私の思いと技術的覚え書き

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揚水発電のこと

2011-05-18 | 技術系情報
 電力需給のことが話題になっています。
 発電所内の発電機をクルマ用エンジンに例えたとします。クルマで高速道を100km/hで定速走行しようと思えば、上り坂ではスロットルを踏み込み、下り坂ではスロットルを離したり、ギヤダウンしたり、それでも足りなければブレーキを踏み込んだりするでしょう。平坦路走行中も微妙なスロットルの踏み込み具合で、エンジン出力と速度がバランスする様に無意識に操作している訳です。
 ところで発電所の負荷となる電力消費は、年間を通じての変化もあるでしょうし、平日と週末での変化や、昼と夜の変化、はたまた大きなイベントでもあれば、これまた負荷が急増すると、かなりの変動が生じるのでしょう。
 一方、末端の供給電圧や交流周波数は、なるべく変化しないことが求められるはずです。停電はしなくとも、極端な電圧低下や周波数の変化は、末端使用機器の誤作動を生じるのは間違いのないことだからです。
 このことは、発電所における発電機の回転数を、負荷の大小によらず如何に定速に保つかという要求となるでしょう。そのためには、クルマ用ターボ・エンジンにも使用されるVGターボみたいな、タービンに流れる流量を偏向させるベーンと同様な仕組みが発電機用タービンにも採用されるのでしょう。しかし、これだけでは、可変域が少なすぎて、大きな需給ギャップには対応は難しい様です。
 例えば、水力発電所であったっら、タービンに流れる水門を閉じれば、タービンは停止できます。そして、再び水門を開けば、速やかにタービン回転は立ち上がり発電は復帰できます。
 火力発電でも蒸気発生器を加熱する燃料の供給を止めれば発電は止まります。但し、昔のSLでも同様のことが記してありましたが、過剰な停止と稼働、すなわち加熱と冷却を繰り返すことは、炉の熱疲労の点から好ましいことではない様です。
 原子力発電ではどうでしょう。原電炉の稼働と停止は核燃料棒の間に配置した制御棒という中性子を吸収する棒の出し入れにより行われるそうです。すべての制御棒を挿入すれば停止し、適切かつ適度に抜けば規定の熱出力が得られるということです。この適切かつ適度にという、停止状態から臨界という規定された熱出力による連続運転状態まで持って行くことが、かなり細心の注意を払いつつ行う必用がある様です。従って、その所要時間もある程度必用となるのでしょう。ですから、原子力発電所は、止めたり動かしたりをし難い発電方式である様です。
 以上の様なことから、原発を導入している国では、まずは原発を最大限に稼働しっぱなしにしつつ、受給に応じて他の発電システムを追加稼働するというのが実態とならざるを得ない様です。
 そんな状態でも、昼間と夜間では大幅に受給ギャップが生じ、夜間は過剰な余剰電力が生み出されてしまいます。大容量のバッテリーとか、大型の燃料電池でも開発されれば、夜間の余剰電力を利用して、充電とか燃料電池用の燃料たる水素を水を電気分解して生み出すことも考えられるのでしょう。しかし、現状は未開発のものです。そんな中、ある意味電池としての機能を持った発電システムが、揚水発電と呼ばれるものです。
 揚水発電は、上池と下池という高低差を持つ2つの大容量の池(ダム)が用意され、夜間の余剰電力によって、電動駆動のポンプで下池から上池へ水を揚水します。そして、昼間の需要が生じた際に、上池の位置エネルギーを持った水を導水管を通じて落下流入させ、タービンを介して発電機器を駆動し、下池に戻すという操作を行っているそうです。
 この揚水発電というものは、100%ではないですが、その多の理由が原発稼働のための関連施設と想像されます。



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