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デンソーフューエルポンプリコール745万台

2021-02-19 | 車両修理関連
 今や自動車部品の世界シェアでは独ボッシュに次ぐ世界第2位のデンソーだが、同一部品で驚くべきリコール台数を記録更新し続けている。その総数現在745万台だと伝えられている。

 問題の部品はガソリンエンジン用のフューエルポンプだ。現在の自動車用ガソリンエンジンは全車燃料噴射方式だが、燃料タンク内に設置されたフュエールポンプで高圧(と云っても300kPa程)の燃圧を作り出しタンクからエンジンへ送油している。なお、正規の燃圧は大気圧に対し300kPaの差圧になる様プレッシャレギュレターで制御され、逃れた燃料はタンクへ戻される方式となっている。以上はポート噴射の場合で、直噴だとカム軸駆動のポンプでさらに燃圧は5MPa程度まで増圧され、シリンダー内に直接噴射される。

 今回のデンソーのリコールは、このインタンク式燃料ポンプの樹脂製ポンプインペラ(羽)が樹脂の成形時の金型温度が低すぎることなどによりガソリンで膨潤して変形し、インペラ外周のケースと接触し回転不良からエンジンが停止してしまうというトラブルの様だ。

 何故、ここまで対象台数が増えたのかだが、デンソー製だから多くのトヨタ車に使われていることもあるが、今やトヨタ以外のスバルとか他車にも外販していたこともある様だ。

 それと、トヨタでは同ポンプの不具合で同一車種で2度のリコールを出しているが、1度目のリコールで原因の探求が不足しており、そもそも初回リコール時にポンプインペラの樹脂成形時の不具合による膨潤変形を把握していなかった様だ。

 今回のリコール費用は、当然のことデンソーに求償され負担することになるが、ざっと幾らになるか計算してみたい。ここではフューエルポンプの原価を\5,000として、取替作業工賃を1h(\7,000)の合計\12,000 と仮定して算出してみる。

 745万×12,000=8,940,000,000(89億4千万円)

 たかだか90億円を欠損金で経理処理したところで世界のデンソーが赤字決算や危機に陥る訳でもなかろうが、営業利益を90億円積み増すのはなかなか大変なことであろう。

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デンソーリコール745万台に拡大、追加賠償と転注が不可避か
近岡 裕 日経クロステック
2020.10.29

 リコール台数が世界で745万超に──。デンソーの欠陥燃料ポンプの問題がさらに深刻な事態に陥っている。2020年10月28日、トヨタ自動車は「国内で21万363台、海外で約245万台」(同社広報および国土交通省)のリコールを国交省に届け出た。このリコールの原因もデンソー製欠陥燃料ポンプにあることが国交省やトヨタ自動車の関係者などへの取材で明らかになった。これにより、既に判明しているトヨタ車(過去分)とSUBARU車、ホンダ車を合わせた479万台超に、今回のトヨタ車の新規分である約266万台が上乗せされてリコール規模が拡大。しかも、事態は収束するどころか、さらに悪化する方向に進んでいる。

“部品の巨人”デンソーの背中に745万個を超える欠陥燃料ポンプがのしかかった
トヨタ自動車が新規に約266万台をリコール。その分の燃料ポンプの返品がさらにデンソーを苦しめることとなった。今度は追加の賠償金の支払いや受注減にまで発展する可能性がある。
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 トヨタ車の新規リコールの原因となったのは、欠陥低圧燃料ポンプ。樹脂製インペラ(羽根車)が変形してポンプケースと接触し、作動不良を起こしてエンジンを停止させる恐れがある。日経クロステックが取材した品質管理や樹脂成形の専門家の見解によると、欠陥を生んだ直接の原因は、インペラに対する不適切な成形条件にあるとみられる。インペラの材料は、ガラス繊維やタルク(ケイ酸マグネシウム)を含有して強化したポリフェニレンスルフィド(PPS)とみられ、成形時の金型の温度が低すぎて結晶化度が低くなった。結果、「樹脂(PPS)の密度が低下」(トヨタ自動車)し、PPSの内部に生じた隙間にガソリン(燃料)が侵入してインペラが膨潤した。これがデンソー製燃料ポンプが品質不良に至ったメカニズムとされる。

 新たにリコール対象になったクルマは、国内だけで2017年7月5日から2019年12月6日の期間に造られた「ノア」や「ヴォクシー」などのミニバンから、「クラウン」や「カムリ」などのセダン、高級車「レクサス」シリーズなどまで39車種と多岐にわたる。事故を起こした事例はないが、市場から109件の品質クレームが報告されている。

 あるトヨタ自動車の関係者は、今回のリコールについて「異常な事態だ」と指摘する。というのも、今回が「2度目のリコール」だからである。トヨタ自動車は同じ欠陥燃料ポンプを原因とするリコールを2020年3月4日に国交省に届け出ている。通常なら、この時に燃料ポンプの内容を精査してリコール対象のクルマを全て洗い出せたはずだ。ところが、トヨタ自動車は今回、追加でリコール対象車を同省に報告した。これについて同社は、「本件は(一度)リコールを届け出たものだが、検証を進めた結果、対象拡大の必要性が生じたため、新たに届け出た」と説明する。ではトヨタの検証に不備があって漏れが生じたのだろうか。

同じ欠陥燃料ポンプが原因のリコールをトヨタ自動車は2回届け出た。そのため、1回目と2回目の届け出において重複するクルマの製造期間がある。1回目で問題なしとした車種を、顧客に安心感をもたらすために改めてリコール対象と判断したとみられる。(出所:日経クロステック)
 どうやらそうではないようだ。「事故につながるような本当にまずい品質不具合であれば、今回対象となった車種は前回のリコールの届け出の中に含まれていたはずだ。これはトヨタ自動車が検証漏れをしたのではなく、品質のばらつきを調べた上で、より安全・安心側に振ったリコールと見るべきだろう。要は、『疑わしきは罰する』という判断だ」(同関係者)。

 背景には、最近世間を騒がせている品質問題がある。件(くだん)のデンソー製欠陥燃料ポンプ問題に加えて、2020年9月にはジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(JSSJ、旧タカタ)製シートベルトで品質不正が発覚したという報告を、トヨタ自動車はJSSJと国交省から受けた。法令が定めた試験方法と安全基準(強度)をJSSJが満たしていない事実が確認されれば、大規模リコールが避けられない事態となっている。こうした大きな品質問題の発生により、「今、自動車の『安全・安心』に向けられた世間の目は以前に増して厳しくなっている。こうした中で、もしも人命に関わるような事故が起きたらトヨタ車の信頼は地に落ちかねない。それを何としても避け、顧客に安全や安心を感じてもらうためのリコール判断だろう」(同関係者)。

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