可変バルブタイミング(以下バルタイ)機構は、トヨタのVVTとかBMWのVANOSといった名称で、今やどのメーカーでも採用が極一般化されたものだ。しかし、基本的な概念は理解するものの、詳細を体系的に解説した資料も得られず未知の部分も多いと感じている。私なんかより、余程詳しく把握されている皆様も多いと思う。そんな中、最近アイシンのHP(アイシンものづくり精神→可変バルブタイミング機構:http://www.aisin.co.jp/pickup/spirits/html/236.html)で、BMWへの排気側タイミング機構の要求と受注に絡む内容を発見し、ちょっと知識が増えたかなと思い紹介するものだ。
可変バルタイ機構は、ベーン式など(ヘリカルスプライン式など他方式もある様だが)油圧によってバルタイを可変させるものだ。そこで、エンジン始動時など油圧がない状態で初期位置は、吸気側が最遅角位置で、排気側が最進角位置で、それぞれロックピンでロックされる機構が内蔵されているとのことらしい。そして、エンジン始動後の各種運転状態に応じて、吸気側は進角方向へ、排気側は遅角方向へタイミングを変化させているということの様だ。なお、この変化は、ベーン室への油量(油圧)を電磁スプールバルブで変化(おそらくデューティー比制御だと想像)と、カムポジションセンサーによる位置検出で、ECU内のマッピングに近似させるフィードバック制御を行っているのだろう。
ちなみに、この可変バルタイに感心を持ったのは、何年か前にBMWミニ(R56前期・N12とかN14エンジン)において、チェーンがスプロケットの山を飛び越えてバルタイが狂うとか、チェーンが外れるという不具合を何台か連続して遭遇したことにある。今回紹介する写真は、その一例だが、チェーンがスプロケットから外れ掛け、スプロケットの一部歯にキズを生じており、スプロケット(可変ベーン機構内蔵)を交換した際に、旧品をムリやり分解して内部を観察したものも含む。なお、R56前期(車体番号による)のターボ付き(クーパーS・N14)エンジンのみ、本トラブルのサービスキャンペーンが行われているが、ターボなし(N12)エンジンでも、同様のトラブルは多発している様だ。このトラブル多発は、メーカーは当然承知しており、R56後期型ではエンジン外観は酷似しているものの、エンジン型式が変わっている。そこで、トラブル多発の原因は何かというところが気になるが、一番は先に記したN14のサービスキャンペーンでの主交換部品でもあるチェーンテンショナの初期与圧の低過ぎがあるのだが・・・。複数台の類似トラブルを体験してきて、明らかにテンショナの加圧スプリング力が弱いものもあった。しかし、必ずしもテンショナ加圧力が弱くなく、同トラブルが生じているものもあるのだ。チェーンガイドの形状だとか配置関係も疑われるが、もう一つ疑念を持っているのが、可変バルタイ機構との関係なのだ。つまり、始動時など油圧が低いときには、ベーンがバタ付くのを防止するためのロックピンの設置なのだが、ロックピンが速やかに入らない中で、バタ付いた動きの中、主に吸排スプロケット間のチェーンのたるみが生じることに起因している可能性も否定できないと思うのだが・・・。何とも結論は出せないが、メーカーは判っていることだろう。
なお、チェーンでなくベルト駆動の場合で、切損や飛び越しなどバルタイ狂いでバルブステムの曲損が知られている(トヨタのガソリンでは干渉しないと明言されていた)が、このシリーズでも完全かどうかは不知だが、今のところそれに至るまでの現象は確認していない。
写真説明
①アイシンHPより転載:BMWの吸排の進角および遅角概念図(ロック時吸気は最遅角、排気最進角)
②N12エンジンで吸排スプロケを外した状態(クランクプーリーもそうだが、カムシャフトも位置決めのキーは一切ない)
③N12エンジンで排気側スプロケットとチェーンを取替組み付け中(後方にカムアライメントツールで位置決めロック中)
④スプロケットのキズ状態
⑤排気側スプロケットの分解写真※ロックピンとカバー側の嵌合穴に注目(+ボルトの皿ネジが緩まずサンダーで削り取ったためキズがある)
可変バルタイ機構は、ベーン式など(ヘリカルスプライン式など他方式もある様だが)油圧によってバルタイを可変させるものだ。そこで、エンジン始動時など油圧がない状態で初期位置は、吸気側が最遅角位置で、排気側が最進角位置で、それぞれロックピンでロックされる機構が内蔵されているとのことらしい。そして、エンジン始動後の各種運転状態に応じて、吸気側は進角方向へ、排気側は遅角方向へタイミングを変化させているということの様だ。なお、この変化は、ベーン室への油量(油圧)を電磁スプールバルブで変化(おそらくデューティー比制御だと想像)と、カムポジションセンサーによる位置検出で、ECU内のマッピングに近似させるフィードバック制御を行っているのだろう。
ちなみに、この可変バルタイに感心を持ったのは、何年か前にBMWミニ(R56前期・N12とかN14エンジン)において、チェーンがスプロケットの山を飛び越えてバルタイが狂うとか、チェーンが外れるという不具合を何台か連続して遭遇したことにある。今回紹介する写真は、その一例だが、チェーンがスプロケットから外れ掛け、スプロケットの一部歯にキズを生じており、スプロケット(可変ベーン機構内蔵)を交換した際に、旧品をムリやり分解して内部を観察したものも含む。なお、R56前期(車体番号による)のターボ付き(クーパーS・N14)エンジンのみ、本トラブルのサービスキャンペーンが行われているが、ターボなし(N12)エンジンでも、同様のトラブルは多発している様だ。このトラブル多発は、メーカーは当然承知しており、R56後期型ではエンジン外観は酷似しているものの、エンジン型式が変わっている。そこで、トラブル多発の原因は何かというところが気になるが、一番は先に記したN14のサービスキャンペーンでの主交換部品でもあるチェーンテンショナの初期与圧の低過ぎがあるのだが・・・。複数台の類似トラブルを体験してきて、明らかにテンショナの加圧スプリング力が弱いものもあった。しかし、必ずしもテンショナ加圧力が弱くなく、同トラブルが生じているものもあるのだ。チェーンガイドの形状だとか配置関係も疑われるが、もう一つ疑念を持っているのが、可変バルタイ機構との関係なのだ。つまり、始動時など油圧が低いときには、ベーンがバタ付くのを防止するためのロックピンの設置なのだが、ロックピンが速やかに入らない中で、バタ付いた動きの中、主に吸排スプロケット間のチェーンのたるみが生じることに起因している可能性も否定できないと思うのだが・・・。何とも結論は出せないが、メーカーは判っていることだろう。
なお、チェーンでなくベルト駆動の場合で、切損や飛び越しなどバルタイ狂いでバルブステムの曲損が知られている(トヨタのガソリンでは干渉しないと明言されていた)が、このシリーズでも完全かどうかは不知だが、今のところそれに至るまでの現象は確認していない。
写真説明
①アイシンHPより転載:BMWの吸排の進角および遅角概念図(ロック時吸気は最遅角、排気最進角)
②N12エンジンで吸排スプロケを外した状態(クランクプーリーもそうだが、カムシャフトも位置決めのキーは一切ない)
③N12エンジンで排気側スプロケットとチェーンを取替組み付け中(後方にカムアライメントツールで位置決めロック中)
④スプロケットのキズ状態
⑤排気側スプロケットの分解写真※ロックピンとカバー側の嵌合穴に注目(+ボルトの皿ネジが緩まずサンダーで削り取ったためキズがある)