横転事故と車両火災の関係への疑問
世にイタルダという交通事故の集計分析機関がある。
※公益財団法人交通事故総合分析センター(Institute for Traffic Accident Research and Data AnalysisよりITARDA(イタルダ)と呼称している。HP:https://www.itarda.or.jp/
このイタルダの中に「No.143横転事故例から見る重傷化事故の特徴」という記事がある。ここで、様々な交通事故形態の中で、横転(完全な転覆を含むだろう)事故が、どの程度の割合を持つのかを示したのが、下記の表となる。(表1)
これからすると、全事故形態で11%、最も多いのは車両単独事故の21%で、次いで多いのは側面衝突(出合い頭事故など)の14%だと判るが、これは長年交通事故を知見して来た筆者の感じるところとして違和感はない。
ところで、横転事故と車両火災の複合する事故は、経験上から云っても、必ずしも多い訳ではないことを知見しているところだ。しかし、交差点で出合い頭衝突した結果、一方の車両が横転し滑走して停止したが、該当車は大きな火炎に包まれ、搭乗者4名が全員死亡するという悲惨な事故が今年(2023年)1/2に福島県郡山市で発生している。しかも、この事故、事故から僅か3カ月を経た4/10には福島地検で1審判決として、加害運転車に懲役3年(実刑)が下され、同運転車は控訴しない様子と報じられている。
不幸にして生じた交通事故による横転は致し方ないにしても、火災が生じて、しかもその火災の生じ方が異常に早い強い火炎の状況で乗員4名が脱出もしくは救出できなかったという、交通事故には日頃関心強く眺めて来た筆者にとって、ある意味あまり聞いたことがない得意な事故である。それが、事故からたったの3カ月で断を下された。そこには、何か見落とされた要素はないのだろうかというのが筆者の思いだ。そんな筆者の疑問を国土交省・自動車不具合ホットラインに報告した内容を以下に紹介したい。
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本事故は国交省ホットライン(受付番号23010509000119)に1/15付けて報告した車両横転火災の事故の件です。
1/5付け報告内容
表題:1/2、福島県郡山市大平町の市道交差点で、乗用車と軽乗用車が出会い頭に衝突し、軽乗用車が横転、炎上し、軽乗用車のら運転者を含め乗員4人名が死亡した事故について
内容:この事故ですが、私は過去40年様々な交通事故調査に関わって来ましたが、信号など交通整理のされていない交差路における出合い頭事故と云うのは、事故形態として最も多いものと知見しています。
本事故の様に乗用車同士(片側は軽乗用)の事故で、本事故による双方車両の衝突変形はさほど大きくもなく、被害軽乗用車は横転したと云え、比較的車高の高い軽乗用車の後部付近に衝突を受けた場合には、横転する事故に至る事例も少ないものでもありません。
しかるに、被害軽自動車の乗員4名全員が脱出もしくは外部から救出できない程、急速に車両火災の延焼が拡大したこと(おそらくガソリン燃料の大量流出が生じたこと)を、40年過去経験から特異な事故と見ているのです。
私が知る、販売車の型式指定における保安基準の試験としては、被験車両後部から他車を追突させ燃料漏れを生じないかを確認する程度のものと承知していますが、これだけでは今回の様な側面衝突とか横転事故における燃料漏れの試験としては不足している様にも感じられます。もちろん、あらゆる事故形態での試験を行
うことは不可能かつ不合理であると承知しますが、ある程度の広い視野で事故を見つめ、燃料漏れすなわち人の死に直結すべき車両構造の確認による型式指定の許諾をして戴きたいと願うものです。
なお、本件は、報道情報によれば、被害軽自動車はスズキワゴンR・4WD仕様の様ですが、念のため貴省担当官にて、該当車両メ-カ-及び該当捜査警察署にご連絡を取り、本件車両がどうして大量燃料漏れを生じたのか、その車両構造などに不備と考えられる要素がなかったのか確認して欲しいと思います。
また、この私の見解は、以下のブログ文にてまとめてありますので、参照して戴きますれば、幾らかは参考となる点もあろうかと思います。
郡山・乗用車同士が出合い頭事故で被害軽乗用が横転火災で4名焼死
2023-01-04 | 事故と事件
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/fb1a437fa0faa075eb6bb4b42b7bf702
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本件で注目して戴きたいのは参考ファイル1に含まれる3枚目の火災鎮火直後と想定できる報道画像です。
報道写真で写されている、リヤアクスル前部の物体ですが、その底面のプレス形状の一致などより、参考ファイル2で示す燃料タンクに間違いないものと判断します。それが、タンク左側面を大きく変型させると共に、その取り付け位置すら大きく車両中央部に移動させていることが見て取れます。
ここまでタンク本体が圧壊知れば、大量のがソリンが転倒車両下部に流出し、発火した火炎は車両を大きく包み込み、乗員4名が自力脱出することも、付近の者が救出することもできなかった理由が想像できます。
なお、この燃料タンクの圧壊と移動ですが、道路の縁石により生じたという可能性への理由付けも考えられますが、私は以下の理由によりそれを否定します。
そもそも該当車の横転は衝突直後に左後輪部に大入力を受けることで、該当車は左廻りのスピンをしつつ、車体後部を持ち上げつつ、横転滑走し縁石を残り越えたと他リヤアクスルのデフとプロペタシャフトの相対位の事故例も知りつつ想定します。
該当車の左後輪への衝突による横入力は、該当車リヤアクスル位置を固定するラテラルロッドにより位置を規制されますが、ラテラルロッドの車体側受け止め部位は脆弱で、強い押し過重に耐えられず、断裂破壊した可能性を強く疑います。
これにより、リヤアクスルの横移動はリヤトレーリングアームの横捻り変型を生じ、このアームの横捻り変型が燃料タンクの圧壊変型と位置移動を生じさせたと想定できます。
また、参考ファイル1の沈下直後の写真で、先の燃料タンクの圧壊と移動だけでなく、4WDリヤアクスルのデフとプロペタシャフトの相対位置のズレとして、リヤアクスルが右廻りに変位している状態が見て取れます。このことは、リヤトレーリングアームとリヤアクスルの弾性結合部位(ゴムブッシュ入り結合)を断裂させていることを想像させます。
世にイタルダという交通事故の集計分析機関がある。
※公益財団法人交通事故総合分析センター(Institute for Traffic Accident Research and Data AnalysisよりITARDA(イタルダ)と呼称している。HP:https://www.itarda.or.jp/
このイタルダの中に「No.143横転事故例から見る重傷化事故の特徴」という記事がある。ここで、様々な交通事故形態の中で、横転(完全な転覆を含むだろう)事故が、どの程度の割合を持つのかを示したのが、下記の表となる。(表1)
これからすると、全事故形態で11%、最も多いのは車両単独事故の21%で、次いで多いのは側面衝突(出合い頭事故など)の14%だと判るが、これは長年交通事故を知見して来た筆者の感じるところとして違和感はない。
ところで、横転事故と車両火災の複合する事故は、経験上から云っても、必ずしも多い訳ではないことを知見しているところだ。しかし、交差点で出合い頭衝突した結果、一方の車両が横転し滑走して停止したが、該当車は大きな火炎に包まれ、搭乗者4名が全員死亡するという悲惨な事故が今年(2023年)1/2に福島県郡山市で発生している。しかも、この事故、事故から僅か3カ月を経た4/10には福島地検で1審判決として、加害運転車に懲役3年(実刑)が下され、同運転車は控訴しない様子と報じられている。
不幸にして生じた交通事故による横転は致し方ないにしても、火災が生じて、しかもその火災の生じ方が異常に早い強い火炎の状況で乗員4名が脱出もしくは救出できなかったという、交通事故には日頃関心強く眺めて来た筆者にとって、ある意味あまり聞いたことがない得意な事故である。それが、事故からたったの3カ月で断を下された。そこには、何か見落とされた要素はないのだろうかというのが筆者の思いだ。そんな筆者の疑問を国土交省・自動車不具合ホットラインに報告した内容を以下に紹介したい。
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本事故は国交省ホットライン(受付番号23010509000119)に1/15付けて報告した車両横転火災の事故の件です。
1/5付け報告内容
表題:1/2、福島県郡山市大平町の市道交差点で、乗用車と軽乗用車が出会い頭に衝突し、軽乗用車が横転、炎上し、軽乗用車のら運転者を含め乗員4人名が死亡した事故について
内容:この事故ですが、私は過去40年様々な交通事故調査に関わって来ましたが、信号など交通整理のされていない交差路における出合い頭事故と云うのは、事故形態として最も多いものと知見しています。
本事故の様に乗用車同士(片側は軽乗用)の事故で、本事故による双方車両の衝突変形はさほど大きくもなく、被害軽乗用車は横転したと云え、比較的車高の高い軽乗用車の後部付近に衝突を受けた場合には、横転する事故に至る事例も少ないものでもありません。
しかるに、被害軽自動車の乗員4名全員が脱出もしくは外部から救出できない程、急速に車両火災の延焼が拡大したこと(おそらくガソリン燃料の大量流出が生じたこと)を、40年過去経験から特異な事故と見ているのです。
私が知る、販売車の型式指定における保安基準の試験としては、被験車両後部から他車を追突させ燃料漏れを生じないかを確認する程度のものと承知していますが、これだけでは今回の様な側面衝突とか横転事故における燃料漏れの試験としては不足している様にも感じられます。もちろん、あらゆる事故形態での試験を行
うことは不可能かつ不合理であると承知しますが、ある程度の広い視野で事故を見つめ、燃料漏れすなわち人の死に直結すべき車両構造の確認による型式指定の許諾をして戴きたいと願うものです。
なお、本件は、報道情報によれば、被害軽自動車はスズキワゴンR・4WD仕様の様ですが、念のため貴省担当官にて、該当車両メ-カ-及び該当捜査警察署にご連絡を取り、本件車両がどうして大量燃料漏れを生じたのか、その車両構造などに不備と考えられる要素がなかったのか確認して欲しいと思います。
また、この私の見解は、以下のブログ文にてまとめてありますので、参照して戴きますれば、幾らかは参考となる点もあろうかと思います。
郡山・乗用車同士が出合い頭事故で被害軽乗用が横転火災で4名焼死
2023-01-04 | 事故と事件
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/fb1a437fa0faa075eb6bb4b42b7bf702
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本件で注目して戴きたいのは参考ファイル1に含まれる3枚目の火災鎮火直後と想定できる報道画像です。
報道写真で写されている、リヤアクスル前部の物体ですが、その底面のプレス形状の一致などより、参考ファイル2で示す燃料タンクに間違いないものと判断します。それが、タンク左側面を大きく変型させると共に、その取り付け位置すら大きく車両中央部に移動させていることが見て取れます。
ここまでタンク本体が圧壊知れば、大量のがソリンが転倒車両下部に流出し、発火した火炎は車両を大きく包み込み、乗員4名が自力脱出することも、付近の者が救出することもできなかった理由が想像できます。
なお、この燃料タンクの圧壊と移動ですが、道路の縁石により生じたという可能性への理由付けも考えられますが、私は以下の理由によりそれを否定します。
そもそも該当車の横転は衝突直後に左後輪部に大入力を受けることで、該当車は左廻りのスピンをしつつ、車体後部を持ち上げつつ、横転滑走し縁石を残り越えたと他リヤアクスルのデフとプロペタシャフトの相対位の事故例も知りつつ想定します。
該当車の左後輪への衝突による横入力は、該当車リヤアクスル位置を固定するラテラルロッドにより位置を規制されますが、ラテラルロッドの車体側受け止め部位は脆弱で、強い押し過重に耐えられず、断裂破壊した可能性を強く疑います。
これにより、リヤアクスルの横移動はリヤトレーリングアームの横捻り変型を生じ、このアームの横捻り変型が燃料タンクの圧壊変型と位置移動を生じさせたと想定できます。
また、参考ファイル1の沈下直後の写真で、先の燃料タンクの圧壊と移動だけでなく、4WDリヤアクスルのデフとプロペタシャフトの相対位置のズレとして、リヤアクスルが右廻りに変位している状態が見て取れます。このことは、リヤトレーリングアームとリヤアクスルの弾性結合部位(ゴムブッシュ入り結合)を断裂させていることを想像させます。