私の思いと技術的覚え書き

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ドライサンプエンジンのこと

2016-09-24 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 ドライサンプとは、ほとんどの市販車で使用されるエンジン下部にオイルパンを持つウェットサンプ(サンプ:溜まり)でなく、エンジン各部の潤滑を行ったオイルを、速やかに複数個以上のスカベンジングポンプで回収し、専用のオイルタンクに戻す方式がドライサンプという潤滑方法だ。レーシングマシンの様にエンジン位置を下げたい場合や、レシプロ航空機で倒立エンジンや星形エンジンでオイルパンの設置が不可能な場合に多用される方式となる。特にレーシングエンジンは、高回転時のクランクによるオイル攪拌は、いたずらに油温を上げると共に駆動損失の原因となるので多用されている。

 しかし、レーシングエンジンをディチューンして市販車化したエンジンでも、ドライサンプをそのままを取り入れたエンジンは、極少数が存在するだけだ。その理由だが、複数個のオイル回収用スカベンジングポンプを用いる必用があり、しかも過剰なスカベンジングポンプ容量は、オイルと共に空気を吸い込み、オイルと空気の分離が困難となるとの中村良夫氏の記述もあり、その辺りの設計の難しさがあるのだろうし、なによりコスト高となるのが理由だろう。

 そもそもドライサンプの場合、フィードポンプの圧送量が格段に多いと推察される。それにより、各メタルへの潤沢な油量とピストン裏側へのオイルジェットによる冷却やヘッド周りのオイルによる潤滑と油冷としての機能を持っているはずです。そして、エンジン下部に滴化したしたオイルは速やかに、スカベンジングポンプで回収され、オイルクーラーを通りオイルタンクに戻される。オイルタンクの絶対容量も大きく取られ、熱容量としても向上されるから、急激な油温の上昇も吸収しうるのだろう。

 市販車では、スーパーカーの類を除き、ポルシェ911(空冷)やホンダ1300(空冷)が使用していた程度だ。これは、やはり油冷としての意味で、採用していたのだろう。しかし、ポルシェも水冷エンジン化されたが、オイルパンを持つ一見ウェットサンプと思える外見だが、オイルパン内にスカベンジングポンプを持つ、セミドライサンプという方式だと聞く。このセミドライサンプだが、R35とかIS-Fのエンジンにも採用されていると云うが、明細は未だよく知らない。

※写真はゼロ戦21型に搭載の栄エンジンとその後部バルクヘッドに装着されるオイルタンク(おそらく容量20L程度)。


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