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損保業績を概観すると共に今後の方向を想定する

2023-02-24 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
損保業績を概観すると共に今後の方向を想定する
 国内損保数はバブル崩壊と金融ビックバン(自由化)後に、各種合併とか吸収が繰り返されたりしたが、損保協会の下記ページを見ると、大手から通販系を含め29社が存在する。この中には、アイペット損害保険の様にペット保険だけをとか、レスキュー損害保険の様に、住宅の鍵、水回り、ガラスなどのトラブルを解決保証する企業が親会社で、火災保険とか傷害保険のみ行う様な比較的小規模な損害保険会社も含んでいる。

損保協会 会員会社各社の数値
https://www.sonpo.or.jp/member/gaikyou/index.html


 ここでは、メガ損保と云われる、東海日動、三井住友、損保ジャパン、あいおいニッセイ同和社(これは各社の総資産額順)を上記損保協会の2021年決算数値より読み取り、元損保調査員の視点で総括してみる。

 この4社の決算数値およびその他企業概要を示す数値を抜き出して一覧表としたのが下記表だ。

 収入保険料としてはトップの東海日動が抜きん出ているのだが、三井住友とあいおいはMS&ADとしてホールディング会社は一体化しているので、合算すると東海日動を抜く規模だ。

 損保関連の昨今の経営を報知する報道としては、22年上半期(4-9月期)で対前年マイナスが全社共通で、ある意味日本経済の不振を表しているのだろうと思える。なお、この報道後、MS&ADでは、傘下企業全体で、人員を総計7千名程度減らすと広報していたはずだ。

 ところで、損保の利益とは、本業たる保険業としては、集めた保険料収入に対して、事故が生じて支払った保険金を引いた残りが利益となる。これを損害率(ロスレシオ)と呼ぶが、実際には事業を行うための人件費とかコンピューターシステム費とか建物などの物件費などを事業費と呼ぶ。つまり、損害率に事業費率を加算したのがコンバインドレシオと呼ばれるが、この4社で概ね89~95%程度となっている。つまり、コンバインドレシオ95%と云うことは、残り5%が利益となる訳だ。

 ただし、損保も生保ほどではないが、預かった保険料収入を、支払いまでのサイトにおいて、融資とか投資とかの資産運用を行い、事業外収入を得ているのだが、全国の銀行が低迷しているのと同様、なかなか資産運用益も低迷せざるを得ないところがある。

 それと、この表では表れていないが、利益には国内と海外の利益に分かれるが、特に東海日動などは、既に利益の50%以上を海外利益で得ているとのことを車頭談話として話しており、3位に付ける損保ジャパンなども、早期に海外利益で50を越えたいということを述べている。つまり、国内景気は、新車の販売台数が低迷している様に、ぜんぜん景気は悪く、伸びる余地がないことを示している。

 今、日本の製造業としては自動車などは、国内より圧倒的に海外生産が多くなっているのだが、これは車両メーカーだけでなく、その協力メーカーも海外工場を保有しつつ海外投資で利益を上げているのだ。想像だが、損保の海外投資も、この海外進出の製造業に合わせ海外売上を増やして来たのだと想像できる。

 既に2月も月末に向かい、3月末の決算時期も近いのだが、損保の22年決算は、良くて対前年イーブン、おそらくマイナスとなるのではないだろうか。

 こういう中で、既に各損保では22年総括をほとんど終えつつ、23年度事業計画の策定に入っているハズだが、核は火災保険の損害率悪化をどうやって食い止めるかと、事業費を何処まで圧縮できるかに掛かっている様に思える。

 まず、火災保険だが自然災害が世界的に増えつつ、再保険料の値上げという問題があるのだが、国内的には22年にさほどの大きな自然災害はないのだが、そもそもNetCMで散見される様に火災保険で給付金をもらえるかの、不正請求を促す業者の多発を今までの様に、注意喚起程度の生ぬるいやり方では、ますます契約者モラルの頽廃が進むのではないかと思える。安易に保険料率を上げ、多くの善意の契約者に保険料値上げで影響を与えないで、不正な業者を告発するなり排除して行かねばならないはずだ。

 事業費圧縮では、現在の物価高騰では、既に大企業各社では、人件費アップに踏み切っており、損保としてもその方向を無視はできないだろう。でないと、優秀な人材が流出すると共に、新規従業員の獲得が困難となる。

 人員関係では、この表を見ると、損保ジャパンの営業店数、サービス拠点、人員は明らかに多過ぎると見える。また、この表では最小規模のあいおいについても、同様のことが云える。なお、あいおいについては、自動車保険の占有が、他損保より8~10ポイントも高いという自動車依存が見えるのだが、このことが収保の割に代理店数が多いということに結び付いている様に思える。

 この損保代理店については、もう20年ほど前から小さい規模の代理店を統合してまとめるということがすべての損保で行われてきたのだが、あいおいの場合、損保専業のプロ代理店に対する首里工場などの兼業代理店が多く統合が難しいという問題があるのではないだろうか。この辺りは、昨年、確かあいおい、東海も含めた、中核代理店という代理店の中で、従来の損保営業担当者の成り代わって、他の代理店を指導していく制度の模索が始まっているのだが、これにより本体社員の大幅減を営業店とサービス拠点減と合わせて打ち出してくるのではないだろうか。


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