新車価格で200万円程度のクルマで、4年落ちの中古車を気に入り100万円で購入して乗っているなんて方も多いものだと思います。ところが運転中のちょっとしたミスで、車両左前部を電流にぶつけてしまい、走行はなんとか出来るので自宅まで運転して帰って来ました。そこで、左前部の損傷部を見ると、フトントバンバーの左前部が凹損し、左側のヘッドランプが割れて、外れそうになっているいるのが判ります。さらに左側のフロントフェンダーの前の方にシワが生じています。
これじゃあ、カッコ悪くて乗ってられないなと感じ、日曜日に扱いのディーラーへ持って行って修理額を聞いてみると、分解して見ないと明確ではないが少なくとも30万円は要し、もしかすると50万円位まで要するかもしれないなんて聞き、「そんなに掛かるのか?」と思いながら、「ちょっと考えて見ます」なんて云いながら帰宅したなんていう方も結構いるのではないでしょうか。
クルマの維持費として、車検整備などであれば、チラシ広告等で、クルマに詳しくない方でも、大体の価格相場が判ります。しかし、事故のボデーリペアとなると、損傷状態も千差万別であることもありますが、果たしてその価格の妥当性も判りませんし、車両価格に比べれば、その極一部分が損傷しているだけで、なんでそんなに高いんだ等と云う意見も多く感じられることなのだと思います。
そんな、ユーザーの思いに、事故に関わり24年を過ごして来た私が、ある程度説明できることとして記してみたいと思います。
ボデーリペアコストについて(本文)
現在のクルマの価格は、そのジャンルやグレードにもよるのでしょうが、大衆車といわれるものであれば、100万円~200万円といったものでしょう。50年前の月給1万円の時代に、クルマが100万円した時代から比べれば、人件費を含めコストが上昇したのに関わらず、クルマは安くなった商品だと云えます。
では、何故この様にコストを圧縮できたのでしょうか。それは、圧倒的に機械化を進め、クルマの生産に人が関わる余地を少なくして来たからに他なりません。現代の自動車生産ラインにおいて、個別のユニットパーツを作る時間は除外したとして、そのアッセンブリー工場においては、想像するに20時間位のもので、1台のクルマは出来てしまうのでしょう。しかも、その内、人が直接関わる時間は、半分以下なのではないでしょうか。
こんな新車の価格に比べると、事故修理におけるコストというのは、普通の方には、その潰れ具合から予想される額を遙かに超えて要するものと感じられる方も多いのではないでしょうか。私みたいに、常時事故車の修理費に接して来た者なら、この潰れ方なら50万円は要するな等と直感的に判る訳ですが、クルマの修理に精通していない普通の方には、そんなに要するの等という驚きとしての反応を受ける場合も多々あります。そんな、クルマの事故修理費について、大変アバウトな話しですが、その理由となる事柄として記してみます。
まず、修理費のほぼ半分を占めるのが部品費用です。例えばクルマの右前部が衝突した事故を措定すれば、フロントバンパー、右ヘッドライト、右フトントフェンダー等の部品交換が必要となるでしょう。これらの部品価格は、そのクルマの車格等により相当に上下があるものですが、何れにしても結構に高額な部品代であることは確かなことです。
それと、このクルマの部品価格ですが、世は価格破壊の時代と云われますが、個別のクルマの補給部品については、その製造メーカーからだけの補給となりますから、市場原理は働き難く、結構に高額となってしまうことがあります。大体においてクルマに限らず、世の一般的な商品というのはメーカーで定めた希望小売価格そのままということは少ないものですが、ことクルマのボデーパーツについては、ユーザーが入手可能な価格=メーカー希望小売価格であることがほとんどだと思います。そんな中、クルマのユーザーが思う新車価格と比した、ボデー各部位毎の価格というのは予想を超えて高額なものなのです。ちなみに正確に計算した訳ではありませんが、もしクルマの構成部品を総て補給部品として購入し1台のクルマを作り上げようとしたら、多分部品代だけで新車の10倍位(それ以上かも)になってしまうのではないかと思います。
事故の修理費の半分は部品代だと記しましたが、残りの半分は工賃ということになります。この工賃とは、先程まで記した部品を付け替えたり、曲がっている部品を鈑金修正したりする手間と、最終的に塗装作業を行う手間賃ということになります。
この工賃の中で、部品を付け替えたりする手間賃ですが、その部品がネジやはめ込みで装着されている場合は大した手間を要する訳でありません。しかし、その部品が溶接でボデーと一体化されている部品の場合は、結構な手間(時間)と設備を要するものです。そして、ネジやはめ込み、そして溶接されている部品を交換する場合において、その部品が正常な位置関係になる様に装着すると云うこと、すなわち交換部品に隣接する部品の形状や寸法の狂いを修正する手間というのが結構に要してしまうということがあります。もっとも、この辺りの手間の要し方というのは、鈑金修理技術者の腕の良し悪しにも相当に関わることなのです。つまり口悪く記せば、腕がない場合程、手間(時間)を要してしまう。つまり費用も掛かってしまう要素があるということです。
次に工賃の中でも大きなウェイトを占める塗装費のことを記してみます。この塗装ですが、クルマに詳しくない方は、新品部品は総てメーカーで塗装済み状態で補給されると想像される方がいますが、塗装済みで補給される部品はむしろ少なく例外的な部品なのです。まあ、国産車を前提とすれば、前後のバンパーや樹脂製のモール類等は塗装済みで補給されることがほとんどですが、輸入車の場合はこれら部品も塗装されて補給されることは希なことです。何れにしても、事故により損傷した部品で塗装仕上げがなされた部位の大半は、再度の塗装を施す必要が生じてくるのです。
この塗装修正作業における工賃ですが、純手間賃としての作業時間の他に、塗料の材料費を要します。この材料費は、塗膜の種別や使用顔料、使用塗料等の要素によって一概には云えませんが、塗装手間賃(時間)の10%程度から20%程度までを要します。
一方の塗装の純手間賃の詳細ですが、まず調色という作業が必要となります。これは、メーカー毎の塗色というのはカラーコードで管理はなされているのですが、塗料メーカーからそのカラーコード別に調色して補給されることは通常はありません。これは、もしその様なカラーコード毎の補給がなされたとしても、使用過程車においては、その使用期間や保守管理の差異やボンネットの様な水平面とドアの様な垂直面で色の差異が生じていることが多く、対応でき得ないということがあります。もっと云えば、新車完成直後の状態であっても、メーカーの工場が違うとかの要因で色別の差異(これを色振れと呼びます)があることもあります。ですから、鈑金工場においては実際の色に合わせて微調色を繰り返して色目を合わせる作業を要するのです。
何れにしても、修理ということになると、メーカーの様な規格一律の作業でないという宿命もあり、ほとんどの作業を人が行う訳です。ですから、予想を超える費用コストとなってしまうのです。
これじゃあ、カッコ悪くて乗ってられないなと感じ、日曜日に扱いのディーラーへ持って行って修理額を聞いてみると、分解して見ないと明確ではないが少なくとも30万円は要し、もしかすると50万円位まで要するかもしれないなんて聞き、「そんなに掛かるのか?」と思いながら、「ちょっと考えて見ます」なんて云いながら帰宅したなんていう方も結構いるのではないでしょうか。
クルマの維持費として、車検整備などであれば、チラシ広告等で、クルマに詳しくない方でも、大体の価格相場が判ります。しかし、事故のボデーリペアとなると、損傷状態も千差万別であることもありますが、果たしてその価格の妥当性も判りませんし、車両価格に比べれば、その極一部分が損傷しているだけで、なんでそんなに高いんだ等と云う意見も多く感じられることなのだと思います。
そんな、ユーザーの思いに、事故に関わり24年を過ごして来た私が、ある程度説明できることとして記してみたいと思います。
ボデーリペアコストについて(本文)
現在のクルマの価格は、そのジャンルやグレードにもよるのでしょうが、大衆車といわれるものであれば、100万円~200万円といったものでしょう。50年前の月給1万円の時代に、クルマが100万円した時代から比べれば、人件費を含めコストが上昇したのに関わらず、クルマは安くなった商品だと云えます。
では、何故この様にコストを圧縮できたのでしょうか。それは、圧倒的に機械化を進め、クルマの生産に人が関わる余地を少なくして来たからに他なりません。現代の自動車生産ラインにおいて、個別のユニットパーツを作る時間は除外したとして、そのアッセンブリー工場においては、想像するに20時間位のもので、1台のクルマは出来てしまうのでしょう。しかも、その内、人が直接関わる時間は、半分以下なのではないでしょうか。
こんな新車の価格に比べると、事故修理におけるコストというのは、普通の方には、その潰れ具合から予想される額を遙かに超えて要するものと感じられる方も多いのではないでしょうか。私みたいに、常時事故車の修理費に接して来た者なら、この潰れ方なら50万円は要するな等と直感的に判る訳ですが、クルマの修理に精通していない普通の方には、そんなに要するの等という驚きとしての反応を受ける場合も多々あります。そんな、クルマの事故修理費について、大変アバウトな話しですが、その理由となる事柄として記してみます。
まず、修理費のほぼ半分を占めるのが部品費用です。例えばクルマの右前部が衝突した事故を措定すれば、フロントバンパー、右ヘッドライト、右フトントフェンダー等の部品交換が必要となるでしょう。これらの部品価格は、そのクルマの車格等により相当に上下があるものですが、何れにしても結構に高額な部品代であることは確かなことです。
それと、このクルマの部品価格ですが、世は価格破壊の時代と云われますが、個別のクルマの補給部品については、その製造メーカーからだけの補給となりますから、市場原理は働き難く、結構に高額となってしまうことがあります。大体においてクルマに限らず、世の一般的な商品というのはメーカーで定めた希望小売価格そのままということは少ないものですが、ことクルマのボデーパーツについては、ユーザーが入手可能な価格=メーカー希望小売価格であることがほとんどだと思います。そんな中、クルマのユーザーが思う新車価格と比した、ボデー各部位毎の価格というのは予想を超えて高額なものなのです。ちなみに正確に計算した訳ではありませんが、もしクルマの構成部品を総て補給部品として購入し1台のクルマを作り上げようとしたら、多分部品代だけで新車の10倍位(それ以上かも)になってしまうのではないかと思います。
事故の修理費の半分は部品代だと記しましたが、残りの半分は工賃ということになります。この工賃とは、先程まで記した部品を付け替えたり、曲がっている部品を鈑金修正したりする手間と、最終的に塗装作業を行う手間賃ということになります。
この工賃の中で、部品を付け替えたりする手間賃ですが、その部品がネジやはめ込みで装着されている場合は大した手間を要する訳でありません。しかし、その部品が溶接でボデーと一体化されている部品の場合は、結構な手間(時間)と設備を要するものです。そして、ネジやはめ込み、そして溶接されている部品を交換する場合において、その部品が正常な位置関係になる様に装着すると云うこと、すなわち交換部品に隣接する部品の形状や寸法の狂いを修正する手間というのが結構に要してしまうということがあります。もっとも、この辺りの手間の要し方というのは、鈑金修理技術者の腕の良し悪しにも相当に関わることなのです。つまり口悪く記せば、腕がない場合程、手間(時間)を要してしまう。つまり費用も掛かってしまう要素があるということです。
次に工賃の中でも大きなウェイトを占める塗装費のことを記してみます。この塗装ですが、クルマに詳しくない方は、新品部品は総てメーカーで塗装済み状態で補給されると想像される方がいますが、塗装済みで補給される部品はむしろ少なく例外的な部品なのです。まあ、国産車を前提とすれば、前後のバンパーや樹脂製のモール類等は塗装済みで補給されることがほとんどですが、輸入車の場合はこれら部品も塗装されて補給されることは希なことです。何れにしても、事故により損傷した部品で塗装仕上げがなされた部位の大半は、再度の塗装を施す必要が生じてくるのです。
この塗装修正作業における工賃ですが、純手間賃としての作業時間の他に、塗料の材料費を要します。この材料費は、塗膜の種別や使用顔料、使用塗料等の要素によって一概には云えませんが、塗装手間賃(時間)の10%程度から20%程度までを要します。
一方の塗装の純手間賃の詳細ですが、まず調色という作業が必要となります。これは、メーカー毎の塗色というのはカラーコードで管理はなされているのですが、塗料メーカーからそのカラーコード別に調色して補給されることは通常はありません。これは、もしその様なカラーコード毎の補給がなされたとしても、使用過程車においては、その使用期間や保守管理の差異やボンネットの様な水平面とドアの様な垂直面で色の差異が生じていることが多く、対応でき得ないということがあります。もっと云えば、新車完成直後の状態であっても、メーカーの工場が違うとかの要因で色別の差異(これを色振れと呼びます)があることもあります。ですから、鈑金工場においては実際の色に合わせて微調色を繰り返して色目を合わせる作業を要するのです。
何れにしても、修理ということになると、メーカーの様な規格一律の作業でないという宿命もあり、ほとんどの作業を人が行う訳です。ですから、予想を超える費用コストとなってしまうのです。