私の思いと技術的覚え書き

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ガソリンエンジンの近未来

2010-06-25 | 技術系情報

 CO2問題などでEVやHEVが脚光を浴びていますが、石油系燃料によるガソリンおよびディーゼルの各エンジンが主役であると云うことは、当面変わらぬことの様に想像されます。しかし、排出ガス浄化という社会的要請が達成された現在、CO2削減という社会的な要請に応えていくことは、欠かせないこととなっています。そのためには、ガソリンおよびディーゼルの各エンジン共に、熱効率の更なる改善への努力が欠かせぬこととなっています。そんな意味も込めて、今回はガソリンエンジンの更なる熱効率改善に向けて、最新の研究レポートを見る機会がありましたので、その内容と核となる技術エッセンスを紹介して見ます。これは近未来のガソリンエンジンの技術的トレンドともなる事項を多数含むものと思います。
 ガソリンエンジンの熱効率改善のためには、圧縮比を上げることが極めて有効な事項であることは昔から良く知られたことです。しかし、圧縮比とノッキングは背反する関係にあり、必用なアンチノック性を持たない燃料では、ノッキングの発生=熱効率の低下となるばかりか、ノッキング発生→タイミングリタード(点火遅角)→熱効率低下となり、熱効率の改善には結び付きません。
 また、内燃機関の熱効率は回転上昇に伴い暫減しますが、これは高速回転になるほど機械的な摩擦による損失が増大することによります。以上のことから、空燃比(A/F)はリーンバーン(希薄燃焼)を基本とし、ターボ加給により余り高速回転させないで必用なトルクと出力を得られる様なエンジンが有効となります。しかし、ターボ加給の場合は無加給よりもイニシャルな圧縮比を低下させる必用がありますが、圧縮比をなるべく低下させず、生じ易いノッキングを、筒内直接噴射や多段噴射、噴霧内点火(スプレーガイド)などとオクタン価の高い燃料の組み合わせにより、極力タイミングリタードさせずに運転が可能なエンジンが次世代ガソリンエンジンとして有望だとしています。
 ところで、オクタン価の高い燃料ですが、アルコール系の燃料がオクタン価が極めて高く、ガソリンエンジンの高圧縮化に有用であるとのことです。ご存じのように現用ガソリンでは、レギュラーとプレミアム(ハイオク)の種別がありますが、そのオクタン価はレギュラー90前半程度、プレミアム100前後であると云われています。一方、アルコール系燃料であるエタノールを例に取るとオクタン価は106と高い値が得られるとのことです。
 以上の様な技術エッセンスを盛り込んだ試作ガソリンエンジンにおいて、得られた熱効率は44%を達成したとのことです。これは現用の最高効率のディーゼルエンジンを超えるものとのことです。
 しかし、このアルコール系燃料を基本とした高圧縮比ガソリンエンジンですが、現状では課題もある様です。それは、低温時の着火性が」ガソリンに比べ悪く、始動性悪化やエンジン冷間時の運転性に難があるとのことです。この難点を克服するための一つとして、始動時や冷間時にアルコール系燃料でなくガソリン燃料を使用する方法が考えられます。二つ目としては、始動時を含め平常時はガソリン燃料を使用し、ノッキング条件時のみアルコール燃料を使用する方式(ブースト方式)があるが、主流としては後者の方式となるのではないかと同レポートでは結んでいます。

 

追記
 話は第2次大戦の頃に戻りますが、ほとんどの航空機用ガソリンエンジンは、1000馬力位から大馬力のものでは2000馬力級までがありましたが、総排気量3万cc前後、単シリンダー容積でも2000cc以上もの容積を持っていました。こうなると、シリンダーボアサイズも15cm以上ともなり、火花点火エンジンでは火炎伝播時間による遅延の問題が無視できない大きな問題となってきます。そのため、航空機用大排気量ガソリンエンジンでは、スパークプラグを2つ持ったツインイグニッションシステムの装着が当然のこととなっていました。それでも、ノッキングやプレイグニッションなどを含んだデトネーション(不正燃焼)の問題が常に付きまとっていたのだと想像されます。しかも、設計上の要求ガソリンは4エチル鉛入りのハイオクガソリンですが、松根油などの代用燃料の使用を強いられた旧日本軍の各機では、とてもスペック通りの性能なんかでなかったことでしょう。


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