ccディーゼル)だ。現車は既に中古エンジンに載せ替え、旧エンジンは工場の片隅に置かれていた。まずは、天井クレーンで吊りながら、横倒しにしてエンジン下面を露出させた。既にオイルパンは外されており、工場の一見ベテランそうなお方から、「オイルパン外して内部を観察したが、外したオイルパン内面に、ちらほらと小さな金属片らしきものが観察されるが、その他見える範囲で特段異状は発見出来ぬので、シリンダーが焼き付いているだろう」なんてことを宣う訳だ。しかし、拙人としては、走行開始後僅か2キロでエンジロックした状況を知っている承知しており、オーバーヒートを呈するハズもなく、シリンダーがかじりを起こしてロックする訳がないだろうと見込んだ上での判断なのだ。しかも先のオイルパン内の金属片らしいのは、流れたメタル溶損片に違いないと想像できるだろうにという見識なのだ。単なる経年素人もどき者は困ったものだと返事もせず無視して作業に掛かる。つまり、これら現象をろくに観察もしないで、シリンダーがとはよくよく知識のない者だなぁという思いだ。つまり、先に記した状況や観察される現象から、エンジンロックが生じたのは、エンジンオイルの供給量不足によるクランク系のメタル焼付に違いないと確信を持った上での今回の確認作業なのだ。
まずは、オイルパンが外れた状態で、クランク廻りの熱影響を受けた部位がないか確認してみる。現台車では4気筒なら、クランクメインベアリングは、各気筒間にベアリングを持つから5ベアリング支持となる。(L6なら7ベアリング)そして、各クランクピン部にコンロッドメタルがそれぞれ嵌合する訳だが、それぞれのベアリング固定しているキャップ部の熱変色がないかを観察するのだ。オイル供給不足で焼き付いた場合、該当メタル部は急激に高温となるから、青っぽく変色している場合が多いことを経験上知るからなのだ。しかし、今回のエンジンでは特に変色しているキャップ部はなかった。その代わり、各クランクピン近くのクランクウェブに虹状に青っぽく変色してるが、これはクランクピンの表面硬化のため、高周波焼き入れを施工した際のもので、正常なものと見受けられる。
まずは、外しやすいコンロッドメタルキャップを全気筒外して、オイルをウエスで拭って観察してみる。やはりの通り、焼付までは至っていないが、既に異常摩耗の初期状態であることが、1番および4番で観察された。ここでメインベアリングを外しに掛りたいところだが、このエンジンも現代型のセオリー通り、メインベアリングキャップがすべて連結されたラダー構造となって、シリンダーブロック下面に連続固定されている構造であることを認識した。つまり、メインベアリングキャップを外すには、メインベアリングを固定しているボルトだけでは不可能で、エンジン前後の付属品をほぼ取り外さないと不可能な構造なのだ。特に、フロント側はツインカムヘッドなのだがバルブトレインを収めたタイミングケースを外す要があり、そのためにはまずはシリンダーヘッドを外す必要があるのだ。このため、メインベアリングキャップ自体を取り外すことは作業量増大から諦め、簡単に外れる後部のクラッチやフライホイールとバックプレートだけを外し、後はメインベアリングボルトと、ブロック周辺を固定している小径ボルトを十分緩めた。その上で、後部および中央部付近のラダーフレーム端部を、大径インパクトソケットレンチを当材代わりに大ハンマーで、ブロック割れてみろというくらい打撃を与えたのだった。その結果、エンジン後部でブロック本体とラダー部の隙間が目視で0.5mmくらいまで開いた。
この状態で、クランク後部からレバーで回転を試みると、今までビクとも動かなかったクランクが、僅か(数度)だが動く感触となったことが確かめられた。すなわちエンジンロックを起こしているのは、メインベアリングの何処かに違いないということだ。
うーん焼き付きの現状を確かめられぬのは残念と、ライトで照らしながら、各メインベアリング周辺を改めて明細に観察し直してみた。その結果として、No2のメインベアリング後部の僅かな隙間だが、メタルが溶損して外側にはみ出している現状を確認したのだった。なお、同部位のベアリング装着部位の周辺も若干黒ずんでおり、発熱したのだろうという兆候も改めて判ったという次第なのだった。
原因個所も予想どおりと現認でき、分解した個所を適当に組付けなおし、横倒にしたエンジンを元通り正立させ、本日の拙人の整備士作業は約3時間ほどで終了となった。
補足
話が前後するが、そもそもこのエンジンは拙人が統括管理の業を行っている営業バスのエンジンなのだ。従前にも記しているが、該当車両は車庫を出発し、ものの2キロを走行でエンジンが停止し、エンジンが再始動不可能となったのだった。その報を聞き現場に臨場した拙人が、これはセルが壊れたかと判断し、該当向上にけん引入庫を依頼し調べた結果が、エンジンがロックしておりクランクがピクリとも回らないという報告であった。エンジンオイルはレベルゲージ末端に僅かに触れるか触れないかの程度だったという。抜き取ったエンジンオイル量は概算ではあるが6~7Lだったと報告され、規定総量としては12LがMAX量なのだが・・・。該当運転手に、オイルランプ(油圧警告灯)は点灯していなかったを問うと、点灯していなかったと述べているのだが・・・。その前日にも同車を運行しているので、運行中に時々点灯しなかったか?と問えば、それもなかったという返答なのだが、端的に良いって正直疑わしいと思っている。しかも運行前の日常点検やったのか?とだんだん拙人のボルテージも上がりつつ問うと、・・・(だんまり)だ。
統括管理(含む運行管理および整備管理)を行う拙人として、呆然となる現状を知り、該当運転車に対し「今から、日常点検の具体的研修を行う」からと宣言した次第だ。そこで、別の現車でまずはやらせてみると、いきなり点検ハンマーを探して持ち出してくるので、「君にそんなの必要ない!」と、1から順番に点検の仕方をレクチャーして行く。正直該当者のドライビングスキルは問題はないが、大前提の問題がおざなりになっているのは困ったものだと思う次第なのだ。
※写真6:文章の各部位解説。写真7:卓上でのコンロッドメタル拡大図
エンジン型式はふそう4M50(4気筒4,900ccディーゼル)だ。現車は既に中古エンジンに載せ替え、旧エンジンは工場の片隅に置かれていた。まずは、天井クレーンで吊りながら、横倒しにしてエンジン下面を露出させた。既にオイルパンは外されており、工場の一見ベテランそうなお方から、「オイルパン外して内部を観察したが、外したオイルパン内面に、ちらほらと小さな金属片らしきものが観察されるが、その他見える範囲で特段異状は発見出来ぬので、シリンダーが焼き付いているだろう」なんてことを宣う訳だ。しかし、拙人としては、走行開始後僅か2キロでエンジロックした状況を知っている承知しており、オーバーヒートを呈するハズもなく、シリンダーがかじりを起こしてロックする訳がないだろうと見込んだ上での判断なのだ。しかも先のオイルパン内の金属片らしいのは、流れたメタル溶損片に違いないと想像できるだろうにという見識なのだ。単なる経年素人もどき者は困ったものだと返事もせず無視して作業に掛かる。つまり、これら現象をろくに観察もしないで、シリンダーがとはよくよく知識のない者だなぁという思いだ。つまり、先に記した状況や観察される現象から、エンジンロックが生じたのは、エンジンオイルの供給量不足によるクランク系のメタル焼付に違いないと確信を持った上での今回の確認作業なのだ。
まずは、オイルパンが外れた状態で、クランク廻りの熱影響を受けた部位がないか確認してみる。現台車では4気筒なら、クランクメインベアリングは、各気筒間にベアリングを持つから5ベアリング支持となる。(L6なら7ベアリング)そして、各クランクピン部にコンロッドメタルがそれぞれ嵌合する訳だが、それぞれのベアリング固定しているキャップ部の熱変色がないかを観察するのだ。オイル供給不足で焼き付いた場合、該当メタル部は急激に高温となるから、青っぽく変色している場合が多いことを経験上知るからなのだ。しかし、今回のエンジンでは特に変色しているキャップ部はなかった。その代わり、各クランクピン近くのクランクウェブに虹状に青っぽく変色してるが、これはクランクピンの表面硬化のため、高周波焼き入れを施工した際のもので、正常なものと見受けられる。
まずは、外しやすいコンロッドメタルキャップを全気筒外して、オイルをウエスで拭って観察してみる。やはりの通り、焼付までは至っていないが、既に異常摩耗の初期状態であることが、1番および4番で観察された。ここでメインベアリングを外しに掛りたいところだが、このエンジンも現代型のセオリー通り、メインベアリングキャップがすべて連結されたラダー構造となって、シリンダーブロック下面に連続固定されている構造であることを認識した。つまり、メインベアリングキャップを外すには、メインベアリングを固定しているボルトだけでは不可能で、エンジン前後の付属品をほぼ取り外さないと不可能な構造なのだ。特に、フロント側はツインカムヘッドなのだがバルブトレインを収めたタイミングケースを外す要があり、そのためにはまずはシリンダーヘッドを外す必要があるのだ。このため、メインベアリングキャップ自体を取り外すことは作業量増大から諦め、簡単に外れる後部のクラッチやフライホイールとバックプレートだけを外し、後はメインベアリングボルトと、ブロック周辺を固定している小径ボルトを十分緩めた。その上で、後部および中央部付近のラダーフレーム端部を、大径インパクトソケットレンチを当材代わりに大ハンマーで、ブロック割れてみろというくらい打撃を与えたのだった。その結果、エンジン後部でブロック本体とラダー部の隙間が目視で0.5mmくらいまで開いた。
この状態で、クランク後部からレバーで回転を試みると、今までビクとも動かなかったクランクが、僅か(数度)だが動く感触となったことが確かめられた。すなわちエンジンロックを起こしているのは、メインベアリングの何処かに違いないということだ。
うーん焼き付きの現状を確かめられぬのは残念と、ライトで照らしながら、各メインベアリング周辺を改めて明細に観察し直してみた。その結果として、No2のメインベアリング後部の僅かな隙間だが、メタルが溶損して外側にはみ出している現状を確認したのだった。なお、同部位のベアリング装着部位の周辺も若干黒ずんでおり、発熱したのだろうという兆候も改めて判ったという次第なのだった。
原因個所も予想どおりと現認でき、分解した個所を適当に組付けなおし、横倒にしたエンジンを元通り正立させ、本日の拙人の整備士作業は約3時間ほどで終了となった。
補足
話が前後するが、そもそもこのエンジンは拙人が統括管理の業を行っている営業バスのエンジンなのだ。従前にも記しているが、該当車両は車庫を出発し、ものの2キロを走行でエンジンが停止し、エンジンが再始動不可能となったのだった。その報を聞き現場に臨場した拙人が、これはセルが壊れたかと判断し、該当向上にけん引入庫を依頼し調べた結果が、エンジンがロックしておりクランクがピクリとも回らないという報告であった。エンジンオイルはレベルゲージ末端に僅かに触れるか触れないかの程度だったという。抜き取ったエンジンオイル量は概算ではあるが6~7Lだったと報告され、規定総量としては12LがMAX量なのだが・・・。該当運転手に、オイルランプ(油圧警告灯)は点灯していなかったを問うと、点灯していなかったと述べているのだが・・・。その前日にも同車を運行しているので、運行中に時々点灯しなかったか?と問えば、それもなかったという返答なのだが、端的に良いって正直疑わしいと思っている。しかも運行前の日常点検やったのか?とだんだん拙人のボルテージも上がりつつ問うと、・・・(だんまり)だ。
統括管理(含む運行管理および整備管理)を行う拙人として、呆然となる現状を知り、該当運転車に対し「今から、日常点検の具体的研修を行う」からと宣言した次第だ。そこで、別の現車でまずはやらせてみると、いきなり点検ハンマーを探して持ち出してくるので、「君にそんなの必要ない!」と、1から順番に点検の仕方をレクチャーして行く。正直該当者のドライビングスキルは問題はないが、大前提の問題がおざなりになっているのは困ったものだと思う次第なのだ。
※写真6:文章の各部位解説。写真7:卓上でのコンロッドメタル拡大図