私の思いと技術的覚え書き

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日本刀を眺める

2008-11-20 | 沼津そして伊豆周辺

 近隣の博物館で日本刀の特別展が開かれていることを知り、興味を持って訪れてみました。

 日本刀の製造法としては、「たたら吹き」という古来の製綱法で砂鉄から玉鋼(たまはがね)という純度高い鉄を生み出し、それを素材として繰り返しの折り曲げと打撃による鍛造によってなされている程度の知識はありました。

 その様な程度の知識を持ち、今までも何気の機会を日本刀を見て来たのだと思いますが、今回の展示で見た名刀とされる作品は、やはり格が違うものと感じられました。「正宗」や「村正」と云った名刀とされる作品は、素人目に見てもやはり品格が漂うものと感じられました。しかし、何処が、どの様に違うと云うまでの評価ができる様な、刀剣に関する鑑定眼は私のはありません。でも、やはり日本刀特有の刃紋(はもん)という刃に沿うように視認される模様ですが、これは神秘的にさえ感じらてしまいました。

 日本刀は、これが鋼の地金なのかと思うが如くの輝きと持っています。そして、刃紋部分は鈍く輝きを持たない状態です。これが日本刀ではなく、何らかの平板の素材でこの様な視覚として認識できたとすれば、それは平板表面のアンジレーションがなせる研ぎ際での、例えてみれば塗膜剥離でのフェザーエッジの様なものと認識なされるのかもしれません。しかし、刀の刃紋上部となる本体部分の平滑度が低いということではなく、刃紋部分は粒子が明らかに粗く組織が異なることが見て取れます。そして、刃紋の境界線はクッキリと明瞭なものではなく、徐々に組織が変化していることが見て取れます。

 ところで、刃紋の形は刀それぞれで違います。中には、ほとんど刃紋というより直線的な境界線を持つ刀もありました。そんなことが気になり、帰宅してからネットで調べてみました。

 刀は成形後に焼き入れなされる訳なのですが、刃紋の境界線を境に上部となる部分は粘土を塗ってから加熱し、その後に刀全体を急冷するのだそうです。ですから、粘土部分は急冷効果が低く、刃紋部分は急冷されて高い焼き入れ状態となるとのことです。そして、刃紋の境界を描くライン(粘土の盛り際)は刀工の趣向によってある程度得られている様なのです。

 なお、合わせて知ったことですが、日本刀特有の弓形の「そり」ですが、この焼き入れの時に生み出されるのだそうです。焼き入れ後に、焼き戻しという熱処理を行う様ですが、これは想像ですが、「そり」により生じた残留応力を除去するためのものなのかもしれません。

 ところで、この様な日本刀がもし年間100万のオーダーでの需要があると仮定したとしましょう。トヨタ辺りなら鋼材メーカーと協調し、大型専用工作機械を開発導入し、少なくとも機能(切れ味や折れにくさ等)は、もっと優れたものを、たちまち低下価格な商品として生み出してしまうでしょう。

 しかし、その様な大量生産による日本刀が生み出されたら、そんな日本刀に魅力を感じる愛好家はいないでしょう。日本刀とは、特に大型設備や高精度な計測機器も使用せず、ほとんど人間の技能(経験と勘と労力)によってのみで生み出される製品(作品)というところに魅力があるのでしょう。

追記

 私は日本刀自体に執着するつもりはありませんが、もし切れ味鋭い一振りを入手できたとすれば、実際に切って試して見たいという気持が芽生えるのかもしれません。そして、そんな場合に切り試したい対象として、少なくとも6名のモノ(人でなくモノと私には思えます)が思い浮かんでしまいます。(笑)




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