私の思いと技術的覚え書き

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サスペンション・スプリングのこと

2011-04-20 | 技術系情報
 クルマのサスペンションは、操縦安定性とか乗り心地などの快適性に極めて大きな影響力を持つ部品として、過去から種々のものが採用されて来ました。その、主な種別と特徴などを記してみます。

①コイル・スプリング
 いわゆる一般的にバネと云えば、このコイルスプリングとなるでしょう。現在でも、一般的乗用車の主流となるバネとして使用されます。
 なお、このコイル・スプリングも、後で記すトーション・スプリングと同様に、スプリング鋼が捻られることによる反発力を利用しています。従って、スプリングの硬さ(バネ定数)は、線径だとか巻径により変化することになります。また、コイル・スプリングの巻き線の粗密(ピッチ)を変化させることにより、バネ定数を中間で変化させるプログレッシブ・レートなるものが、主にリヤ・サスペンション用として採用されることがあります。

②リーフ・スプリング
 日本語で記せば板バネとなりますが、板状のバネの反発力を利用したものです。なお、乗用車用は板の枚数を少なくしてバネ常数を低くして、乗り心地を良くしています。一方、、貨物車用は多数枚の板を積層してバネ常数を高め、大きな積荷過重に耐える様にしています。
 なお、クルマの諸元表などを見ると半楕円リーフスプリングと記されていますが、馬車の時代とか自動車発祥の頃は、半楕円リーフを上下に連結した全楕円リーフというものがあったことが知れます。
 ところで、サスペンションにおいてスプリングだけですと、一度の圧縮で反発と再度の圧縮が何度も続いてしまいます。これでは、走行不安定になってしまいますので、スプリングと並列にダンパー(ショックアブソーバー)が必ず使用されます。ところで、このリーフ式では二枚以上の組み合わせでは板同士の摩擦力により、ある程度のダンパー効果を持っています、但し、乗用車のように少数枚のリーフ枚数では、その様な効果は少ないですし、そもそも板間の摩擦による異音を嫌いパットが挿入されることも多く、ダンパー効果はないと云って良いでしょう。

③トーション・スプリング
 バネ鋼の捻り反発力を利用した方式のスプリングです。Dr.ポルシェが設計したVWビートル(Type1)とか、その後の356シリーズ、息子(フェリー)が設計した911シリーズなどでも好んで使用されてきました。国産車でも、商用車などのフロント・サスペンション用として、使用例は多くあります。
 この方式の特徴ですが、トーションスプリングのアンカー部(ボデー側固定部)にアジャスト機構を持っているものが多く、車高の調整が可能なものが多くあることでしょう。
 なお、サスペンションには、旋回時のロール剛性を高め安定性高める装置としてスタビライザーが使用されます。これは、別名トーション・スタビライザーという名からも判る様に、これも一種のトーションスプリングです。このトーション・スタビライザー・バーですが、昔はムク材のバネ鋼が使用されていましたが、最近は軽量化目的でパイプ材のものも多くなっています。それと、スタビライザー左右端部は、左右のサスペンション上下部品に連結されますが、最近のちょっとスポーツ性を重視したクルマでは、よりダイレクトな上下動を補足できる位置として、ストラット本体に連結することが増えている様です。

④エア式スプリング
 金属バネに代えてエア式バネを使用したものです。国産車では初代センチュリーのフロント用としてが初採用と思います。これは、ストラット形式のサスペンションでしたが、ストラット上部にタイヤの空気注入口と同様のものがあり、エアの充填により規定の車高を保つことができる様になっていました。
 その後も、高級乗用車用としての、エア式スプリングの採用車は続いていますが、専用の電動エア・コンプレッサーと車高センサーなどにより、乗車人数に違いによる車高の変化を抑えたり、悪路走行時用に一段高い車高に設定できたりするものがあります。
 エア式スプリングの採用は、乗用車より大型観光バスでの採用の方が早かったと思います。これは、元々ブレーキ装置用としてエンジンで駆動される大型のエアコンプレッサーを持っていたこともあるのでしょう。また、最近は大型貨物車でもエア式スプリングの採用車が増加してきましたが、これは精密機器など積荷の痛みを防ぎたいという要請からでしょう。

⑤ラバー式スプリング
 ラバー式スプリングはラバーの圧縮反発力を利用するものと捻り反発力を利用するものとがあった様です。私が知るクルマとしては、オリジナル・ミニ(クラシック・ミニ)とかマツダR360クーペなどが思い浮かびます。考えてみれば、エンジンマウント・インシュレーターも、一種のラバー式スプリングと云えるでしょう。
 このラバー式スプリングですが、ホイールの上下動のストローク(サスペンション・トラベルとも云う)が少なく、バネ定数が高くなりがちなこともあり、乗り心地が悪いという欠点があったと思います。オリジナル・ミニなど、初めて乗った時には、硬いサスペンションに驚いたものでした。但し、その分小気味良く動き廻われるという利点もありましたが・・・。

※写真はマツダR360クーペのフロント・サスペンション部を示す。



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