燃料噴射ハードウェアの考察 その1
ガソリン用燃料噴射(以降EFIと表記)ついては、現代車では極当たり前の機構となっているのだが、これ以前はキャブレターという純メカニカルな機構により吸入空気とガソリンとの混合気を作っていた。最近のガソリンTI(ターボ・インタークーラー)エンジンでは、高圧縮の確保とか高めの加給を狙い、ノッキングとかデトネーション耐性を確保するため、シリンダー内直接噴射云うのが増えて来た。この場合は、従来のポート噴射時の燃圧を、エンジン本体のカムで作り出されるその20倍くらい高めた燃圧で噴射している。
ここでは、EFIの噴射機構のハードウェアについて記すもので、内容としては➀フューエルインジェクター②フューエルラインとプレッシャーレギュレターについて、過去の思い出なども交え、私の知識の範囲として書き留めておきたい。そこで、今回のその1では、フューエルインジェクターについてを記す。
今回の試供インジェクターは日産の20年程以前のRB25DE-Tという直6エンジンのものだ。長く経年放置されてきたエンジンだが、始動不良であり、まず燃料ポンプを交換し燃圧確保ができたが、それでも補助的に吸気管へのアルコール噴射すると始動するが、継続運転困難なことから、インジェクターの作動テストを行うこととした。
インジェクターの作動テストとしては、単体では電圧を印加させ、微かなソレノイド駆動音(カチ、カチ)がするのであって、印加電圧(5Vで評価)に対するインジェクターコイル抵抗値(今回の場合は約16Ω)に応じた電流値(約0.3A)が流れれば、まずはOKだ。この段階で、6本のインジェクター中1本は、電流は正常だが、カチカチとソレノイドの作動音がでない。ソレノイドが固着しているのだろう。
インジェクターはフューエルデリバリチューブとインテークマニホールド間に設置され、燃料気密はOリングでなされる。フューエルデリバリチューブには、フューエルポンプから燃料が加圧されプレッシャーレギュレターへ流れ込む。一方、フューエルデリバリチューブの反対側には、プレッシャーレギュレターが付き、設定燃圧に調圧され、それを維持する以外の燃料はフューエルタンクにリターンされる。インジェクター噴射テストをするに当り、このフューエル配管サーキットを作る必用があるので、あり合わせの燃料ポンプと容量2L程度の容器に、フューエルポンプをセットし、燃料ホースを圧送側とリターン側をセットした。なお、燃料はガソリンを使用すると危険もあり、あえて灯油で実験している。
このフューエルデリバリチューブに燃圧(200KPa前後(2kg))を作用させた状態で、個別インジェクターにバッテリー(12V)より電圧印加するのだが、このクルマの場合、レジスター(抵抗)を間に入れる回路となっている。レジスターの抵抗値は実測してみたところ1.6Ω程度であった。このソレノイドコイルとレジスターの存在する理由は、現在は見掛けなくなったが、イグニッションコイルの外部抵抗器付きコイルと概念は一緒だ。その電気回路が、極短時間の電気の入り切り、つまりパルスで作動する場合、コイルにはその巻き数の大小により電流の変化に応じて逆方向の電流が生起される(逆起電力とか自己誘導作用と呼ぶ)ので、電流ONにした場合、流れる電流は垂直に立ち上がらないで2次関数的に曲線を描いて立ち上がるのだ。つまり電流が立ち上がり飽和するまで一定の時間を要してしまう。電流が正規まで流れるのに時間を要すると云うことは、この間にソレノイドの機械的動作も遅れるということになる。そこで、この電流立ち上がりの高速化には、コイル巻き数を減じることにより逆起電力の影響を薄めれば良いのだが、そのままではコイルの直流抵抗としての減少から過電流となるので、外部抵抗を直列に入れ、電流総量を規制しているというところだろう。ということで、バッテリー電圧によるインジェクター駆動は、レジスターを通して行った。
このテストの噴霧状態は写真に示すが、この写真は洗浄を繰り返した最終のもので、当初のものではない。先の電圧印加でカチ音のしなかったインジェクターでは、案の定のこと燃料は噴射されなかった。また、他のインジクターでも、明らかに噴射噴霧の円錐が崩れたり噴射量として少なく感じるというものがあったのだ。
そこで、インジェクターの洗浄に移るのだが、まずは写真のインジェクターの構造を見て欲しい。大まかな構造としては、中央にプランジャーとリターンスプリングがあり、ソレノイドの電磁力よりプランジャーが引かれ、前方のバルブを開いて先端から燃料を噴射するというものだ。先のカチカチ音が出ないものは、このプランジャーが固着して動けないというものだろう。それと、ここで意識する必用があるのは燃料入口にあるフィルターと記してある部分だ。ここは実物のインジェクターを観察しても穴径が小さく深くて観察し難いところなのだが、目の細かい金属網目状のフィルターだと想像する。これを見ていてくれる方が、昔のディーゼルエンジンの列型メカニカル噴射ポンプを触れた方なら、ポンプ入口に接続するユニオンボルトの中に、ゴーズフィルターという金属網目のフィルターが設定されていたが、あれの小型のものというイメージを持つ。
ということで、洗浄作業だが、まずは浸透性の強い洗浄液としていわゆるキャブクリーナーの一種をフィルター部から注入してしばらく時間を置きつつ繰り返した。その後は、ソレノイドを通電(弁開)でエアブローだとか、手持ちで持っていた超音波洗浄機(これは眼鏡とか時計洗浄のため30年位前に購入し、あまり使用せず保管していたもの)で、規定時間(数分)を繰り返し灯油液中で超音波洗浄した。そして、再度の通電エアブローと繰り返したのだったが、その結果通電でカチ音がないインジェクターも発音する様になり、冒頭の噴射テストにおいて、まあまあ類似の噴霧円錐が得られるところになり今回の作業を終えた。
補記
今での修理書にはまず掲載されていないが、ディーゼエルの列型噴射ポンプテスターでは、噴射ノズルは、それぞれ指示目盛り付きのガラスシリンダーで受け止める様になっており、一定時間噴射後の噴射量のバラツキを比較計測できる様になっていた。このEFIでも、例えば通電時間を同じとして、噴射量のバラツキまでを確認すればベストだろう。
このエンジンの搭載される車種の部品カタログから正規品番(16600-73L20.末尾L21.L22)だが、往時の新品価格は7,500円だが正規純正部品は国内些少(10以下)で、1本56千円だという。ということは6本で税込み37万円にもなる。
ガソリン用燃料噴射(以降EFIと表記)ついては、現代車では極当たり前の機構となっているのだが、これ以前はキャブレターという純メカニカルな機構により吸入空気とガソリンとの混合気を作っていた。最近のガソリンTI(ターボ・インタークーラー)エンジンでは、高圧縮の確保とか高めの加給を狙い、ノッキングとかデトネーション耐性を確保するため、シリンダー内直接噴射云うのが増えて来た。この場合は、従来のポート噴射時の燃圧を、エンジン本体のカムで作り出されるその20倍くらい高めた燃圧で噴射している。
ここでは、EFIの噴射機構のハードウェアについて記すもので、内容としては➀フューエルインジェクター②フューエルラインとプレッシャーレギュレターについて、過去の思い出なども交え、私の知識の範囲として書き留めておきたい。そこで、今回のその1では、フューエルインジェクターについてを記す。
今回の試供インジェクターは日産の20年程以前のRB25DE-Tという直6エンジンのものだ。長く経年放置されてきたエンジンだが、始動不良であり、まず燃料ポンプを交換し燃圧確保ができたが、それでも補助的に吸気管へのアルコール噴射すると始動するが、継続運転困難なことから、インジェクターの作動テストを行うこととした。
インジェクターの作動テストとしては、単体では電圧を印加させ、微かなソレノイド駆動音(カチ、カチ)がするのであって、印加電圧(5Vで評価)に対するインジェクターコイル抵抗値(今回の場合は約16Ω)に応じた電流値(約0.3A)が流れれば、まずはOKだ。この段階で、6本のインジェクター中1本は、電流は正常だが、カチカチとソレノイドの作動音がでない。ソレノイドが固着しているのだろう。
インジェクターはフューエルデリバリチューブとインテークマニホールド間に設置され、燃料気密はOリングでなされる。フューエルデリバリチューブには、フューエルポンプから燃料が加圧されプレッシャーレギュレターへ流れ込む。一方、フューエルデリバリチューブの反対側には、プレッシャーレギュレターが付き、設定燃圧に調圧され、それを維持する以外の燃料はフューエルタンクにリターンされる。インジェクター噴射テストをするに当り、このフューエル配管サーキットを作る必用があるので、あり合わせの燃料ポンプと容量2L程度の容器に、フューエルポンプをセットし、燃料ホースを圧送側とリターン側をセットした。なお、燃料はガソリンを使用すると危険もあり、あえて灯油で実験している。
このフューエルデリバリチューブに燃圧(200KPa前後(2kg))を作用させた状態で、個別インジェクターにバッテリー(12V)より電圧印加するのだが、このクルマの場合、レジスター(抵抗)を間に入れる回路となっている。レジスターの抵抗値は実測してみたところ1.6Ω程度であった。このソレノイドコイルとレジスターの存在する理由は、現在は見掛けなくなったが、イグニッションコイルの外部抵抗器付きコイルと概念は一緒だ。その電気回路が、極短時間の電気の入り切り、つまりパルスで作動する場合、コイルにはその巻き数の大小により電流の変化に応じて逆方向の電流が生起される(逆起電力とか自己誘導作用と呼ぶ)ので、電流ONにした場合、流れる電流は垂直に立ち上がらないで2次関数的に曲線を描いて立ち上がるのだ。つまり電流が立ち上がり飽和するまで一定の時間を要してしまう。電流が正規まで流れるのに時間を要すると云うことは、この間にソレノイドの機械的動作も遅れるということになる。そこで、この電流立ち上がりの高速化には、コイル巻き数を減じることにより逆起電力の影響を薄めれば良いのだが、そのままではコイルの直流抵抗としての減少から過電流となるので、外部抵抗を直列に入れ、電流総量を規制しているというところだろう。ということで、バッテリー電圧によるインジェクター駆動は、レジスターを通して行った。
このテストの噴霧状態は写真に示すが、この写真は洗浄を繰り返した最終のもので、当初のものではない。先の電圧印加でカチ音のしなかったインジェクターでは、案の定のこと燃料は噴射されなかった。また、他のインジクターでも、明らかに噴射噴霧の円錐が崩れたり噴射量として少なく感じるというものがあったのだ。
そこで、インジェクターの洗浄に移るのだが、まずは写真のインジェクターの構造を見て欲しい。大まかな構造としては、中央にプランジャーとリターンスプリングがあり、ソレノイドの電磁力よりプランジャーが引かれ、前方のバルブを開いて先端から燃料を噴射するというものだ。先のカチカチ音が出ないものは、このプランジャーが固着して動けないというものだろう。それと、ここで意識する必用があるのは燃料入口にあるフィルターと記してある部分だ。ここは実物のインジェクターを観察しても穴径が小さく深くて観察し難いところなのだが、目の細かい金属網目状のフィルターだと想像する。これを見ていてくれる方が、昔のディーゼルエンジンの列型メカニカル噴射ポンプを触れた方なら、ポンプ入口に接続するユニオンボルトの中に、ゴーズフィルターという金属網目のフィルターが設定されていたが、あれの小型のものというイメージを持つ。
ということで、洗浄作業だが、まずは浸透性の強い洗浄液としていわゆるキャブクリーナーの一種をフィルター部から注入してしばらく時間を置きつつ繰り返した。その後は、ソレノイドを通電(弁開)でエアブローだとか、手持ちで持っていた超音波洗浄機(これは眼鏡とか時計洗浄のため30年位前に購入し、あまり使用せず保管していたもの)で、規定時間(数分)を繰り返し灯油液中で超音波洗浄した。そして、再度の通電エアブローと繰り返したのだったが、その結果通電でカチ音がないインジェクターも発音する様になり、冒頭の噴射テストにおいて、まあまあ類似の噴霧円錐が得られるところになり今回の作業を終えた。
補記
今での修理書にはまず掲載されていないが、ディーゼエルの列型噴射ポンプテスターでは、噴射ノズルは、それぞれ指示目盛り付きのガラスシリンダーで受け止める様になっており、一定時間噴射後の噴射量のバラツキを比較計測できる様になっていた。このEFIでも、例えば通電時間を同じとして、噴射量のバラツキまでを確認すればベストだろう。
このエンジンの搭載される車種の部品カタログから正規品番(16600-73L20.末尾L21.L22)だが、往時の新品価格は7,500円だが正規純正部品は国内些少(10以下)で、1本56千円だという。ということは6本で税込み37万円にもなる。