私の思いと技術的覚え書き

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リニア新幹線への疑念

2021-06-02 | コラム
 先月(21年4月)、JR東海はリニア中央新幹線の品川~名古屋ルートの工事費を、当初の予算5兆5千億から1兆5千億円増加し、7兆円になると説明したという。工事が着工しての、早々の予算修正となる訳だ。この様子で行くと、当初の品川~大阪間の延伸分まで入れた、工事費総額9兆円は今次の1兆5千億に留まらず、幾らぐらい増えるのか予想も付かないだろう。

 ヘタをすれば、倍額の18兆円掛かりましたと云う結果になるのかもしれない。この様な当初の予算を大幅に超えて工事が完遂されると云うのは、超大トンネルの工事などで、過去に幾らもあったことだが、如何にせよ、総額が9兆にもなる大工事だからして、単にJR東海の1社の個別企業の責任に留まらないだろう。もし、工事途上でJR東海が負担に絶えきれなくなったとすれば、国としてもJR東海という企業を潰す訳にも行かず、国費を投入せざるを得なくなるのだろう。

 そもそも、東京~大阪間の東海道は、人もだが物流という面でも、全国で一番の過密度を持つことは明かだろう。しかし、その人の過密が限界に達したから、リニア新幹線を作るという理由になったとは、JR東海もだが国も説明していない。想像も交えるが、旧国鉄時代から将来の鉄道として研究して来た、世界最速の高速鉄道を現実のものとして実現し、凄いぞ日本を自慢したいがための幼稚な思考が根底にあるとしか思えない。

 だいたい、JR東海は分割民営化したJR各社の中で、最高の利益率を確保しているが、これは東海道新幹線の独占によって得られていることは間違いないことだろう。それを、新たに総額幾らの予算になるのか知らぬが、少なくとも10兆円も掛け、これからの人口減とか、コロナ病変で知ることになったテレワークによる人の移動を抑制できる事実を知り得た東海道沿線の各企業が、今後増加して行くとは考えられないだろう。

 とすれば、幾らリニア新幹線の料金を高速化したことによって付加価値があるからと云って、高額な乗車料金を設定できると云っても限度はあるだろうし、東京~大阪間の人員輸送数が著しく増えるなんてことはなく、単に旧新幹線と、リニア新幹線に分流するだけのことで、とても採算が合わないと予見する意見がチラホラと聞こえて来るが、もっともな意見だと思える。

 また、そもそも旧国鉄時代に新幹線を計画する段階においては、人員だけでなく高速貨物輸送にも転用できる案を持っていたことが知られている。しかし、予想を超えて人の利用が多く、貨物輸送は実際行われずに済んだという歴史がある。ここで云いたいのは、旧新幹線では、もし人の輸送だけで採算が合わない場合は、貨物輸送も行えると云う保険を掛けていたと云うことなのだ。しかるに、リニア新幹線では、そもそも高速化のために車体断面も小さく、貨物輸送のことなど一切考えていないのは明かだろう。

 しかも、旧来新幹線では、当時の高速鉄道としてずば抜けた高速化を達成した訳だが、鉄路を走ると云う面では何ら変わりはなく、技術的なハードルはさほどに高くなかったとも考えられる。しかるにリニア新幹線では、磁気浮上方式であり、今までの鉄道という概念を越えたものであり、旧国鉄時代の宮崎実験線から民営化後の山梨実験線を通じて何十年も研究して来て実用化できると判断したのだろうが、東京~名古屋間の連続400kmを、一定間隔以下で多数量を安全、安定的に可動出来るかは未知の部分も残されている様に思えてならない。そんな思いもせぬ欠陥が営業運転を開始してから発覚し、それが単に車両の問題であれば、新造車両を投入すれば済むだろうが、リニアの場合、線路はないが、もっと高コストな磁気コイルが路線に沿って密着して並んでいる訳だが、もし路盤用磁気コイルの仕様を変更する等と云うことになったら、とんでもない追加費用が生じることになるだろう。JR東海に説明を求めれば、そんなことがない様に研究を積み重ねて来たと云うにきまっているだろうが、新しい技術というのは、大きな落とし穴があり得る様に思えてならないというのは、素人考えだろうか。

 最後に、地震大国日本で東海道新幹線のバックアップ用としての新路線を通すことには意味あることと思える。そのためには、今からでも遅くないが、旧新幹線と互換のある路線で中央新幹線を成立させるべきだろう。そして、人員輸送の大幅な伸びは期待できないので、途上に貨物ターミナルを幾つか作り、貨物輸送にも対応できる工夫を凝らすべきという私見を持つ。

 さらに、全国的に赤字線とかで廃線になる事例が地方には多い訳だが、これからの長距離輸送は鉄道を中心に再構築していくという思想が大事になる様に思える。このことが、内燃機関を止めると云う世界的潮流にもマッチし、特に大重量を運ぶ貨物用トラックについては、EV化による航続距離が大きく減少してしまうという宿命にも合い、国家としての総合エネルギー効率を向上させることになるのだろう。ただし、現在の既得権の虜囚となった自民党を始め多くの野党と国家官僚には、到底受け入れられないことだろう。

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