? 昭和51年頃(1976年)の私が自動車整備専門学校生だった頃、初めてマイカーとして欲しくて各地を物色したクルマの思い出話を記します。
当時はスネかじりの学生の身でしたが、やはりクルマ好き故、親に拝み込んで、マイカーの入手を図ったのでした。しかし、新車を購入する様な訳にも行かず、限られた予算(30万位)という限度の中で、欲しいクルマに狙いを定めたものでした。そんな、クルマが【ホンダ1300クーペ9】でした。その魅力を感じた点は、クーペボデーのまあまあ流麗なスタイルであるということもありましたが、やはり本命はエンジンにありました。空冷1300ccの4気筒のFF車でしたが、特に9仕様は115psという当時の市販車用エンジンとしては、群を抜いた高回転高出力型エンジンだったことにあったものでした。
そんな1300クーペ9でしたが、新車の売れ行きも芳しくなかったことがあったと想像されますが、中古の玉数が少なく、特に4連CVキャブレターを装着した9仕様は、出物が見つからず物色を断念したことが思い出されます。
その後、5年位してからだったと思いますが、義兄の中古車代替えに関わる機会があり、その下取り車がこのクーペ9であり、千葉県から静岡県まで乗って帰って来た際のことが思い出されます。かなり程度の悪い状態のクルマで、低速のトルクが細く乗り難さも感じましたが、高回転側のパワー感と伸びは素晴らしいものを感じたものでした。
ところで、以前の当ブログでも記したことですが、この1300クーペにはボデー製作法での革新がありました。これはリヤフェンダー上部とルーフの継ぎ目を重ね合わせ、その跡をハンダ盛り仕上げする工法を廃し、ルーフ上部のモール部で接合する工法へと変革されたことにあります。このボデー製造工法は、現在では世界的に乗用車ボデーとしてはコンベンショナルなものとなりましたが、オリジナルはホンダにあるものです。
なお、ホンダでのこの工法の初号車は、この1300クーペではなく、その1年程以前に発表されたホンダZだということです。そして、その開発の端緒になったのは、本田宗一郎氏の「ハンダを止めろ」という指令にあったと云います。