私の思いと技術的覚え書き

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微少オフセット正面衝突事故・運命の分かれ目はボデーバーション

2020-11-30 | 事故と事件
 近年、旧来のリジットバリア(もしくはフルラップ・100%)やオフセットバリア(運転席方側40%)試験に加えて微小オフセットバリア(20%)試験というのが行われる様になって来ている。

 さて、今回のセンターラインのない峠道風の道路でのどちらか道路中央付近を越えたことによる正面衝突事故だが、どちらの車両も車幅の20~30%程度衝突し合う、いわゆる微小オフセット試験に相当する衝突形態だ。

 微少オフセット衝突の何が問題かといえば、フルラップにしてもオフセットにしても、車両の縦の衝撃吸収の主体となるフロントサイドフレームで大きくつぶれエネルギーを吸収できるが、微少オフセットでは、サイドフレームの外側をつぶれエネルギーは通過することにあるだろう。その結果、フロントサスペンションはもぎ取れ、フロントピラーを極めて大きく後退させようとする衝撃力が働いてしまう。、また、重心を大きく外れた偏心衝突となるが、衝撃反力による乗員の前傾方向はフロントピラー側たる斜め前方となってしまう。その結果、作動したエアバッグのセンターで受け止めることができず、頭部をフロントピラーなどに直撃してしまうことが、各実験からは読み取れる。

 今回の事故だが、運転者死亡はポルシェ側と報じられているが、同ポルシェは左ハンドルの様だ。しかも型式としては993型と読み取れるから、既に初期製造から20年を経た車両だ。一方、相手車のプリウス30は、前世代モデルといえども初期設計から10年を経ていない車両で、死亡したのは運転者でなく助手席乗員の様だ。

 もし、今回事故がポルシェ側も比較的新しい997以降のモデルであれば、対微少オフセット衝突性能も対等であり、ポルシェの運転者は死亡しなかった可能性も高いと思える。

 私見だが、最近のクルマはモデルチェンジする度に、肥大化しつつ重さも増し、デザイン性も「これじゃ昔の方が良かった!」と思えることは多いのだが、その衝突安全性は確実にバーションアップしてきているのだ。しかし、何処までバーションアップしようが、絶体安全な車両を作ることは種々の形態の衝突事故がある限りなくならないことだけは確かなことで、その意味に無情といった思いを持つところだ。



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熊本・阿蘇市でポルシェが正面衝突、3人死傷
11/30(月) 5:32配信 Copyright(C) Japan News Network. All rights reserved.
 29日、熊本県阿蘇市で乗用車同士が正面衝突し、2人が死亡、1人が重傷を負いました。
 警察によりますと、29日午前9時すぎ、熊本県阿蘇市の県道、通称「やまなみハイウェイ」でスポーツカーが反対車線の乗用車と正面衝突しました。
 この事故でスポーツカーは大破。運転していた熊本市東区の会社員、田埜浩一さん(49)は現場で死亡が確認されました。もう一方の乗用車に乗っていた夫婦は大けがをして現場からドクターヘリで運ばれましたが、妻の有田洋子さん(59)がおよそ7時間後に死亡しました。運転していた夫(58)は重傷です。
 事故があった場所はゆるやかな右カーブで、警察はスポーツカーが中央線を越えて反対車線の車と正面衝突したとみて、当時の状況を詳しく調べています。(29日18:59)最終更新:11/30(月) 5:32 TBS系(JNN)

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