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再び Fuel Trim エラーの件

2019-12-19 | 車両修理関連
 BMW・E46・325iにて、再びEML(エンジンチェック)警告灯が点灯する様になった。スキャンテスターによるリーディングでは、「E4 Fuel trim bank 2,permissble renge exceeded」とか、同「bank 1」エラーなのだが。(写真)このエラーのことは、3年程前の拙人ブログでも同様不具合が出て、その際に触れているのだが、この記事については比較的閲覧数が多いことや、エンジン制御の基本に関わる根源的な部分でもあるので、ここで再度補足しつつ、拙人の知る範囲でなるべく詳細に書き留めてみたい。

1.同エラーを理解するための基礎知識
 まず、「E4 Fuel trim bank 2,permissble renge exceeded」の日本語直訳だが、「燃料トリムが許容範囲を超えた」という意味になる。ここで、それぞれの意味を以下に詳述する。

①trim(トリム)
 直訳は、「整える、手入れする、つみ取る、飾りをつける、バランスをとる、調節する」という意味となる。昔の潜水艦映画の場面を例にするが、潜行開始して目標深度に達したら、操舵担当は「ツリム(現トリム)良し、前後水平!」という具合に発令している。潜水艦の場合、艦の前後にバラストタンクを持ち、艦の前後姿勢を制御できる構成となっているが、この調整を行うのがトリム(当時はツリム)の一例となる。

②バンクの意味
 バンクはV型エンジンのことを想記させるワードであるが、ここでは独立した02センサーで区切られる気筒範囲を表現している。すなわちバンク1とかバンク2は、L6エンジンの場合は前3気筒と後ろ3気筒を示す。これらには、それぞれ独立したO2センサーがあることによって区分される。なお、4気筒では、集合部にO2センサーが1つだけ装着されており、バンク1しかないのが通例となる。

③理論空燃費とO2センサー
 排ガス対策以降のガソリンエンジンの場合、三元触媒でCO、HC、NOxを同時に浄化するには、エンジン内の燃焼ガスの空燃比(a/f:エーバーエフ)を浄化作用中は理論空燃費(ストイキメトリー(略してストイキ、具体的には14.7:1)に高精度に制御する要がある。これの要になるセンサーがO2センサー(λ(ラムダ)センサーと呼ぶ場合もあり)となる。

④O2センサーの検出動作とフィードバック制御
 O2センサーは、そのセンサーの表面(内部)と裏面(外部=大気)の酸素量の差異に相関して起電力を発するセンサーとなる。すなわち表(排ガス側)と裏(大気)の酸素量差が大きい程起電力が高まり、その逆は起電力が小さくなる。このことは、排ガス中の残存酸素量が少ないとは、a/fが濃い(リッチ)と検出し、同残存酸素量が多いことは。a/fが薄い(リーン)と検出できる訳なのだ。

 O2センサーの使用にはセットでフィードバック制御というワードが出てくるのだが、このことは各種制御で行われるループ制御で、出口(排ガスの酸素量)から、入口(燃料噴射量)をフィードバックして、反復制御するという概念となる。すなわち、O2センサーリッチ信号を検出すれば、リーン信号が出るまで噴射量を一定量減じ続ける。そして、リーン信号を検出すれば、リッチ信号が出るまで噴射量を一定量増加し続けるという動作を反復継続する訳なのだ。この増減調整動作のことをトリムと表現している訳なのだ。

⑤フィードバック制御の停止
 ここで、どの程度までフィードバック制御で調整しきれるのかということが問題の一つとしてなってくる。それは、何らかの故障などで、リーン信号が出続け増量して行くのだが、何時まで経てもリーンに反転しないという様な場合も考えられる。その逆に、リッチ信号が出続けて、減量し続けるが、何時までもリッチ信号に反転しない場合も考えられるだろう。これらは、例えばO2センサー自体が壊れているとか、その特性が劣化しているという様な場合が多いだろう。こういうケースを予測して、一定時間以上の減量とか増量は、O2センサーリッチタイムアウトとか、リーンタイムアウトエラーなりのエラーを出し、以後フィードバック制御を停止する動作が行われるアルゴリズム(手順)が組み込まれている。この場合、当然エンジンチェックランプを点灯させる。

⑥短期燃料トリムと長期燃料トリム
 ここまで述べた様なO2センサー信号に基づいた即時の燃料増減の調整を短期燃料トリムと呼んでいる様だ。一方、ある程度の経過時間の範囲において、フィードバックは継続しているのだが、増減が基本噴射量と比較して、リッチ側に偏向しているとか、逆にリーン側に偏向しているというのを表したのが長期燃料トリムという概念となる。つまり、簡単に記せば、何時もリーンで増量ばかりしているとか、その逆に何時もリッチで減量ばかりしているという場合で、これの一定の増減量の範囲(20とか25%)を超えた場合に、「Fuel trim,permissble renge exceeded」(燃料トリムが許容範囲を超えた)というエラーを出すアルゴリズムが組み込まれているのだ。

2.今回の解決処置
 今回の同エラーについては、過去の同エラーが給気管(エアフロー以降)の給気もれによるリーン側への偏向により生み出されていた訳だが、その様な可能性はないと判断し、そうなるとエアマスセンサーなど基本噴射量を狂わせる要因があるだろうと見込みを付けていた。そんな中、BMW純正もしくは准純正相当品(VDO)などだと、4万円前後するエアマスセンサーが新品で5千円もせずにNet通販されているのを知った。(写真参照)

 実は、この商品だが「Deurreli エアマスセンサー E39 E46 Z3に対応 番号13621432356 5WK96050Z」と記してあり、拙人がパーツリストで調べたメーカー品番と完全一致しているのだが・・・。ブランドの「Deurreli」だが、チラと見てデルファイ (Delphi Corporation:米国で現アプティブ (Aptive PLC) に変更されてる電装サプライヤ)だと勘違いしていたのだ!。入手してから、改めてデルファイじゃないと気付いたということである。「Deurreli」(何と発音するのか不明だが、アマゾンなどで検索すると、電装から外装パーツなど様々な部品を扱っている様だが、販売人の住所に shinsen とか記してあるので、つまるところ中華のコピー商品なんだろう。

 ということだが、入手した部品の概観を見る限り、その概観や質感、作り、寸法など、純正品と比べ特に劣る要素は見いだせなかった。E46のエアマスセンサーは非常に簡易に交換作業ができるのだが、取替して既に延べ100km、その累計走行時間は4時間程になるのだが、今回のエラーは発生しておらず、エンジンの変調も特段感じられない。

追記
 本件外のことだが、樹脂パーツにはその材質名を記してある場合が多い。今回の旧部品には「PBT-GF30]と刻印されているのがそれだ。PBTとはポリブチレンテフタレートという樹脂材質が該当する訳で、広義にはエンプラ(エンジニアリングプラスチックの略称)の一つだ。なお、「GF30」とはガラス繊維30%混入の意味で、ガラス繊維(短繊維)を30%混合して強度アップしているということだろう。
 ちなみにラジエータタンクの樹脂にはポリアミド(多くがナイロン66)が使われている事例が多いことを知るが、刻印は「PAGF」と刻印されているのを見る機会は多い。

過去の関連記事

M54エンジン・Fuel Trim エラー解消の件 2017/01/08
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/6f4d34c39418a058f895d563d1a58d00


M54エンジン・Fuel Trim エラー解消(後記) 2017/02/08
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/694e1b8264d05d6d9f03b5e4de5b1438







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