最近見た週刊文春の記事で、セイコー社の腕時計で、その価格が1,575万円(税込)で年産たったの5個という製品があるのを知り驚きました。
それも価格が高いのは、金無垢の削り出しボデーを使用しているだとか、文字盤等にダイヤを散りばめたりしているというものではないのです。機構としては、ゼンマイバネを動力源とした、純機械式の時計での話なのです。今やクォーツ式時計が当たり前で、例え数千円の時計でさえ、十分な精度を生み出せる現代において、その様な機械式時計であって、クォーツ式を上回る精度を生み出しているのだそうです。その価格の理由は、一流時計職人が丹念に時間を要してこそ、生み出せるものだと知り改めて、その価値の素晴らしさを感じます。
ネットで調べた記事によれば、その製造には部品製造に7ヶ月、組立に1ヶ月の合計8ヶ月を要していると云います。ですから、単純に1人で製作したとして計算すれば、およそ1,300時間を要していることになります。仮に材料費を適当に除外したとしても、時間当たり1万円程度のマン/アワーレート(時間当たりの売上額)ですから、思いの他に高いものではないと感じられます。
このモデルは、メーカーの技術力を示すフラッグシップとしてのものでしょうから、利益は度外視しているのでしょう。しかし、現在、マネーファンド等を筆頭に、ほとんど労力に関係なく法外な利益を生み出している虚業としての企業が多いのが実態なのですから、そんな中にあってもの作りを追求する企業姿勢は大事なことと感じます。私が、特に腕時計に愛着や価値はあまり感じてはいませんが、この様な製品を生み出すことのできる職人というものに、改めて価値を感じつつこの週刊文春の記事を読みました。