つい先日、あるクリニックに立ち寄り、診察を待つ間、もう長らく購入したこともないクルマ関係の雑誌をパラパラとめくって過ごしながら考えたことを書き記してみたい。
そのカー雑誌は、輸入車を中心に編集されているもので、20年前と同様にドイツ車のポルシェ、ベンツ、BMWなどのハイパフォーマンス(高性能)車をベタ褒めしている下らん雑誌だ。なんで、この時代に、6.3Lのエンジンとか、最古出力400psオーバーのクルマを持ち上げるのだろうか。イタリアンスーパーカーなら理解しないでもないが、ほとほと理解に苦しむ雑誌だ。英国などは、全面的に内燃機関を追い出すと公言しており、ドイツもその影響を受けざるを得ないことが見えていながら、死の直前に咲くあだ花の如き思いを持って眺めたのだ。
今次の武漢肺炎病変は世界的に大混乱に落とし入れつつ、未だ収束していない。しかし、欧米などの病変多発国では、ピークを越えたと報もチラホラと聞かれる様になって来たのが救いだ。この病変と共に経済の落ち込みに対する懸念が高まっている。
電子デバイス製造が、一時の黄金時代を経て凋落した日本にとって、今や輸出の要たる自動車だが、日本も世界も生産プラントは、持てるポテンシャルをほぼ回復しつつある様だ。しかし、製造はできても売れなければ、生産調整しなければならない。そもそも自動車プラントは、24時間連続操業によって最大の生産効率を出せるものであって、ライン速度を落としたり、断続的にラインを稼働させることで、その効率はがた落ちとなり、製造原価は跳ね上がってしまう。
しかし、この病変における経済混乱で先の見通しが利かないことには、家やクルマと云った、高額商品、中でも高級(高額)車や高級住宅ほど、本来のポテンシャルを取り戻すまでには時間を要するとは拙人の思いだ。
ここで考えるのだが、今や日本で販売される輸入車と国産車の比率は、おおよそ10%程が輸入車となっている訳だが、当面の間輸入車ディーラーーの苦戦が続くのではないかと予想する。と云うより、既にこの病変以前から輸入車ディーラー苦戦の兆候は、チラホラと現れていたというのが実態だろう。
これは何故かと云うことだが、世界の自動車産業を大雑把に切れば、今や日本とドイツの2カ国が自動車産業の大まかを担っているのが現状となったが、そのドイツが息切れし始めている傾向が見えているからだ。
拙人の様に一定古いドイツ車の欠点も知り尽くしその美点を評価しつつ、自らの知識による工夫により維持費を国産車以下にまで抑えて乗っているという者は希有な存在だろう。一般的な者なら、その高額な維持費などに絶えかねて、とても乗り続けることのメリットは見いだせないだろう。
どうして経年ドイツ車の維持修理費が高くなってしまうのだろうかを、若干独断として書き留めてみたい。
そもそも新車価格が高い。これは、為替のこともあるのだろうが、輸入車ならではの値付け政策もあるのだろうが、製造原価の問題に帰する点が大きいだろうと想像する。つまり、ドイツ本国で買っても、高いハズだ。どうしてそう判断するのかと云えば、ドイツ車の整備を行ったり、取り外したパーツを観察してみれば、直ぐ判る問題がある。それは、まずパーツの数が日本車より多いのだ。これは部品として補給されるパーツの数ではなく、個別パーツを極限まで分解したときのパーツの数で比較しているのだ。
具体的に記して見よう。ドイツ車のインストルメントパネルやそれらの関連付属部品としての樹脂成型品だが、まずは固定するスクリューもしくはクリップの数が段違いに日本車よりドイツ車の方が多い。樹脂成型品に至っては、ドイツ車は日本車なら、射出成型の金型を工夫するなどして、1ないし2の樹脂パーツで構成できる部品を、3~5個という多数の樹脂成型品を組み合わせて作っている。
モノコックボデー本体の様子を見てみよう。鋼製モノコックボデーでは、スポット溶接が多用されるが、ドイツ車では特に強度が必用な部位など、MIG連続溶接を行うカ所が今でも残されている。これらMIG余接は限定された極一部なので、機械化されることなく手動で行っている場合が多いようだ。また、VW等ではレーザーウエルディング(線溶接)とブレージング(ろう付け)が多用されるが、これはその後の仕上げサンディングの問題と合わせ、タクトタイムの上昇となるだろう。
次に、モノコックボデーの寸法精度の問題を観察してみよう。ドイツ車のヘッドランプは、およそ3~4カ所でボルトでボデーに固定されている場合が多いが、そのそれぞれにXYZの調整代が儲けられている。また、ドイツ車のドアであるが、未だにヒンジとの間にスペーサーが入ったクルマは多い。また、ヒンジのボデー側は連続溶接で固定されるが、ドア側がボルト固定であるが、センタリングボルトでなく調整代がある。このヘッドランプとドアについて、現代日本車はヘッドライトは通常ボルトであるが、ほぼ調整代はない。また、ドアなど蓋物パーツのボルトはセンタリング式を使用し、調整代はないのだ。つまり、ボデーの寸法精度はドイツ車より日本車の方が桁違いに高い寸法精度を確立しているのだ。この寸法精度の低下は、新車組み立てラインにおけるタクトタイムを押し上げるから、当然原価アップとなる訳だ。
それと、色々な調査機関だとか個人的に見聞きする事柄からも、経年するに従う故障率(信頼性)では、圧倒的に日本車がワールドワイドにNo1に位置しているのは確かだろう。このことは、東南アジアとか中東諸国、そしてロシアなど、自動車製造の弱い国ほど、日本の経年中古車に対する評価が高い現実とも一致する。
以上述べてきた様にドイツ車は製造原価が高い、そして、自動車というユニットとしての信頼性も低い。それでも、今までは地位を保ててきたのは、そのブランド力にあったと思える。しかし、世界的な経済の冷え込みにより、安く信頼性の高いクルマのニーズは高まるだろう。その時ドイツメーカーは没落すると予想するのだ。
※補足
ドイツ車など多くの輸入車が、ドアヒンジの構造でヒンジピン抜き取りによりドア外しができる構造にしている。この様な構造は日本車ではない。これは何を示しているのだろうか。
新車プラントの組み立てでは、板金物組み立てから入り、塗装完了後に艤装ライン工程となる。この艤装ラインでは、まず最初に左右前ドア(場合によれば後部ドアも)を外す。これによって、インストルメントモジュール(エアコンユニット、ペダル、STコラム付き)の大物部品を側面から挿入する。この後のドア取り付けでは、センタリングボルトを使用の日本車では黒コートのボルトで締め付けるだけで済むが、ドイツ車などは、ドアボルトを外すと調整が崩れタクトタイムを押し上げる。その為、ヒンジピン抜き取り構造を作ることで、クリアーしているという苦肉の策なのだ。
そのカー雑誌は、輸入車を中心に編集されているもので、20年前と同様にドイツ車のポルシェ、ベンツ、BMWなどのハイパフォーマンス(高性能)車をベタ褒めしている下らん雑誌だ。なんで、この時代に、6.3Lのエンジンとか、最古出力400psオーバーのクルマを持ち上げるのだろうか。イタリアンスーパーカーなら理解しないでもないが、ほとほと理解に苦しむ雑誌だ。英国などは、全面的に内燃機関を追い出すと公言しており、ドイツもその影響を受けざるを得ないことが見えていながら、死の直前に咲くあだ花の如き思いを持って眺めたのだ。
今次の武漢肺炎病変は世界的に大混乱に落とし入れつつ、未だ収束していない。しかし、欧米などの病変多発国では、ピークを越えたと報もチラホラと聞かれる様になって来たのが救いだ。この病変と共に経済の落ち込みに対する懸念が高まっている。
電子デバイス製造が、一時の黄金時代を経て凋落した日本にとって、今や輸出の要たる自動車だが、日本も世界も生産プラントは、持てるポテンシャルをほぼ回復しつつある様だ。しかし、製造はできても売れなければ、生産調整しなければならない。そもそも自動車プラントは、24時間連続操業によって最大の生産効率を出せるものであって、ライン速度を落としたり、断続的にラインを稼働させることで、その効率はがた落ちとなり、製造原価は跳ね上がってしまう。
しかし、この病変における経済混乱で先の見通しが利かないことには、家やクルマと云った、高額商品、中でも高級(高額)車や高級住宅ほど、本来のポテンシャルを取り戻すまでには時間を要するとは拙人の思いだ。
ここで考えるのだが、今や日本で販売される輸入車と国産車の比率は、おおよそ10%程が輸入車となっている訳だが、当面の間輸入車ディーラーーの苦戦が続くのではないかと予想する。と云うより、既にこの病変以前から輸入車ディーラー苦戦の兆候は、チラホラと現れていたというのが実態だろう。
これは何故かと云うことだが、世界の自動車産業を大雑把に切れば、今や日本とドイツの2カ国が自動車産業の大まかを担っているのが現状となったが、そのドイツが息切れし始めている傾向が見えているからだ。
拙人の様に一定古いドイツ車の欠点も知り尽くしその美点を評価しつつ、自らの知識による工夫により維持費を国産車以下にまで抑えて乗っているという者は希有な存在だろう。一般的な者なら、その高額な維持費などに絶えかねて、とても乗り続けることのメリットは見いだせないだろう。
どうして経年ドイツ車の維持修理費が高くなってしまうのだろうかを、若干独断として書き留めてみたい。
そもそも新車価格が高い。これは、為替のこともあるのだろうが、輸入車ならではの値付け政策もあるのだろうが、製造原価の問題に帰する点が大きいだろうと想像する。つまり、ドイツ本国で買っても、高いハズだ。どうしてそう判断するのかと云えば、ドイツ車の整備を行ったり、取り外したパーツを観察してみれば、直ぐ判る問題がある。それは、まずパーツの数が日本車より多いのだ。これは部品として補給されるパーツの数ではなく、個別パーツを極限まで分解したときのパーツの数で比較しているのだ。
具体的に記して見よう。ドイツ車のインストルメントパネルやそれらの関連付属部品としての樹脂成型品だが、まずは固定するスクリューもしくはクリップの数が段違いに日本車よりドイツ車の方が多い。樹脂成型品に至っては、ドイツ車は日本車なら、射出成型の金型を工夫するなどして、1ないし2の樹脂パーツで構成できる部品を、3~5個という多数の樹脂成型品を組み合わせて作っている。
モノコックボデー本体の様子を見てみよう。鋼製モノコックボデーでは、スポット溶接が多用されるが、ドイツ車では特に強度が必用な部位など、MIG連続溶接を行うカ所が今でも残されている。これらMIG余接は限定された極一部なので、機械化されることなく手動で行っている場合が多いようだ。また、VW等ではレーザーウエルディング(線溶接)とブレージング(ろう付け)が多用されるが、これはその後の仕上げサンディングの問題と合わせ、タクトタイムの上昇となるだろう。
次に、モノコックボデーの寸法精度の問題を観察してみよう。ドイツ車のヘッドランプは、およそ3~4カ所でボルトでボデーに固定されている場合が多いが、そのそれぞれにXYZの調整代が儲けられている。また、ドイツ車のドアであるが、未だにヒンジとの間にスペーサーが入ったクルマは多い。また、ヒンジのボデー側は連続溶接で固定されるが、ドア側がボルト固定であるが、センタリングボルトでなく調整代がある。このヘッドランプとドアについて、現代日本車はヘッドライトは通常ボルトであるが、ほぼ調整代はない。また、ドアなど蓋物パーツのボルトはセンタリング式を使用し、調整代はないのだ。つまり、ボデーの寸法精度はドイツ車より日本車の方が桁違いに高い寸法精度を確立しているのだ。この寸法精度の低下は、新車組み立てラインにおけるタクトタイムを押し上げるから、当然原価アップとなる訳だ。
それと、色々な調査機関だとか個人的に見聞きする事柄からも、経年するに従う故障率(信頼性)では、圧倒的に日本車がワールドワイドにNo1に位置しているのは確かだろう。このことは、東南アジアとか中東諸国、そしてロシアなど、自動車製造の弱い国ほど、日本の経年中古車に対する評価が高い現実とも一致する。
以上述べてきた様にドイツ車は製造原価が高い、そして、自動車というユニットとしての信頼性も低い。それでも、今までは地位を保ててきたのは、そのブランド力にあったと思える。しかし、世界的な経済の冷え込みにより、安く信頼性の高いクルマのニーズは高まるだろう。その時ドイツメーカーは没落すると予想するのだ。
※補足
ドイツ車など多くの輸入車が、ドアヒンジの構造でヒンジピン抜き取りによりドア外しができる構造にしている。この様な構造は日本車ではない。これは何を示しているのだろうか。
新車プラントの組み立てでは、板金物組み立てから入り、塗装完了後に艤装ライン工程となる。この艤装ラインでは、まず最初に左右前ドア(場合によれば後部ドアも)を外す。これによって、インストルメントモジュール(エアコンユニット、ペダル、STコラム付き)の大物部品を側面から挿入する。この後のドア取り付けでは、センタリングボルトを使用の日本車では黒コートのボルトで締め付けるだけで済むが、ドイツ車などは、ドアボルトを外すと調整が崩れタクトタイムを押し上げる。その為、ヒンジピン抜き取り構造を作ることで、クリアーしているという苦肉の策なのだ。