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鍛造と転造

2022-06-15 | 技術系情報
鍛造と転造
 鍛造(英語でForging)とは、金属材料加工法のひとつで、切断された炭素鋼などの金属材料を加熱したり、または、加熱しない常温のまま、打撃したり加圧力を繰り返し与えたりの塑性加工を繰り返し、素材の目的の形状に近づけるものだ。ここに記した様に過熱して熱間でおこなうものと、常温で行う冷間鍛造に区分されると共に、自由鍛造という特別型がなく、素材を大まかに目的に形状を包含する様な形状に持っていくものと、鍛造用の専用型を使用し、目的の型に成型して行く型鍛造という二種がある。

 鍛造と聞くと、古来から生産されてきた日本刀がもっとも古い鍛造製品なのだ。この素材に使う鉄も現在の様に鉄鉱石から作られる鉄ではなく、河などで採取される砂鉄を集めて、それを「たたら」という薪を焚いてふいごで火力を調節しながら丸一昼夜の操業を「村下」(むらげ)という頭領の指揮で行うという。この製法で作られた鉄を「玉鋼」と呼び。99.9%の純度の純鉄に近いという。現在の製鋼所による製鉄だと高炉内で鉄鉱石をコークスの熱で還元しつつ熔解するが、そのままでは炭素量が多く鋳物製品しか使えない様な脆い鉄だ。それを転炉と呼ぶ大鍋に入れ熔解しつつ下部から酸素を補給することで、脱炭することで強靱な鋼を作り出している。先のたたらの玉鋼の場合は、炭火で加熱しつつ、繰り返し打撃しつつ、炭素分を増やしつつ鍛造により強靱な鋼を作り出していく。そもそも日本刀は、一様な成分で作られる製品でなく、内部は炭素量が少なく靱性とか弾性に富むが、外部は炭素量が多く、硬度が高いという多種の性能が持たされている様で、ある意味神秘性を秘めているとも感じられる。それと、玉鋼から刀を作るのを刀鍛治というらしいが、そもそも刀の様な長尺物を玉鋼からいきなり1本ものにするのではなく、切れ切れの鋼片を過熱しつつ打撃しつつ接合する鍛接という手法で、1本ものの刀の素形を作り出すという。

 現在の鍛造製品に戻るが、自動車用としては、鋼製のコンロッドとかクランクシャフトにおける型鍛造が一般的だ。この場合熱間鍛造となるが、型は数種類あるが、大まかな形から、段階的に製品形状に近づけていくことになる。

 アルミニウムの鍛造製品というのもあるが、サスペンションアームなどの、強い応力の働く部位に使用されたり、高性能ピストンなどにも利用される。鍛造ピストンなど、立体的で冷却用油路を持ったりしている場合もあるが、部位ことに鍛造し、最終的には溶接して一体成型しつつ機械加工して仕上げている様だ。
 また、BBSとが大型車用のアルコア製の様なアルミ鍛造ホイールがあるが、主にリム周辺部などの鍛造加工は型鍛造というより、適温に過熱しつつロール成形というダイ(型)を押し付けて、ホイール本体を回転させつつ成型する手法を取っている様だ。この回転する素材をダイに押し付けて鍛造と同様の効果を得る代表的な製品にボルトがある。ボルトやナットのネジ山は、少量生産品なら、タップとダイスという歯切工具で作られるが、マスプロダクションするには、それなりのネジの型に押し付けて回転させてネジ山を成型する転造という手法が取られている。

※添付写真は、昭和30年(1955)代頃の、コンロッド様の鍛造型を示す。(名古屋の産業技術記念館にて撮影)


#鍛造 #転造 #日本刀


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