私の思いと技術的覚え書き

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エンジンオイル管理のこと

2016-12-19 | 車両修理関連
 エンジンオイルの大切さについて、疑問を持たぬ者はいないだろう。しかし、何キロ毎に替えるのが妥当なのか、使用オイルのブランドやスペックは何が良いのかと聞かれると、いささか返答に窮するところだ。それは、使用環境と走行距離だけでなく期間も加味して決めるべき問題で、ここでは一概に妥当値は示せない。

 まず交換インターバルだが、ある者は3千km毎だというし、5千km毎という者もいるし、中には量さえ見て交換なんてしなくて大丈夫だとか、車検毎にいいなんて思っている話もある。それと、一般的にターボ付き車は、タービンは最大20万rpm近くまでの高速回転しつつ排気ガス熱の影響も受けやすく、低排気量の小型エンジンで高出力を得る宿命上、オイル交換のインターバルは短めが良いとされている。

 ところで、BMW車(ミニ含む)では、かなり以前からだったと思うが、適正な純正オイルを使用する前提で、約25千キロ毎(実際にはその間の燃料噴射時間を積算しており変動する)のエンジンオイル交換をインジケーターに表示する。ほんと、「そんな長いインターバルで大丈夫なのか?」と昔の機械屋しては思っているのだが・・・。しかも、最近の直噴エンジンは、PMによりエンジンオイルの汚損はディーゼル並みに酷いもので真っ黒なオイル汚損となるが、それでも25千インターバルとしているが、ちょっと良識欠けてんじゃないかとすら感じているところである。

 参考までに、2年程前に診断と修理を行った、BMW116iのエンジン内部の写真を紹介してみよう。シリンダーヘッドカバーを外した状態であるが、「こりゃ酷い!」というレベルのスラッジ堆積であった。不具合は、エンジン始動不良、低速安定の不調などであった。このオイルスラッジ状態は、オイル管理の杜撰さが招いた問題ではあろうがと思いつつ、直ちに私が目視点検として注目したのは、各バルブを駆動するカム山(凸部)のカジリがないかであった。このツインカムエンジンは、直動式(カムでリフターを直接押すタイプ)ではなく、間にロッカーアームが入る方式であるが、スラッジは酷いものの、カム面はカジリもなく綺麗な状態であった。つまり、オイル流路としての閉塞までは至らず、このカム面の綺麗な様子やエンジン異音が生じていないことからカムシャフトジャーナル(ベアリング)や、腰下のクランクメタルやコンロッドメタルも、そうそうダメージは受けていないだろうという見込みを付けた。となると、エンジン不調の要因は、制御系だろうという類推となる。

 ということで、次に手を付けたのはVANOS(可変位相機構)を駆動する油圧ソレノイドの取り外し点検であった。このソレノイドであるが、シリンダーヘッド前端に付いているが、該当車が縦置きエンジンFRのこともあり、非常に作業性良く外せる。点検すると、ソレノイド流路に設けられた細かい網目に多量の異物(オイルスラッジ)がこびり付いているのが確認されたのだ。つまりオイルの流量不足により、バルブ位相角に狂いが生じているものと判断された。つまり、バルブ可変位相で、いわゆるバルブオーバーラップ(吸排気バルブが同時に開いている状態)が、高回転では広く低回転時は狭くなるべきを、低回転でも高速用のタイミングとなってしまっていたことなどによる不調と想像されるのだ。

 その後の修理の概要は、できる範囲でスラッジの除去(ヘッド上面とカバー内面程度の範囲であるが)を行い、エンジンオイルのフラッシングとオイルフィルター交換を複数回実施した。そしてオイルとフィルターの取替を行い、念のため、例のVANOSソレノイドを外した状態でエンジン始動し、オイルを噴き出させることでVANOSオイル流路の洗浄を行った。そして、当然VANOSソレノイドも念入りに洗浄し組み付けた。

 その結果は、始動性OK、アイドル安定OK、高速回転も問題なし、その他異音も感ぜられず良好な結果となった。ただ、長時間(数時間以上)停止後のエンジン再始動時、極短時間(数秒)のガラガラとチェーンの駆動音が生じる。たぶんチェーンが伸びて来ており、テンショナーの油圧が上がるまでの僅かな時間にガラ音を生じているものと思われる。

 余談であるが、どうもBMWのシングルローラーチェーン機構は、ミニR56前期のターボおよびNA共にであるが、たぶんチェーンの暴れによるだろうスプロッケット山の飛び越え(つまりバルブタイミングの大幅な狂いを生じる)やガイドの破損が多発しており、信頼感を持てないでいる。単純にテンショナーの加圧力が弱いがためだけの問題ではなく、何らかの設計的問題が内在しているのではないかと感じているのだが・・・結論は当然出ていない。なお、ターボ付き(N14エンジン)の一部車体番号の範囲でサービスキャンペーンとして無償修理を行っているが、対象外の車体番号やNAエンジンでも多発しているので要注意だ。




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