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自整業・BP業社の産業廃棄物処理費用を何故損保は認めないか?

2021-11-15 | 問題提起
自整業・BP業社の産業廃棄物処理費用を何故損保は認めないか?
 現在、自動車の廃車における処理費用については、自動車リサイクル法(H14年)でリサイクル預託金を車両使用者が予め預託する法制により一定の解決を見ている訳だが、使用過程で生じた産業廃棄物の処理費については、我が国では必ずしも法的な整理は十分でない様に思える。

 ちなみに、欧州ではいわゆるELV(End-of Life Vehicles Directive)指令の第3条(範囲)として、ELV指令の適用範囲は、ELV(廃車)のみならず、メンテナンスおよび修理によって回収された部品にも及ぶことが明記している。欧州では、メンテナンス・修理の為に回収された使用済部品の回収・リサイクルが生産者に義務付けている。

 このことは、自整業・BP業社が、事故車などの修理を行った際に生じる産業廃棄物処理費用を、修理費用の見積に計上しようとすると、その項目自体が認められないとする損害保険会社が多いことからも確かなことだと思える。

 そもそも、車両の修理によって、新しい部品もしくは中古部品により取り替えられ、残された旧損傷部品の所有権は、自動車所有者にあると解される。一方、自動車所有者はその廃棄物の中には有価物として相当の価値ある場合は、転売する等して費用を回収できる場合もあるだろうが、およそ多くの場合はそれなりの産業廃棄物処理業者に費用を負担して引き取ってもらう要がある。

 それ以前の問題として、日本の現行法では、業により生じた廃棄物は、その業の負担により処分することが明記されている。ただし、個人の生活廃棄物など業によらない廃棄物は、各地方自治体の費用で回収が行われている。(と云っても、それは市民から徴収した税金によってではある)

 さて、本論だが、何故、損保は事故車修理などの請求もしくは見積書に産業廃棄物処理費用の計上を頑なに認めようとしないのだろうか?

 あるBP業社から聴取したところ、担当する損害調査員(アジャスター)は、昨今の産業廃棄物の増加(樹脂部品の増加)やその処理費の高騰を認識しており、個人的心情としては請求自体は止むなしを意識している様だが、会社(本社)の指導方針上、その個別計上を認めないのだという。その、損保本社の論拠は、産業廃棄物処理費用は、そもそもレバーレート(もしくは指数対応単価)の中における、原価要素の一つである工場費の中に含んでいるとして、認めがたいという主張だという。

 このことを、もう少し具体的なぶっちゃけ話しとして記せば、個別損保調査員は、その産業廃棄物処理費相当の金額を、その他の板金費用とかショートパーツ費用などの項目に転嫁して計上して欲しいと云う云い方をするらしい。

 一方、損保は対物の物件損害(建築物など)の損害見積もしくは請求について、諸費用だとか産業廃棄物処理費が計上されていても、特段先の様な主張はせず支払いを行っている実態と認識している。

 ここで、損保の云うレバーレートの計算根拠となる、工場費のことだが、工場および設備の減価償却費や光熱費、通信費、事業用車の維持管理費、その他、個別の修理費としては管理して計上できない様な費用の総額を云う。これらの中には、交換済廃棄部品の管理処理費用というものも含まれているという論理は一定理解できるところではあるが、かつては廃棄物の中には、いわゆる金属廃棄物とかバッテリーなどの有価物とゴム、樹脂部品などの産業廃棄物の比率は、どちらかと云えば金属系廃棄物の方が多く、有価物と産業廃棄物を合わせて無償で引き取ってもらえる場合が多かったのだと思える。

 一方、昨今の車両は、前後バンパーは既に30年以上前から樹脂部品が当たり前になって来ていたが、昨今はそれ以外の大物蓋物パーツとして、ボンネット、リヤゲート、左右フロントフェンダーなどにまで樹脂成型品が使われる様になって来ており、樹脂部品の占める比率は格段に多くなっている。

 また、産業廃棄物の処理費も法的規制の高まりと共に、その処理コスト(輸送+処分費用)は値上がり傾向は強い。

 そんな中、この20年来、消費者物価がほとんど上昇なく、むしろデフレ傾向までを示す国内経済の動向も影響を与えているのではないかと思われるが、レバーレートもほとんど据え置かれたまま推移して来たというのが実態だと認識している。

 と云うことから鑑みるに、自整業・BP業の、産業廃棄物処理費用への負担感は高まっているのだと思える。

 なお、当件はまずは現状の問題点を提起するものであって、どうやって解消すべきが妥当な問題なのか、今後様々な監督官庁や有識者の意見を聞き、妥当と信じられる考え方を模索したと思っているところだ。

 何れにせよ、現状損保が云う、工場費に含まれているということが、法的に決まっていると云う問題ではなく、その不合理さも垣間見える中で、現状の様にただただ自整業やBP業がレバーレートの抜本的見直しもないまま、高騰化する産業廃棄物処理費を吸収し続けるのは、誠に不合理と思う次第なのだ。


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