私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

作業の余裕率とは

2020-09-29 | コラム
 およそ世のプロダクション企業においては、工数だとか指数だとか、車両メーカーなどはタクトタイムという概念で、標準的な時間を策定(設定)している。特にマスプロダクションとして大規模になるほど、この設定が工場全体の稼働率を大きく左右することになる。つまり、トヨタなどのメーカー製造ラインにおいて、縦に並んだラインの各部でそれぞれの作業(タクト)を分担しているが、個別タクトが一様な時間になっていないと、あるタクトは間に合わずラインを停止させ、またあるタクトは手持ち無沙汰でやることがないと云う状態になるから、工場全体として能率が低下するということになる。だから、自動車の製造ラインにおけるタクトタイムは、かなり精度良く、各タクトで一致する様に合わせ込みがなされているはずだろう。

 ところが、アフターサービスとなる修理工場だとか板金工場となると、そもそも標準条件の一致が困難だとか、個別作業の連続した合計としての総量が大きくなるなどして、なかなか標準時間の適正値の設定は難しさを生じることになってくる。

 ところで、一般的な標準作業時間の組立としては、以下の様になる。

標準作業時間(指数もこれに準じる)=準備作業時間①+正味作業時間②+余裕時間③

①準備作業時間とは、その作業を行うための、車両の移動、工具の準備、必用部品の準備、廃棄など。

②正味作業時間とは、標準的な車両を標準的な作業者が、目的の作業を遂行している時間。

③余裕時間とは、正味作業を遂行し続けるために、必用な時間として以下の様なものがある。
・職場余裕 作業の指示、打ち合わせなど工場管理上必要となる時間
・作業余裕 不特定に落とした部品や工具を拾うとか、部品を清掃するなど
・疲労余裕 継続した作業の中で、作業進捗の低下や一時の小休止
・用達余裕 人としての生理的な対応時間(トイレや喉の潤し、汗拭きなど)

※ここで上げたのは(株)自研センターの指数の解説から抜き出したもので、同センターでは余裕時間(率)として、正味作業時間の30%としているとある。

 この余裕時間も工場の環境だとか、管理の非効率によって変動する余地が出てくる。例えば、工具のドリルキリとかソー刃が折れたり切れなくて替えるとか、そもそも工具の具合が悪いとか、ジャッキが1つしかなくて、他に使用中で待つ、天井クレーンを使用したいが、他で使用中で待つなども、職場余裕とか作業余裕になるだろう。この、余裕率をNetで調べると、軽作業10%、中作業20%、十作業30%と記してあるものもあるが、この余裕率とは該当の単一作業だけを対象とするものでなく、勤務時間の終日の中で分析付加すべきものあろう。

余話
 現在の労働環境だけでなく社会環境を50年前と比べて見たとき、一見物質的には豊かに便利になった様だが、心はくたびれ世の中が暗くなって来ていることは核心を持って云える。ある精神病理学者は、現在のに日本人の精神的病理は、バブル崩壊による経済的なものだけが原因ではないと持論を述べている。その動きは、それ以前1970年代初頭には芽生えていたと述べているのだ。このことの原因として、これは私見であるが、世の中全体が余裕という欠かせてはならぬことを、効率化だけの元に潰し過ぎてきたからだと理解しているのだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。