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指数の疑問 その3【標準時間は少量小口生産には不確実性を内在する】

2022-04-29 | 問題提起
指数の疑問 その3【標準時間は少量小口生産には不確実性を内在する】
 拙人の気質として現代社会では欠点となるのかもしれないが権威というものを疑うといことがある。つまり、例えばさるべき大学教授が述べたからといえ、それだけでは真実だとは思いもしないと云うことだ。米国の論評家で故人となられているがカール・せーガンという方が述べている「世に権威はない、そこには専門家がいるだけだ」というのがあるが、権威だけでは信用しないが、幾人かの専門家の意見を聞いて事実を確かめたいという思いを持っている。

 前口上が長くなったが、指数というべきものを新米調査員のころ習った訳だが、正直これを全面的に世の正義として受け入れたという思いはなかった。そこには、拙人自身は板金技能者ではないが、メカニカルな技能者としての実務経験もあり、板金技能者との会話を通して見えてくる評価というべき違和感があったからこそ、全面的に受け入れ入ることを拒む思いが生じたのだと意識している。

 そうは云えども、見積担当者としては、一定の基準たる尺度というべきものが必要なことも事実で、もしこの尺度と云うべきものがないとすれば、何ら根拠と云うべきものなく、主観的な評価に終始することになる。従って、ものごとを中立的に評価する客観性というものが欠落してしまうことになる。

 そんな思いを持ち続け、様々なものを知ると思われる人物に、指数というか工数といった示される作業時間の妥当性というべき質問を繰り返して来たのだが、多くの場合において、おそらく作業時間は行くつくところはそれなりの大学の学問として研究構築されていて、一個人が異論を唱えようがビクともしない、つまりそこには権威が絡んでいるとの説明を受ける訳なのだ。そうであると、冒頭述べた権威を疑うという持ち前の気質が生じるところで、どれどれその権威者が記したものの本を眺め評価してやろうじゃないかという思いが生じて来るという訳だ。

 そんな思いを持つ中で、流石に図書館にも、工業的工数を研究体系化した様な本はなく、何か良い本はないかと思っていたところだった。その様な中、交通事故鑑定のことで時々お話しをし、つい前日も触れた吉川氏にそんな話しをしたところ、それならS46年頃、確か東京工大の教授が記した「作業研究という本があったなぁ」ということを聞き、早速原書を見せてもらうことになったのだった。(表紙と奥付は添付、全237ページ)


 未だ全文は読破していないが、得意の速読斜め読みで、私の求める文意を見つけた。このページは添付するが、この本は想像していた通り、主に生産工場において、幾ら複雑な機械であろうが、1担当者の作業範囲は比較的狭く、その作業時間も比較的短いという、いわば分業専門化されたマスプロダクションとしての作業時間の研究に主眼が置かれていることが理解できる。その前提で、私が素早く見つけた文意は「標準作業時間の構成」の下層にある「作業の安定度から見た標準時間」というところの文章だ。以下にそのまま転載する。

8-1-4 作業の安定度からみた標準時間
 上記したように標準時間の設定方法や精粗は,生産量(作業の安定度)および標準時間の使用目的によって変わる.
( 1 ) 不安定作業の標準時間
 一般に10個以下の個別生産の場合は,類似品のみを専門的に扱う工場でないかぎり,作業はきわめて不安定にならざるを得ない.また主体作業時間に対する準備時間(これは元来不安定である)の比率が高いので,全体として不安定化してくる.この様な不安定な作業を標準化して,それに対する標準時間を求めることは不経済な場合が多い。そこで生産予定の決定や単価の決定に用いる時間は,経験的に見積時間として求めるのがふつうである。


 と、作業時間の分析専門家自身が述べていることを知ると、指数項目のすべてとは思えないが、いわゆるボルト系パネルの脱着もしくは取替で比較的指数値が小さい(作業時間が短い)ものはともかく、溶接系パネルで比較的指数値が大きくなる(作業時間が長く、複数の作業が混在する作業)については、不安定性(バラツキの要素)が高いと云うべきことを述べているだろうと想像できる。

 この「作業研究」という書籍は、この他にも「余裕時間」の考え方にも多くの示唆(しさ)を与える項目があり、このことは次回以降に記して行きたいが、何れにしても、ある値を示す場合、なるべく透明性を高めることと、問題点が提起されたりした場合は、再検証して場合によれば訂正するという姿勢が求められるべきものではないかと思える。そのことを自研センターに問い合わせると、「これは自研センターとしての数値で、使えと強要するものでなく、個別に損保と打ち合わせなさい」と回答する現行体制は、あまりに無責任な姿勢と拙人には思えてしまうところなのだ。


#指数の疑問 #標準時間は少量小口生産には不確実性を内在する


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