私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

中国のクルマ事情を検証する

2007-11-24 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 この記事はニューモデルマガジンX誌12月号に、牧野茂雄氏が記述した記事を基に記してみます。
 今や中国の車両生産は恐るべき程に急成長しています。今年の中国国内での生産量は900万台、2009年には日本に並び、2015年には米国を抜くであろうというのが中国政府の読みとのことです。輸出台数も今年で50万台で、主な輸出先は旧ソ連圏であるとのこと。何れにしても近い将来、自動車立国である日本の大きな脅威となることは、間違いないこととも想像されます。

 ところで、中国の自動車メーカーは現状で100社程度もあるとのことですが、実態は10社程度メーカーでの生産メーカーでの生産台数が大多数を占めています。これら10社程度のメーカーでは、欧州、米国、日本との合弁会社として、各国のクルマと同一のクルマが生産されているのが実態です。これら、クルマは何ら、その生産国自身のクルマと変わらない品質と安全性を有しています。

 しかし、その生産量は全体の中で比較的少量ですが外資メーカーと合弁していない中国製自身のブランドのメーカーも存在します。そんな中国民族系自動車企業の一つである「華農汽車」で生産されたBS6という クルマがあります。同誌記事によれば、車体設計は独ポルシェエンジニアリング社、デザインは伊国ピニンファリナ社(BS6のリヤーピラー付近のデザインモチーフは同社デザインが噂された初代のアリストとそっくりです)、そして独BMW社に生産技術の指導を受けているとのことです。

 さて、BS6の独ADAC(日本のJAFに相当する組織)によるクラAdac_bs6_2ッシュテストがユーチューブの動画として公開されています。フロントクラッシュテストは、オフセットデフォーマブルバリヤでのものですが、速度は日本の56km/hより高い64km/hだそうです。

 しかし、驚くのはその潰れ具合が尋常なものではないことです。当然エアバックは装備されており正常に作動はしていますが、フロントピラーおよびダッシュパネルの後退は、凄まじいものであり、サイドシルにも大きな座屈変形が生じています。ステアリングおよびインストルメントパネルの後退量も50cm程度はありそうな程です。これでは、エアバックが装備されていても殆ど意味をなしません。HIC値も致死レベルまで至ったのかは判りませんが相当に高い値でしょう。胸部の圧力は完全に肋骨の破壊レベル、大腿骨は複雑骨折のレベルは間違いないと断じられる映像です。この記者自身も記しています。「過去200台レベルの衝突映像を見てきたが、このBS6の映像はワースト3に入るものだ」と。さらに、この記者は云います。華農汽車が鋼材メーカーにオーダーした鋼板の品質レベルが疑わしいと。幾らポルシェで精緻な設計図面と素材が指定されたところで、十分な品質を持った特に高張力鋼板を作る素材技術が現在の中国には無いということだと。そして、自動車というものは、家電製品や携帯電話と違い、素材技術が重要なのであって、単なるリバースエンジニアリングでは、まともなクルマは作れないと記しています。

 関連しますが、つい先日新型フィットが発売されました。当然にボデー各所には高張力鋼板(590MPa級まで)が多用されています。しかし、700MPa級以上ともなる超高張力鋼板は使用されていません。これは、ワールドワイドに世界各国で生産するために、あえて素材の要求レベルを落として設計しているとの開発者の発言記事がありました。世界中で現在ところ超高張力鋼板を作れる国は、欧、韓、日までが実態の様です。

追記
 この様な中国の現状を見て一概に笑い馬鹿にすることは出来ません。日本のクルマだって、20年以上前のクルマを同様のクラッシュテストを行えば、今回のBS6と同様の結果となったハズだからです。日本でモーターリゼーションが成熟したのは40年間、韓国は20年で成し遂げ、中国は10年で成し遂げると云われます。しかし、現在大挙して日本のクルマメーカーやサプライヤーが中国進出を果たしておりますが、何れ煮え湯を飲まされる結果となることが想像されます。中国人自身はまったく悪くはありませんが、この国家は所詮言論の自由を持たない国だからです。この様な国家はまったく信用は出来ません。


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