1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報その4
今日(10/14)夕刻の報道では、事故現場の200mほど手前に当該バスのものと断定はされないが、制動痕かローリング痕らしきタイヤ痕が路面にあること。そして、このタイヤ痕の全部なのか一部なのか不明だがセンターラインを越えている可能性があることなどを知らせている。何れにしてもフェードが起きていた可能性は高いだろう。
実のところ、当方は損保調査員として通算20年以上、この様な単独車両事故も含め、さまざまな事故調査をして来た。そして、損保離職以降も関連調査を行うこともあるのだが、ある零細ではあるが小規模な観光バス企業(正式には一般貸切旅客運輸会社)で運行管理者および最上位職となる安全統括管理者として数年を過ごしたことがあるのだ。2年前のコロナ勃発で、該当バス会社は事業継続を断念し、現在はその職を離れているが、およそバス会社の実務とか管轄当局(各地方運輸支局)との対応などを経験して来た。そんなバス会社の指揮管理において、この道40年を越える複数のドライバー兼運行管理経験者とも多くの対話を行って来て知るのだが、今回のクラブツーリズムのツアーバスだが、想像を含むが1台口ではなく3台口(もしくは4台口)での運行であった様に想像している。
この様な複数台のツアーとなる場合、その走行順位は、およそその3ないし4台が同一バス企業なら、運行管理者や運転者間で打ち合わせ順位を決めるが、多くの場合先頭を走るドライバーに最ベテランとなる場合が多いと云えそうだ。
また、複数台ツアーバスでは、もし先頭に不慣れなドライバーなどであっても、今回の場合の様に下る速度が速いとかを後方のベテランドライバーが知れば、無線で「ペースを落とせ!」と警告できた可能性もある。
しかし、クラブツーリズムは大手旅行会社でツアープランを仕切るのだが、3台口でもすべてが同一のバス会社とは限らないことが想像できる。この様に別会社が複数台ツアー運行する場合、バス同士の運行中のコミュニケーションができないし、走行順序が不適当な事態になった可能性が背景にないかを想像させるのだ。
営業バス企業はその運行台数上限を実蹟で規制されるが、開業当初とか零細な場合でも最低台数が3台以上という規定もある。つまり、クラブツーリズムの同一ツアーでも、そのすべての運行バス会社が同一とは限らないのだ。この様な複数社のバス会社であった場合、当初から関連各社運行管理者がツアーバスの順列までを打ち合わせている場合は少ない様に思える。となると、出発時点で合流した短時間の中で、多くの場合に際ベテラン者が先頭を走ることになる場合が多いと思えるが、今回事故の運転手は26才とおよそベテランとはいえない。下記報道文でも、富士山五合目へ登る際も、おそらく事故車後続車の乗客は、異様に遅いペースで走っていたと述べている様だが、そもそもこの「ふじあざみライン」は急登坂で、大型バスでは実質的な発進時使用ギヤ段となる2速でないと五合目に近づくほど登れないほどの急傾斜となっているので、そもそも登坂時は速度は出せないのだ。
しかし、2速で登った坂は2速で下るが下り左右ワインディグ路の走行の基本で、高位ギヤ段に入れ速度を上げたペースの速い運転をすると、カーブ手前で制動、ちょっとブレーキを離して次のカーブで制動と制動という運転が10分も続けば、ブレーキ装置の摩擦体の熱容量は飽和し、その温度は400℃を超える。こうなると、数分ブレーキを開放したまま走行できればフェードは回復できるが、それができぬ場合に「ブレーキが効かない!」となるのだ。
このフェード現象による大型バストラの事故は、昔から結構起きていて、以下に2019年の神戸と熱海の事故例を紹介しておく。神戸の件は、私の想像だが、最終的にドライバーの覚悟で故意に道路脇の用水路へ転落させ死亡したと想像している。また、熱海の大型LPGガス20kL車の事故だが、先月9月末に豊田ジャンクションで生じたガスボンベ多数の炎上事故があったが、もしタンクからガスが漏れていたら、辺り周辺半径50mを爆風で吹き飛ばす様な、おそらく500キロ爆弾が爆発した様な状態を起こしていた可能性すらある。
ブレーキフェードの恐怖 2022-04-07
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/804f33d229a6d56b3eeb02e318baad9e
神戸トラック暴走 その7 2019-09-12
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/bdda7f106f8375d40053d2dff31d508c
今日の熱海の事故 2018-08-08
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/9dcdc8297797d48e1282c0750682c591
元記事 1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/bd7b2684dcee58dbed971604787f54a0
1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/05f21e7106f93614a94d1ef16dafa397
1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報その2
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/9b1b6017a4c4a449b90a1fc0f20d277b
1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報その3
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/eacc4aaec72ccadc74fd3dff18ec9eb7
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観光バス横転 運転手は“事故コース”を初めて運転
200m手前からブレーキに異変?フェード現象か 事故前のバス「異常に遅かった」 観光バス横転事故
イット!
FNNプライム 2022年10月14日 金曜 午後7:30
10月13日午前11時50分ごろ、富士山の5合目から出発する通称「ふじあざみライン」の下り車線で事故は起きた。
乗客34人を乗せたバスが道路脇ののり面に乗り上げ横転。乗客の枝川恵美子さん(74)が死亡し、女性客3人が重傷を負った。
枝川さんは事故の前日、今回のツアーについて話していた。
枝川さんの次男:昨日顔を合わせたときに「あした富士山の方にバスツアーで旅行に行くよ 行ってくるからね」と聞いていまして、私も「そうなんだ じゃあ気をつけてね」とそれが最後になった
200m手前からブレーキに異変 原因はフェード現象
10月14日、新たにバスは少なくとも200m手前からブレーキに何らかの異常が出ていた可能性があることが分かった。
異常が出たとみられる付近を取材すると、センターラインをはみ出た痕跡が複数残っている。
これがバスのタイヤ痕だとすると、事故現場の200m手前からブレーキが利かないなど異変が起きていた可能性があるという。
現行犯逮捕された運転手の野口祐太容疑者(26)は調べに対し「ブレーキが利かなくなった」と話している。
この証言のようにブレーキが利かなくなった場合に考えられるのが「フェード現象」。
下り坂が連続する道でブレーキを何度も踏んだ場合、ブレーキパッドとディスクが過熱し、摩擦力が急激に減少。そのため、ブレーキの利きが悪くなるという。
地元のバス運行会社によると、ふじあざみラインは周辺の道に比べ一番勾配がきついという。
そのため、初めてこの道を運転するドライバーには指導者が立ち会い、最低3往復の研修を行うとしている。事故を起こしたバスの運行会社によると、運転手の野口容疑者はこの日、初めてふじあざみラインを運転したという。
「異常に遅かった」目撃者が語るバスの違和感
事故が起きる前にこのバスを目撃した人はその運転に違和感があったと話す。
事故前にバスを目撃した人:行くときも前にそのバスがいたんです。そのバスがすごく遅くて「なにこのバス遅いね」って言いながら(後ろを)ついていったんですけど。(バスの運転手は)山道は初めてだったのか、それともゆっくり走らないといけないっていうあれだったのか。異常に遅くって上っていくときが…
警察は14日朝、事故を起こしたバスの運行会社を家宅捜索。車両の機器やドライブレコーダーなどを解析し、当時の状況を調べている。(「イット!」10月14日放送より)
今日(10/14)夕刻の報道では、事故現場の200mほど手前に当該バスのものと断定はされないが、制動痕かローリング痕らしきタイヤ痕が路面にあること。そして、このタイヤ痕の全部なのか一部なのか不明だがセンターラインを越えている可能性があることなどを知らせている。何れにしてもフェードが起きていた可能性は高いだろう。
実のところ、当方は損保調査員として通算20年以上、この様な単独車両事故も含め、さまざまな事故調査をして来た。そして、損保離職以降も関連調査を行うこともあるのだが、ある零細ではあるが小規模な観光バス企業(正式には一般貸切旅客運輸会社)で運行管理者および最上位職となる安全統括管理者として数年を過ごしたことがあるのだ。2年前のコロナ勃発で、該当バス会社は事業継続を断念し、現在はその職を離れているが、およそバス会社の実務とか管轄当局(各地方運輸支局)との対応などを経験して来た。そんなバス会社の指揮管理において、この道40年を越える複数のドライバー兼運行管理経験者とも多くの対話を行って来て知るのだが、今回のクラブツーリズムのツアーバスだが、想像を含むが1台口ではなく3台口(もしくは4台口)での運行であった様に想像している。
この様な複数台のツアーとなる場合、その走行順位は、およそその3ないし4台が同一バス企業なら、運行管理者や運転者間で打ち合わせ順位を決めるが、多くの場合先頭を走るドライバーに最ベテランとなる場合が多いと云えそうだ。
また、複数台ツアーバスでは、もし先頭に不慣れなドライバーなどであっても、今回の場合の様に下る速度が速いとかを後方のベテランドライバーが知れば、無線で「ペースを落とせ!」と警告できた可能性もある。
しかし、クラブツーリズムは大手旅行会社でツアープランを仕切るのだが、3台口でもすべてが同一のバス会社とは限らないことが想像できる。この様に別会社が複数台ツアー運行する場合、バス同士の運行中のコミュニケーションができないし、走行順序が不適当な事態になった可能性が背景にないかを想像させるのだ。
営業バス企業はその運行台数上限を実蹟で規制されるが、開業当初とか零細な場合でも最低台数が3台以上という規定もある。つまり、クラブツーリズムの同一ツアーでも、そのすべての運行バス会社が同一とは限らないのだ。この様な複数社のバス会社であった場合、当初から関連各社運行管理者がツアーバスの順列までを打ち合わせている場合は少ない様に思える。となると、出発時点で合流した短時間の中で、多くの場合に際ベテラン者が先頭を走ることになる場合が多いと思えるが、今回事故の運転手は26才とおよそベテランとはいえない。下記報道文でも、富士山五合目へ登る際も、おそらく事故車後続車の乗客は、異様に遅いペースで走っていたと述べている様だが、そもそもこの「ふじあざみライン」は急登坂で、大型バスでは実質的な発進時使用ギヤ段となる2速でないと五合目に近づくほど登れないほどの急傾斜となっているので、そもそも登坂時は速度は出せないのだ。
しかし、2速で登った坂は2速で下るが下り左右ワインディグ路の走行の基本で、高位ギヤ段に入れ速度を上げたペースの速い運転をすると、カーブ手前で制動、ちょっとブレーキを離して次のカーブで制動と制動という運転が10分も続けば、ブレーキ装置の摩擦体の熱容量は飽和し、その温度は400℃を超える。こうなると、数分ブレーキを開放したまま走行できればフェードは回復できるが、それができぬ場合に「ブレーキが効かない!」となるのだ。
このフェード現象による大型バストラの事故は、昔から結構起きていて、以下に2019年の神戸と熱海の事故例を紹介しておく。神戸の件は、私の想像だが、最終的にドライバーの覚悟で故意に道路脇の用水路へ転落させ死亡したと想像している。また、熱海の大型LPGガス20kL車の事故だが、先月9月末に豊田ジャンクションで生じたガスボンベ多数の炎上事故があったが、もしタンクからガスが漏れていたら、辺り周辺半径50mを爆風で吹き飛ばす様な、おそらく500キロ爆弾が爆発した様な状態を起こしていた可能性すらある。
ブレーキフェードの恐怖 2022-04-07
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/804f33d229a6d56b3eeb02e318baad9e
神戸トラック暴走 その7 2019-09-12
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/bdda7f106f8375d40053d2dff31d508c
今日の熱海の事故 2018-08-08
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/9dcdc8297797d48e1282c0750682c591
元記事 1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/bd7b2684dcee58dbed971604787f54a0
1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/05f21e7106f93614a94d1ef16dafa397
1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報その2
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/9b1b6017a4c4a449b90a1fc0f20d277b
1013 ふじあざみラインで大型観光バス横転 続報その3
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/eacc4aaec72ccadc74fd3dff18ec9eb7
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観光バス横転 運転手は“事故コース”を初めて運転
200m手前からブレーキに異変?フェード現象か 事故前のバス「異常に遅かった」 観光バス横転事故
イット!
FNNプライム 2022年10月14日 金曜 午後7:30
10月13日午前11時50分ごろ、富士山の5合目から出発する通称「ふじあざみライン」の下り車線で事故は起きた。
乗客34人を乗せたバスが道路脇ののり面に乗り上げ横転。乗客の枝川恵美子さん(74)が死亡し、女性客3人が重傷を負った。
枝川さんは事故の前日、今回のツアーについて話していた。
枝川さんの次男:昨日顔を合わせたときに「あした富士山の方にバスツアーで旅行に行くよ 行ってくるからね」と聞いていまして、私も「そうなんだ じゃあ気をつけてね」とそれが最後になった
200m手前からブレーキに異変 原因はフェード現象
10月14日、新たにバスは少なくとも200m手前からブレーキに何らかの異常が出ていた可能性があることが分かった。
異常が出たとみられる付近を取材すると、センターラインをはみ出た痕跡が複数残っている。
これがバスのタイヤ痕だとすると、事故現場の200m手前からブレーキが利かないなど異変が起きていた可能性があるという。
現行犯逮捕された運転手の野口祐太容疑者(26)は調べに対し「ブレーキが利かなくなった」と話している。
この証言のようにブレーキが利かなくなった場合に考えられるのが「フェード現象」。
下り坂が連続する道でブレーキを何度も踏んだ場合、ブレーキパッドとディスクが過熱し、摩擦力が急激に減少。そのため、ブレーキの利きが悪くなるという。
地元のバス運行会社によると、ふじあざみラインは周辺の道に比べ一番勾配がきついという。
そのため、初めてこの道を運転するドライバーには指導者が立ち会い、最低3往復の研修を行うとしている。事故を起こしたバスの運行会社によると、運転手の野口容疑者はこの日、初めてふじあざみラインを運転したという。
「異常に遅かった」目撃者が語るバスの違和感
事故が起きる前にこのバスを目撃した人はその運転に違和感があったと話す。
事故前にバスを目撃した人:行くときも前にそのバスがいたんです。そのバスがすごく遅くて「なにこのバス遅いね」って言いながら(後ろを)ついていったんですけど。(バスの運転手は)山道は初めてだったのか、それともゆっくり走らないといけないっていうあれだったのか。異常に遅くって上っていくときが…
警察は14日朝、事故を起こしたバスの運行会社を家宅捜索。車両の機器やドライブレコーダーなどを解析し、当時の状況を調べている。(「イット!」10月14日放送より)